第九話 お飾りの元街長
街の人は、徐々に外へ出るようになった。
またそれと同時に、街という巨大な建物の必要性を再検討する必要が出てきた。雨風を凌げるのはいいのだが、住民が積極的に外に出るようになったので、むしろこの屋根と壁が邪魔のように感じるのだ。
僕たちは再び会議室に集う。今日は街の解体と、スズメが持つ五丁目の情報についてだ。
「キバシリ、ヤイロ、シロマル、ノスリ、……ウトウにカナリア、それとカワセミとスズメさん、私オオルリ。全員揃っているので、会議を始めます」
オオルリが一礼したので、僕たちもばらばらに頭を下げる。
会議が始まった。
「スズメでも五丁目についてそんなに知らないんだ……。オオルリ姉さん、僕は一回行ってみた方がいいと思う」
会議が終わり、僕たちは会議室の片付けをしていた。
『先代の街長から聞いていることは、同じ雀街にある五丁目の位置と、長の持つ能力……だけなんだよ』
スズメが五丁目の場所を言おうとすると、ウトウがホワイトボードに古い地図を貼った。スマスクに取り込まれていない資料を使うときに、ホワイトボードは便利だ。
『波止場から東に行って、山の麓まで上がったところ、としか……』
これだけ聞くと、全く当てにならなかった。しかし、ウトウが持つ地図に向けられた指は、迷わずある場所を示した。ウトウがそれを見て唸る。
『なるほど、クマどもはここを選んだのか』
どうやらクマは、わかりやすいところに人を集めたようだった。
『異人館っていって、昔外国人が母国風に家を建てて住んでいたところらしいよ。ちょっと遠いけど、多分ここから歩いて行けなくはないはずだね』
ウトウはおそらく嘘は言っていないだろう。彼は頻繁に五丁目に足を運んで、様子を伺っているはずだから。下手にスズメから聞き出すより、ウトウの方が持っている情報は多いに決まっている。
しかし、僕はその場でウトウに聞いたりはしなかった。上手くかわされて、姉さんたちにも信じてもらえないに決まっている。それに、仮に彼と僕で五丁目に行ったとして、何か出来るわけでもない。
僕も、知らないふりをすることにした。
「私も偵察はした方がいいと思うけど、クマに会うかもしれないし、メンバーは限定した方がいい?」
「そうだね。ひとまず戦える人と、あとは場所がわかる人……かな?」
戦えるとはいえ、ノスリやシロマルを連れて行けば騒がしくなり、クマに気付かれてしまうかもしれない。前回戦っていなかったが負傷したヤイロや、非戦闘員のカワセミも行かないだろう。それなら数はかなり絞られる。
「僕と姉さん、あとはウトウ、カナリア、……スズメ。この五人でいいんじゃないかな」
「私、キバシリ、ウトウ、カナリア、あとスズメ。スズメは戦えないけど元街長だし、案内人だね」
それでいいと思う、と姉さんは言った。あとは、このメンバーでいつ、見に行くかを決めるだけだ。




