オフィス・トライメライ 幕張研修所31
しばらくすると頼んでいた飲み物とケーキが運ばれてきた。ミルクレープとチョコレートケーキはごく普通。アフタヌーンティーだけやたら仰々しかった。三段重ねのプレートにスコーンと小さめのケーキたちとアイスクリーム。子供心をくすぐるようなデザートだ。
「アハハ……。やっぱりこんなん来るよね」
天沢さんはそう言うとケーキトレイをバッグに自分を入れて携帯で撮影した。そして「食べ切れなかったら二人とも手伝ってね」と言っていたずらっぽく笑った。確かにこれを女子一人で食べきるのは大変だと思う。
それから私たちはケーキと飲み物を堪能しながら色んな話をした。私は自分の子役としての話を。鹿島ちゃんはお裁縫と服飾デザインの話を。それぞれ天沢さんに話した。天沢さんは私たちのことを聞くたびに「マジで!?」とか「すごーい」とか言って感心したり驚いたりしてくれた。そのコロコロ変わる表情は本当に普通の女子高生に見える。
「二人ともほんとしっかり者だねぇ。私の半分しか生きてないとは思えないよマジで」
一通り話し終わると天沢さんはそう言って残りわずかになったティーポットから紅茶をカップに注いだ。そしてそれを一口飲むと「ふぇぇ」とため息を吐いた。その姿は年下の私から見てもかなり可愛らしく見える。
そうこうしていると天沢さんの携帯に着信が入った。天沢さんは「ごめんね」と言ってその電話に出ると「はい天沢です! お疲れ様です!」とハキハキと応答した。そこにはさっきまで「ふぇぇ」とか言っていた面影はもうない。完全にプロの役者の顔だ。
「――そうですね。夜には終わると思います。――ええ。分かりました。では終わり次第戻りますね。――はい! お疲れ様です。失礼します!」
天沢さんはそう言って電話を切ると再び私たちに向き直った。そして「ごめーん。もう取材の人来てるんだってぇ。私行かなきゃ」と言って申し訳なさそうに眉をへの字に曲げた。
「こちらこそすいません。ご馳走になっちゃって……」
「良いんだって! 先輩や大人にはたかった方が良いんだよ? みんな大人ぶりたいんだからさ」
天沢さんそう言って立ち上がった。そして「お金払っていくから食べてていいよ」と言ってニッコリ笑った――。




