表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第七話 未来への希望



「それがね、何とこの本、私でも読めないの」

 カワセミは、ゆっくり言葉を切りながら伝える。首を傾げたヤイロの前髪が揺れ、包帯が垣間見える。

「そんなに難しいことが書いてあるの?」

 首を振ったが、これではヤイロに伝わらないのだと思い出す。

「違うよ。ま、開けてみて」

 ヤイロはカワセミに促されて本の表紙をまさぐり、分厚い一枚目をめくる。

 そこにはやはり何度見ても、カワセミには理解できない文章が並んでいるのだ。

 ヤイロはそろそろと本の真上に手を下ろし、滑らせた。紙に引っかかりを感じて手を止めつつも、紙の上を撫でる。

「これ……すごいぼこぼこだ」

 もう一枚捲って、滑らせる。興味を持ってくれたようだ。

「点字……だよね? 読み方はわからないけど……、これを覚えたら、本も読めるようになるんだ……!」

 嬉しそうな表情になったヤイロに、私はもう一冊、本を持たせた。今日病院に持ち込んだのはこの二冊。今のヤイロなら、喜んでくれること、間違いなし。

「これも……点字?」

「そう、これは点字入門の本だよ! 私と一緒に読めるようになろうよ!」

「うん。今まで点字なんて見たことなかったけど、街にあったんだね」

「それね、病院の本に混ざってたんだよ。オオルリ姉さんが探してきてくれたの」

 オオルリの名前を聞いて、ヤイロの表情はやや沈む。

「そっか……私、医者になれなさそうだけど、姉ちゃんは心配してくれてるんだ……」

「それだけど、医者は無理でも看護師とかじゃいけないの? 看護師だって、医療になくてはならない存在じゃない?」

 はっと、わずかに口を開けたヤイロは笑顔になった。

「そうだね。医者だけじゃ出来ないこともあるよね」

「だからさ、勉強はやめなくてもいいんだよ。点字で読めるようになろ?」

「うん! 早く読めるようになりたい!」

 カワセミがデイルームを出る頃には、最初とは見違えるばかりに、ヤイロの顔は笑顔があふれていた。

「うん、いい感じの時間。キバシリ兄ちゃんはもう来てるかな」

 カワセミは、待ち合わせ場所に向かった。


「植生調査? 街の中だけで良さそうなのに」

 最初に植生調査を提案したのは、ウトウだった。

「僕たちは何を食べたらいいか知ってるけど、きっと一丁目は街の外で暮らす人が増えるよね。その時、街の中だけで食料が賄えなくなることも、あるはずだよ」

 だからあらかじめ、街の内外の植生の差を調べ、食べられる植物を街の外で栽培することが大事だというのだ。

 初めてあがるウトウの家はかなり古く、知らないものが沢山あって楽しかった。

 私があちこち見て回っている間に、ウトウは古い植物図鑑を引っ張り出してきて手渡した。

 その本は街にあるものよりずっと専門的で、多様な植物について、分布まで書いてあった。

「キバシリは野生動物の調査をするから、あの子の巻き添えを食わないよう、事前に話し合って調査区域を分けるといいよ」

 そう言われたものの、彼は調査でどんなことをするのか想像がつかない。だが話は聞いたほうがいいと思い、調査前に待ち合わせることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ディストピア世界に破壊と再建の動き、名前の持つ意味合い、キャラ立ち。いずれも読ませる力がありますね。ブクマしました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ