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第四話 院長降格



「五丁目テリトリーのクマ討伐までに、一丁目がすることは戦闘力の向上です」

 オオルリはやや睨むようにスズメを見た。スズメはびくりと小さくなる。今まで優秀な大人を選んで気まぐれに名前を与えていたのは怠慢だと、その目は言っている。

「そのために、スズメさんには、十八歳以上五十歳未満の方々に、名付けの儀式をしていただきます」

「そん……な……」

 思わずスズメがつぶやく。それもそのはず、毎日何人もの名前を考えることになるのだ。妖精の数は間に合っても、名前だけはどうにもならない。

「もちろん、一日で終える必要はありません。ひと月ほどかけて名付けをお願いします」

 頭を下げられたスズメは、つられて頭を下げる。

 さて、ここからが本題だ。

「ウトウさんと、カナリアさんに、頼みたいことがあります」

「え、僕たち?」

 困惑する二人をよそに、オオルリは話し続ける。

「あなたたちに、これから増える妖精付きの訓練を依頼したいです。あなたたちは妖精付きではありませんが、街のものよりも指導のレベルが高いのではないかと、訓練に参加して感じました。実際にキバシリは、ウトウさんの指導で強くなっています」

「そ……そうは言っても、僕は練習スペースを紹介しただけ……なんだけど」

 狼狽えるオオルリの目が、僕を見る。

「キバシリ? 訓練したって、ウトウさんとじゃなかったんだ?」

「……僕の説明が足りてなかった。僕はウトウに内緒で、能力の訓練をしたんだ」

「それなら、ウトウさんたちじゃなくて、キバシリに教えてもらった方が……」

 皆黙ってしまった。僕が、他の能力の妖精付きを指導できる保証はないのだ。

「戦闘系の能力じゃなかった時に武器を教えられるウトウたちがいいと、僕は思う」

「そう……? ウトウさんとカナリアさん、お願いしてもいいですか?」

 ウトウはにこりと微笑む。僕たちが今までどんな暮らしをしてきたのかなどの情報を欲しがっているため、彼らはこれからも積極的に協力してくれるだろう。

「むしろ僕とカナリアも、妖精付きを見るのは初めてだから、楽しみにしてるよ」


「質問ある人はいますか?」

「「はーい」」

「はい」

 僕とシロマル、そしてカワセミが手を挙げ、僕から年齢順となる。

「スズメのことなんだけど、スズメが名付けに集中している間、病院の院長としての仕事は誰が?」

「それは私がする。もともと院長の助手だから、仕事も慣れているし、クマ討伐の後、私が院長になったからね」

 ということは、スズメは本格的に一般民になっていたということだ。クマ討伐からさほど経っていないのにこれほど降格しているのは意外だった。

 次のシロマルとカワセミは歳が同じなので、じゃんけんをしてシロマルが先に話すことになる。

「訓練を始めるなら、開いてる店が減らない?」

 確かにそうだ。十八歳から五十歳までは、この街の人口の大半を占める。彼らがいなくなれば、対象外の人が買い物に出られない。

「夜だけ店を開けるとかはどうかな?」

 姉さんも、これは想定外だったようで悩んでいる。

「店番してたら出られないよ」

 そう言ったのはヤイロだ。包帯を巻いているが、それだとさらに目立つので、パーカーのフードを目深に被っている。

「というか、ウトウたちは一日中付きっきりで全員の指導が出来るんだから、すごいよな」

 ウトウが苦笑いしている。彼からしても、出来る気がしないようだ。

「じゃあ、こうしたら?」

 人差し指を立てたのはカワセミだ。

「二人以外にも、既に銃の使い方を習った人たちも補助で入る。あと、なんだろ……、毎日じゃなくて休みの日を決めて、時間帯も午前か午後だけにするとか。丸一日じゃやる側も受ける側も辛いだろうし。どうかな?」

「いいね、それにしよう。……って僕は思うけど」

 ウトウが食い気味に肯定し、気まずそうに周りを見た。

「僕もいいと思う。カワセミ、提案ありがとう」

「じゃあ、私からの質問を言うね」

 カワセミは立ち上がった。彼女が見ているのは、他でもなくさっきまで話していたウトウだ。

「あなたたち、どこから来たの? 何もない街の外で生き延びてきたなんて、なんか説明になってない気がする。ちゃんと今、今までどこで何をして暮らしてきたか、説明して?」

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