第十一話 危険人物
「——やっと見つけた」
役場から一番離れた街の端にある建物。一見すればただの家だが、ここは犯罪などをしたことのある、危険人物を隔離しておく場所だ。
家の中はプライバシー保護のため、カーテンで隠されて見えない。しかし、当然のことながら隙間があった。
覗いた室内は暖かく照らされ、幸せそうな夫婦が何かを語り合っている。まるで、自分たちは新婚で子どももいないかのように。
冷えた屋外にいる彼は、ぎりりと歯を噛み締めた。今すぐこの窓を叩いて中にいる夫婦を脅かせたい衝動に駆られたが、必死に堪える。窓の向こうにいる二人は罪人だ。いくらでもやりようはあるのだ。
「……罠にかける餌にしてやる」
「スズメ、本当にこの辺りで合ってる?」
地図が示す場所に到着して早二十分。ぼろぼろの建物の周りをうろうろしているだけの僕たちは、何も収穫がないままだ。ウトウはトイレから戻った後、ふらりとどこかに行ってしまった。カナリアは時折りスズメと話しながらうろうろしているので、こちらも当てにならないようだ。
「合ってるはずだ。見つからないということは、予想しない場所にあるのかもしれない」
予想しない場所。探して見つからないなら、その可能性もある。
僕は意を決して、階段を登った。
「キバシリ? ちょっと! そっちは崩れるかもしれないから……!」
階段を登る先にあるのは、今にも崩れそうな木造の、廃墟たち。
「大丈夫だよオオルリ姉さん。僕は精霊付きだから」
「だからって、そんな無茶は」
僕は姉さんに返事をせず、建物の前に立った。傾いだ建物の上には風見鶏がある。建物を象徴したであろうそれも、不気味さを醸す要素のひとつだった。
恐らくウトウはこの建物の名も知っているだろう。そんなことを考えながら、建物の裏手に回り込んだ。
「なっ……」
「クマのテリトリーが……」
僕もアマモも呆気にとられるほどのおびただしい量の骨が積んであるそこは、紛れもなくクマのテリトリー。
雀街五丁目だ。
「皆に知らせないといけないけど……、さすがにここは危ない。この建物が崩れてきたらひとたまりもないね」
「だからって薫、諦めるのか?」
「いや……」
僕たちは骨に気を取られて、気が付かなかった。
「やあキバシリ。こんなところにテリトリーがあるなんて……だね。僕もびっくりだ」
「わあっ……! ウトウ? まさか待っ……」
「静かに静かに。僕も今見つけたところだよ」
ウトウはそう言って、口に人差し指を当てる。姿が見えないと思ったら、僕を待っていたなんて。
「さて、君はどうする? 君が来たルートを通って、他の人が安全とは限らない。だからといって見なかったふりをする?」
「こいつ……! 薫、何でこいつのことを皆に教えないんだ? こいつに吐かせたらいいじゃねーか!」




