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どんな嵐も乗り越えて幸せになってみせます、それが私の人生ですから!~聖女を傷つけた者には天罰が下るようです~  作者: 四季


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8話「積み上げてゆくもの」

「海は好きですか?」

「はい」


 王城から徒歩数分で着くことのできる高台へ向かった。

 そこは城の敷地内。

 なので安全性は担保されている。


「ヴェガウンディ様も海がお好きなのですか?」

「抜きん出てということではないですが、好きですね、遠くから眺めると綺麗ですから」


 視界一杯に広がる空と海。

 鏡に映し出したような二つの青が心に響く。


「本当に……すごく綺麗ですね」


 思わず呟いた。


 高所ゆえか少々風が強い。時折通り抜けてゆく風に髪が揺らされる時、初めて来た場所だというのにまるで故郷の風景を見つめているかのような気分になる。それはとても不思議な感覚。面白いもので、今は、風に髪を乱されることが不快でない。むしろどこか心地よい。


「ヴェガウンディ様、本日は誘ってくださってありがとうございました」

「いえいえ」

「素敵な思い出になりました」

「それは良かったです」


 暫し沈黙があり、その果てで、彼は静かに「よければまたいろんなところへ行ってみませんか?」と尋ねてきた。


 ……こういう時、どんな風に反応すれば良いものなのか?


 明確な答えは見つけられなかった。

 ただそれでもいつまでも黙っているわけにはいかなくて。


「はい、ぜひお願いします」


 取り敢えずそう答えておいた。


 すると彼は頬を緩める。


「そういったお言葉をいただけ幸せです」


 思ったよりも柔らかな笑みを滲ませたヴェガウンディを目にすると、何か、込み上げてくるものがあった。


 これは何だろう? この感情、この色合い、これは一体何なのだろう。胸の内で湧き上がりこぼれそうになっているもの、その正体はまだ掴めなくて。何が生まれている? 何が始まっている? 頭の中は疑問符だらけ。


「ではまた今度一緒にお出掛けしましょう」

「そうですね」


 頷き合ってから、城へと戻り出す。


「――っ、と」


 途中ヴェガウンディが石ころにつまづいた時があって。


「危ない!」


 思わず彼の片袖を強く掴んだ。


「す、すみませんっ……袖を掴むなどという無礼を」

「いえ、転ばないよう支えてくださったのですよね」

「それはそうです、が、やり方が間違っていました。申し訳ございませんでした……無礼なことをしてしまいました……」


 すると彼は首を横に振る。


「助かりました、ありがとうございました」


 そして微笑みかけてくれた。


 この世界にはこんな良い人もいたのだなぁ、と、しみじみ思った――でも私は間違えない、自分にとって都合の良い方向にばかり考えることなんてしない。


「少しでもお力になれたなら嬉しいです」

「それは! もう! すごく助かりました! 大活躍です!」

「良かったです」

「では気を取り直して、帰りましょう」

「はい」


 帰り道、ゆっくり歩きながら、少しだけ言葉遊びをする。


「ダジャレ対決しませんか?」

「え」

「まずこちらから。ギターの上手い馬」

「そういうことですか……では、一人称がワシな鷲、で」


 青空はどこまでも澄んでいる。


「お付き合いありがとうございます。では。猫が寝込んでしまった! で」

「ぶり好きのぶりっこ」

「稲刈り名人はいねえか?」

「そう、ですね……では、我慢できないガマガエル」


 心地よい風は今も吹いている。


「こちらの番ですね。うーん……あ。では、後ろ向く牛、で」


 何だこれは? という感じではあるけれど、彼とこうして言葉で遊んでいると独特の楽しさはある。

 派手に感動するわけではないし、非常に盛り上がる瞬間があるわけではないのだけれど、胸の内に小さな火が灯ったかのような温かな気持ちになれる。


「今日はありがとうございました」

「高貴なお方からのお誘いでしたので少しばかり緊張はしましたが、とても楽しかったです」


 海を眺める会はあっさりと終了した。


 こんな感じで良かったのだろうか……?

 本当にただ海を見ただけで終わったけれど……?


 そんなことを思いつつも、現状を前向きに捉えるよう努力した。



 あれからというもの、ヴェガウンディはたびたび会いに来てくれるようになった。


「こんにちは!」

「あ……ヴェガウンディ様、こんにちは」


 慣れるまでは彼の顔を見るたびに若干緊張してしまっていた。だが回数が重なるにつれて段々それも落ち着いてきて。今ではそこまで緊張することなく彼と向き合えるようになっている。


「朝から良い天気ですね」

「はい、とても」

「実は贈り物があります」

「え。……私に、ですか?」

「そうです!」

「申し訳ありませんが……私には、返せるものがありませんので……」


 すると彼は「聖女様、ですから」と即座に返してきた。


「特別な存在なのですよ」

「聖女だなんて……私は、少し異端なだけで、本質はただの女です」

「だとしても聖女であることに変わりはありません」

「私に特別な力でもあると思っていらっしゃるのですか?」

「可能性はありますね」


 嫌なことをしてきた人に天罰が下される、もしかしたらあれが私に宿った力なのかもしれない……そんな風に思ったことは少しある。

 けれども、火を出したり光を放ったりできるわけではないから、目に見えないその不確かなものを聖女の力であると断言することは難しい。


「取り敢えず! 贈り物を持ってきたので、見てください!」


 ヴェガウンディは薄いけれど私の背の高さほど縦の長さがある箱を出してくる。


「はいどうぞ!」


 思ったより大きな箱だった……。

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