第十話 雀街五丁目へ
水平線が滲むように明るくなり、空が青からオレンジに変わっていく。水鳥の群れが、広い空を慌ただしく横切る。そよ風で仄かに草木が揺れた。昼間とは打って変わって、静かな風景。
まだまだ僕たちにとって、見慣れない光景だ。
「おおー! 綺麗な景色じゃないか!」
街の外には、僕を含め五人、召集したメンバーが揃っている。
今日、五丁目に向かうのだ。
偵察をする旨をウトウに伝えたときに、もたもたと計画を練っていてはシロマルやノスリにばれてしまうのではと心配されて、すぐに行くことになったのだ。もちろんあの二人も起きて気づくだろうが、彼らに話したら付いてきそうなのだ。仕方がない。
保管状態が良かったおかげで綺麗な地図を見ながら、スズメを先頭に進み始めるものの、ウトウがしんがりで苦笑いしているのが視界の隅に見えた。スズメを見て納得する。地図が逆さまだ。
あまりにも先が思いやられるので、スズメの真後ろにいた僕は前に出て、地図の端を持った。
「地図が逆だ」
スズメはあたふたと地図を回転させる。もう面倒な気がして、僕が地図を持った。
「えーと。ここまで行って、そこから山に向かって進む……? すごく遠いね」
ウトウを盗み見ると、微笑んでいるから彼にとっては余裕なのだろう。街の民は、運動不足なのかもしれないと今更気付かされる。
「……ここ、で、合ってる?」
辿り着いた地点には、山へと続く階段があった、が。
「向こうに見える建物、今にも崩れてきそうだけど……」
ウトウが言っていた通り、元は立派な洋館か何かだったのだろう。だが、今や階段を上がって近づくのすら怖い見た目になっていた。
さすがにこの建物の中にテリトリーがあるわけではなさそうだ。ウトウなら、知っているはず。そう思って見ると、目が合った。
「あっ」
「キバシリ、何かあった?」
「な、何もないよ。……それより、ウトウはどうしたの?」
「いやちょっと、トイレ行くって言おうとしただけだ」
もしかして、五丁目の付近にトイレがあるのか? アマモがふいと離れたが、僕は気にしなかった。
「キバシリ? 僕はトイレ行くだけだって……。ついて来て何かあった?」
「そっちにテリトリーがあるの?」
僕は声をひそめた。誰かに聞かれてはまずい。
「ないけど、どうして?」
「ないの? ……あっ」
思わず大きな声を出してしまった。慌てて周囲を確認するも、誰も気にしておらず、胸を撫で下ろす。
「だってトイレがあるって……」
ウトウは目をまんまるにしたが、笑った。
「街の外はトイレがないから、見えないようにそっとやるんだよ」
「嘘だ……」
「キバシリもする?」
「いや僕は、ちょっと今は……いいかな」
「じゃあ皆と合流しなよ」
ウトウは片手を振って廃墟の影に入った。
「そうだ、五丁目の場所を聞きたかったのに……」
「薫は知らないのか。お花摘みとかは常識だと思ってたぜ」
今回だけは、自分たちで探さなければならないみたいだ。
「さすがに何回も訊かれると、皆も勘付くからね、キバシリ君」
キバシリが去ったのを確認して、ウトウはスマホを取り出した。




