7検体 「理不尽反対!!」
「ウサギが踏めばよくね?」
これ以上他にいい案があるわけない。
20㎝の肉食獣を、頭だけで170㎝はあるウサギが踏む。
うん。素晴らしい分析だな。
リヒトのドヤ顔に、神ちゃまはゴミでも見るような目を向けた。
「馬鹿なのか?
それで勝つるなら、とっくに勝っておるわい。
だいたい、それならお前は死んでおるだろうが」
「はぁ? どういう意味だよ」
「もう忘れたのか? やはり戯けだな。
お前は朝、ウサギに踏まれたではないか」
たしかに。俺は朝、ウサギに踏まれた。
でも、それほど重量を感じなかったような……。
「わかったか? ウサギは軽いのだ。
モフモフの見た目の通り、中身もフワフワなのじゃ」
「なるほど……?
じゃあ、俺が肉食獣踏めばよくね?」
20㎝といえば、ちっさい犬っころのようなサイズだ。
かわいそうだけど、殺らなければ俺が神ちゃまに殺られる。
「ふうむ。では、やってみろ」
ポン、と神ちゃまに軽く背を押された。
気がしただけで、実際はものすごい力で吹き飛ばされた。
離れたところから肉食獣の巣を見ていたはずなのに、今の俺は奴らの巣のど真ん中に立っている。
「あ、どうも……」
言葉など通じるかもわからない。
が、一斉に向けられる視線に無言というのも気が引けた。
「何しに来た……」
なんだ、やっぱり喋れるのか。
なら踏み潰すこともなく、穏便に事を済ませられるかもしれない。
「あの、ここからご退出していただくことは可能ですか?」
「断る……」
「じゃあ、狩場を変えるとか!
ほら、他の場所にもウサギっているでしょう!?」
ギロリ、と肉食獣たちの目が動く。
あ……、やばいかもしれない……。
「ウサギに頼まれたのか……?」
「いえ、そういうわけではないです」
「なら何故にそのような事を申すのだ……。
我々はウサギなど、食うてはおらぬというのに……」
「え? そうなの!?」
相手が肉食獣だということも忘れ、リヒトは大声を上げる。
じゃあ別にここにいたってよくね!?
理不尽に住居奪うなよ!! ひでぇな神ちゃま。
家を失った自分と重なり、なんだか肉食獣がかわいそうに思えた。
「じゃあ、俺が交渉してみるわ!!」
「それは本当か……?
助かる、巨大な人間の童よ……」
巨大な人間の童ってなんだよ。
童って歳じゃねぇけど、まぁいいや。
神ちゃまにガツンと言ってやろ!!
ズンズンとリヒトは神ちゃまの元へと戻る。
「なんじゃ? 踏み潰しは終わったのか?」
「あいつら、ウサギなんて食ってねぇって言ってたぞ!!
それなのに追い出そうなんて、かわいそうじゃねぇかよ!!
理不尽反対!!」
リヒトの言葉に、神ちゃまは大きなため息を吐く。
「それで、その言葉にまんまと引っかかったのか?」
「はぁ!? どういうことだよ!!」
「ほれ、見てみろ」
呆れ顔の神ちゃまが、肉食獣たちの巣を指さす。
だからあいつらは悪いことなんてしてねぇんだよ!!
苛立ちを感じながらも、神ちゃまの指さす方向を見る。
「え? いない……?」
先程までわらわらと群れていた肉食獣たちの姿はどこにもない。
「やっと見つけた巣だったというのに、この戯けが」
……騙された。
リヒトの初分析は、大きな痛手を残して失敗に終わった。




