6検体 「…………いや、ちっさ!!」
原っぱで寝た翌朝、リヒトはウサギに起こされた。
いや、違う。
正確には、散歩中のウサギに踏まれた。
「すみません! すみません!
こんなところに人がいるとは思わなくて……」
「いや、大丈夫っす……」
身長170㎝程度はある自分と、同じサイズの巨大なモフモフにペコペコと頭を下げられては、怒るにも怒れない。
だって……、ウサギだぜ? 相手……。
「お詫びに、美味しい牧草が生えている場所をお教えいたします!」
「いや、大丈夫っす……」
ご好意は大変ありがたい。
ただ、牧草じゃなくて、ほうれん草がよかった。
ボリボリと、寝起きの頭をかく。
「なんじゃ、ウサギの好意を無下にするとは。
そんなんだからナンパも失敗するのではないか」
聞き覚えのある声にリヒトは振り返る。
腹立たしいほど落ち着いた声の主は、自分よりも50㎝は小さい神ちゃまだ。
「うるせぇ……。朝からなんの用だよ」
「なんの用だと?
ニート、お前は仕事をしないつもりか?」
ああ、分析屋さんね。
はいはい、やりますやります。やりますよーだ。
小指で鼻をほじりながら適当に神ちゃまの話を聞く。
「……お前、死にたいのか?」
やべぇ……、怒らせたら木っ端微塵だった!!
「やりますやります!!
ええ、是非ともやらせていただきます!!」
「うむ。では行くぞ!」
「行く? 行くってどこに……」
その問いに、神ちゃまは呆れた顔をする。
こんな馬鹿で大丈夫か? とでも言いたげだ。
「肉食獣の巣に決まっているだろう?
ニート、お前の力を見せてもらうぞ」
あ、俺もう死んだかもしれない。
肉食獣によって、リアル木っ端微塵になる未来がチラついた。
「ニート、あれが肉食獣だ。見えるか?」
「…………なぁ、あれだよな?」
「だからそう言っておるではないか。
なんだ? もう怖気付いたのか?」
「…………いや、そういうわけじゃないけど」
肉食獣の牙によって、ウサギが壊滅しかけてる。
たしか、神ちゃまはそう言ってたよな……?
「…………ウサギ、壊滅しかけてんだよな?」
「ああ? だからそう伝えただろう。
肉食獣の牙によって、らびらびランドは壊滅の危機に瀕していると」
うん。やっぱりそう言ってたよな。
俺が聞き間違えたわけじゃない。わけじゃない……。
「なんじゃ、怯えておるのか。軟弱者だな」
「…………いや、ちっさ!!
肉食獣ちっさ!! ウサギの方がでけぇだろ!!」
俺、170㎝。神ちゃま、120㎝。ウサギ、170㎝(頭だけで)。
肉食獣……20㎝……。
ウサギが踏めば勝てるだろ!!
俺を踏んだんだから!!
寝起きだからではなく、意味がわからず痛むこめかみを、リヒトはそっとさするのだった。




