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どんな嵐も乗り越えて幸せになってみせます、それが私の人生ですから!~聖女を傷つけた者には天罰が下るようです~  作者: 四季


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12話「蘇るもの、滅びゆくもの」

「……さん、アズリーさん!」


 ヴェガウンディの声で目覚める。


「あ」


 小花柄の天井が視界に入る。

 どうやら私はベッドの上で横になっているようだ。


 そうだった、リシリーに刺されて……。


「ヴェガウンディさん……すみません、私……」

「無理に話さなくても大丈夫ですよ」

「迷惑をおかけしてしまって申し訳ないです……」

「謝らないでください。アズリーさんは庇ってくださっただけでしょう、非はありません」


 ベッドの脇の椅子に座っている彼は少々不安げな面持ちでいる。


「むしろ、謝るべきなのはこちらです。女性に間に入らせてしまうなど問題でした。本来こちらが貴女を護るべきだったというのに、逆の状況を作ってしまい……問題でした、すみませんでした」


 彼は静かに言葉を紡いでいた。


「リシリーは……」

「安心してください、あの女は捕らえました」


 その言葉を聞いてほぼ無意識のうちに「良かった……」とこぼしてしまい、心ない姉と呆れられるかと一瞬焦ったが、こちらを見つめているヴェガウンディの目の色が柔らかなものであることに気づいて安堵した。


「どうなりますか?」

「牢送りとなるでしょうね」

「殿下の命を狙ったのだから……当然、ですね」


 刺された時はどうなることかと思ったが何とか生き延びられて良かった。


「アズリーさんは彼女の罪を消したいと考えているのですか?」

「……いえ」

「本当のことを言ってくださいね」

「お気遣いありがとうございます。でも、本当なんです。リシリーを無罪としてほしいとは思っていません」


 するとヴェガウンディは「分かりました」と呟くように言った。


「あの」


 頭の中に浮かんできたことを言いたくなって。


「何でしょう?」

「リシリーの嘘を信じないでくださって……ありがとうございました」


 彼はふっと笑みをこぼす。


「信じるわけがありませんよ、あのような馬鹿げた嘘」



 ◆



 牢に送られたリシリーは今見張りの者に取り囲まれている。

 間もなく棒で叩く罰が下される。

 ただこれは国王が直々に下した罰ではなく、見張りの者たちが自主的に時折開催しているイベントだ。


「やめて……もうっ、こんな、こんなことっ……やめて! やめてよ! リシリーなんにも悪くないのにっ……聞いて! 悪いのはリシリーじゃない、おねーさま! おねーさまなの! おねーさまが悪いのよっ」


 薄い板の上に座らされたリシリーの背に木の棒が叩き込まれる。


「ぎゃあ!!」


 背中に強烈な一撃を加えられたリシリーは情けない声をこぼす。


「う、ううっ……っ、ぅ、あぎゃ!!」


 見張りの者たちの中のリーダー的存在の男は手にした木の棒でリシリーの背中を何度も繰り返し叩く。


「や、だ……っ、やめ……ぎゃあ! いや、ぐ、ぎゃああ! う……っ、うう……い、いだ、い、ぼぉ……ひっ、ぎゃば! ああ! い、や……ぎゃああっ!!」


 叩かれている間もリシリーは無罪を主張していた。

 だがその言葉に説得力はない。

 なぜなら彼女は『悪いのは自分ではなく姉』といったワンパターンの主張しかしないからだ。


 王子にすり寄ろうとして、失敗した途端刃物で刺そうとした――そんな悪女の言葉を真面目に聞こうとする者などいるわけがない。


「てかさ、こいつ、婚約者いる男に手ぇ出したこともあるらしいぜ」

「サイッテー」

「あり得ねえ女だよな」

「ホントそれだわ」


 その場にいる誰もがリシリーの存在を否定していた。


「姉を悪者にすることに必死だなんて、酷すぎる妹ですわ……そんな妹を持つとお姉さんも不幸でしょうね」

「そう思うにマル!」

「たまにいるわよね、そういう、いろんな意味で必死な妹って」

「あたしの妹はめちゃくちゃ可愛いから最高。こんな悪質な妹じゃなくて本当に良かった、って思う」


 リシリーの味方になろうとする者は一人もいない。


「ち、ちがっ……リシリーは、悪い、こと、なんて……して、な……うぎゃ! ぎゃ! ああぎゃ! うぐぁびゃ! ……ぐすっ、ぅ、ううっ」


 今や彼女は絵に描いたような悪女として扱われている。

 ただ冷たい視線を向けられるだけ。

 誰からもまともな人としては見られていない。


「もうやめ、て……やめて、よぉ……リシリーは、リシリーはぁ……なんにも悪く、ない、のにぃ……っ、ぎゃ! やだよ、こんなの……やだ、よ……ぅ、うばあああああ!!」


 その日の罰ではリシリーは死ななかった。

 彼女の身体は意外と頑丈で。

 数時間にわたって棒で叩かれ続けて、それでもなお、彼女は命を繋ぎとめたのだった。


 ……だがそれから少しして処刑が決定する。


「聖女様の悪口を言うなんてねぇ……」

「しかも殿下のお命を狙ったのでしょう? 処刑されても仕方ないですよね」

「あんなに穏やかなお姉さまだというのにそれを悪者に仕立て上げようだなんてシナリオが甘いですわ」


 彼女に同情する者はいなかった。


「ねえ! 聞いて! リシリーは悪くない! そこのおねーさん! 話聞いてよ、ちょっとでいいから、ちょっとだけだから、ねえ!」

「お断りしますわ、穢れますもの」


 処刑日前日、それから逃れたかったリシリーは、何とか話を聞いてもらおうと懸命に声をかけていたのだけれど。


「あ! そこの緑の服のおにーさん! リシリーの話聞いて? ねえ! お願い聞いて! リシリー、このままじゃ処刑されちゃうからっ……取り敢えず話を聞いてよ! そしたらそしたらきっと……ううん、絶対! リシリーが悪者じゃないって伝わるはずだからっ……!」

「何だよ、知り合いでもないのに絡んでくんなようぜぇ」


 誰にも相手にされず。


「おばーさん……聞いて、リシリーの話……」

「悪い噂がいくつも出ているのじゃよお嬢さん。もう手遅れじゃ。今回はもう諦めて、次の人生では真っ当に生きるのじゃ」


 しまいには次の人生について言われてしまうほどで。


「そこのおじーさん……リシリーの話……聞いて……」

「ほえ? 聞こえんわい」

「リシリーね……悪くないんだ、本当は、本当は違うっ……! 悪いのはおねーさまなの……リシリーはまとも……リシリーは正義……!」

「何を言っておるか、寝言は寝て言わんかい」


 結局誰にも話を聞いてもらえないまま――処刑された。

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