5検体 「えっ!? そっちの分析屋さんすか!?」
「それよりもニート。
お前は分析業務の経験者なんだろう?」
「いや、だから何を分析すんだよ!!」
「先も言っただろう。肉食獣の分析だと」
だからそれは具体的に何を分析すんだよ……。
理解しきれていないリヒトを見て、少女が大きなため息を吐く。
「馬鹿にもわかりやすいように教えてやろう。
今、らびらびランドは肉食獣の牙によって、壊滅の危機に瀕しておる。
ニートはこれまでの分析業務の経験を活かし、ウサギたちが肉食獣に勝てるよう指導してほしい」
「いや、それ分析関係なくね?」
「何寝ぼけたことを言っておる。
肉食獣の行動や生態を分析し、らびらびランドにとって良い結果を出す。
これこそ分析屋さんお得意の危機分析業務だろうが」
「えっ!? そっちの分析屋さんすか!?」
「そっちってなんだ。それしかないだろう」
少女は意味がわからない、とでも言いたげな冷たい視線をリヒトに送る。
「いやさ、それあんたがやればいいんじゃねぇの?」
「はあ? できるならとっくにやっておるわい、この戯けが」
「やれない、ってことか?」
「我は神ちゃまだからな。できない」
こんな神がいてたまるかよ。
てか、神ちゃま……ブフッ……。
神様、にはなりきれないのな。
神ちゃま……。
「おい。何か失礼なことを考えておるな」
「いやいや、滅相もございませんよ! 神ちゃま!」
リヒトの言葉に、神ちゃまの眉が釣り上がる。
地面に映る影が、その瞬間大きく揺らいだようにも見えた。
「ふうむ。いいことを教えてやろう。
神ちゃまを怒らせると……お前死ぬからな」
あっさりと死の宣告をされた。
神が平気で人の死に関わるなよ、死神か!
「じゃあ、とりあえず俺はウサギを助ければいいわけ?」
「だからさっきからそう言っておるだろうが」
正直、ウサギを助ければいいだけなら、経験者じゃなくてもいいだろ。
つーか、やること俺が思ってた分析じゃねぇし……。
「詐欺だ……」
「詐欺? お前は意味のわからぬことばかり言いおるな。
これだからガキの相手は疲れる」
やれやれ、と手をかかげて苦労をアピールされる。
意味のわかんねぇところに連れてこられた俺の方がよっぽど疲れてるよ。
「まぁ、どうせ帰れねぇんだろ?」
「帰るも何も、衣食住は約束すると書いただろう?」
「あ、そうだよな!!」
そうだ、この求人の魅力はなんといっても衣食住完備!!
神ちゃまからの仕事だからな!
素晴らしい衣装、豪華な食事、煌びやかな住居……。
そんな夢のような暮らしが俺を待っている!!
「それで!?
俺の服は!? 飯は!? 家は!?」
「はあ? 服ならその辺の草でも編め、なかなか丈夫だぞ。
飯は肉食獣を倒せば手に入るだろう、なんとかしろ。
家なんかなくても、この原っぱを自由に使うといい。
広いから快適であろう?」
「…………まじで言ってる?」
どうか、冗談であってくれ。
そんな俺の願いは虚しく、神ちゃまは目を丸くしながら首を傾げる。
「保証しただろう? 衣食住」
とんでもねえブラック企業に、俺は雇用されたようだ。




