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どんな嵐も乗り越えて幸せになってみせます、それが私の人生ですから!~聖女を傷つけた者には天罰が下るようです~  作者: 四季


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13話「進んでゆく」

 リシリーが処刑されたという情報が耳に届いた。


 姉の評価を下げようと懸命だった彼女は呆気ない最期を迎えたようだ。


 だがそれも自業自得だろう。


 彼女が選んで歩んできた道の先にあったのがその結末。

 ならばその結末を生み出したのは外の誰でもない彼女自身だ。


 婚約者のいる異性に手を出して人間関係を壊し、姉のもとへ押し掛けてきたうえ悪口を遠慮なく言い、しまいには貴い人の命を奪おうとした――そこまでやらかしたとなるとさすがに命をもって償うこととなったとしてもおかしな話ではない。


「本日のお紅茶は南の国から輸入した茶葉を使ったものとなっております」


 メイドが紅茶の入った白いティーカップを持ってきてくれた。


「ありがとうございます」

「ご苦労」


 今日はヴェガウンディと二人でお茶会をしている。


 彼と共に過ごせる時間はとても偉大なものだ。

 そしてリラックス効果も強い。

 美味しいお茶を楽しみつつ向かい合って語らう時間、というものの尊さを感じながら、婚約者である彼と時間を共有する。


「南の国の茶葉で入れた紅茶というのはよく飲まれているものなのですか?」

「そうですね……しかし定番というわけではないですよ」

「ヴェガウンディさんは飲まれたことがある感じですか?」

「初めてではないですね」


 リシリーに刺された部分の傷はまだ完治していない。が、事件直後のような痛みはなくなりつつある。王城で働く救護の人たちに丁寧に対応してもらえたため治りは順調。このまま無理せず治療を受けていけば、恐らく、後遺症に悩まされることはないだろう。


「お好きですか?」

「ええそれなりに」


 白いティーカップの端が顔に近づくと紅茶の優しい香りが鼻をくすぐる。


 それは果実のようで。

 また花のようでもあって。


 とにかく心地よい香りだ。


 丘の上の花畑へ走っていって、汚れなど一切気にせず豪快に寝転んで、快晴の空を見上げる――そんな時に辺りに漂っている匂い――そんな感じの香りがこの紅茶からは放たれている。


「……可憐な少女みたいな香りですね」


 ほぼ無意識のうちに感想を呟けば。


「画期的なワードが出ましたね」


 彼は一瞬意外に思ったような目をしながらも笑みを浮かべる。


 私たちの間にあったのは激しい恋ではなかった。ドラマチック、とか、激動、とか、そんな言葉は似合わない。けれども関係は良好そのものだ。地味だけど確かなもの、ちょっとしたことでは揺らぐことのないもの、そういったものが私たちの間にはある。


「ですが、分からないことはありません」

「伝わったなら良かったです」

「可憐な少女みたいな香り……そういうところが好きです。紅茶の香りの感想としてそういった言葉が出てくるのですから、実に興味深いです」


 少し間があって。


「褒めてます?」

「もちろん」


 短く言葉を絡め合った。


「アズリーさんが命を落としたら、そう考えた時……とても、怖かったです」


 彼は急に話題を変えてくる。


「自分のせいでアズリーさんが亡くなってしまうなんてことがあったらと考えると恐ろしくて震えそうでした……」

「私が聖女だから、ですか?」

「え」

「そういうことですよね?」

「あ……いや、違う、そうではなくて。アズリーさんが大切だからです。聖女だからとか何とかとかそんなことは関係ありません」


 本当は怖かったのだな、と気づき、より彼が人間らしく見えるようになった気がした。


「もうこんなことが起こらないよう気をつけます」

「そんな。気にしないでください。……そもそもすべて私が勝手にしたことですし、ヴェガウンディさんは悪くありませんので。ご自分を責めるようなことはしないでください」

「気遣いに感謝します」



 それから二週間ほどが経ったある日、両親が城へやって来た。


 二人は怒っていた。

 娘を処刑されたことを。


「アズリー、貴女やっぱり呪われているのよ」

「母さん……」

「貴女のせいでルルもリシリーも死んでしまった! 許さないわ、呪われた女。アズリー、貴女だけは、決して許さない。可愛い娘を二人も奪われて、黙ってなんていられないわ!」


 母は酷く感情的になっていた。


「貴女なんて! もう! 娘じゃない! ……だって呪われているんだもの。アズリーなんて産まなきゃ良かった!! 貴女みたいな悪魔をこの世に産み落としてしまった! そう考えるだけで! ただただ悲しいわ!!」


 感情のうねりのままに言葉を紡ぐ母は掴みかかろうとしてきたが見張りの者に羽交い絞めにされる。


「は、離して! 離しなさいっ……なんてこと! 我々はお客様よ!? 王城の人間が民にそんなことをして許されると思っているの!?」

「絶対にお護りせよとの命令ですので」

「はぁ? なによ! 穢れたアズリーなんて庇って、どうするつもり!? そんなことをしていたらこの国は滅亡の道を辿るわよ!! 民を傷つけて!!」

「有害な民は無害な民には含まれていませんので」

「ならまずアズリーを仕留めなさいよ! そんな呪われた女! 生かしておく価値なんてないわよ!」


 母は必死に抵抗し何とか一瞬自由を取り戻した。が、その直後バランスを崩して。膝が、かくん、となり。転んでしまった――しかも前に向かってではなく後ろに向かって。後ろ向きに勢いよく転倒した母は数秒指先だけを動かしていたがすぐに沈黙。あんなに騒がしかったのに、もう一言も発さない。

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