珈琲と占いの店 地底人11
美鈴さんはそこまで話すと「ふぅ」と小さくため息を吐いた。そして空になってしまったコーヒーカップを両手でギュッと握ると目を強く瞑る。
「大丈夫?」
「……うん、大丈夫。思い出したら少し怖くなっちゃった。もう一〇年以上前なのにね」
彼女はそう言うとコーヒーカップをゆっくりと離した。離した手が少し震えている。
「ごめんね。私から話したのにこんなんなっちゃって。でも……。聖那ちゃんには話しておきたかったんだ。なんつーのかな。聖那ちゃんって割と私と同じ匂いがするからさ」
「そっか……」
「あ、ごめんね。聖那ちゃんは私みたいにがさつで性悪じゃないよね」
彼女はそう言って戯けた。そして一瞬酷く寂しい顔になる。この世の全てが怖い。誰も信じられない。自分さえも。彼女の表情にはそんな色が浮かんでいるように見える。
「美鈴さん……。あのね。上手く言葉にできないんだけど」
「ん? 何?」
「美鈴さんはがさつじゃないよ! そりゃ少し口が悪いなぁって思うときはあるけど……。でも優しいし、いつも私に親切にしてくれるじゃん。だからさ」
そこまで話して私は言葉に詰まってしまった。やっぱり私は気持ちを言葉にするのが苦手みたいだ。
でも美鈴さんはそんな私に「ありがと。すごく嬉しいよ」と言って笑ってくれた。そして「暗い話しちゃったね」と言ってうなじを掻いた。
「ま、ともかく私はちっこいときに母親に捨てられたんだ。で! 運良く今の父親に拾われたってわけ。これは話すと長いからまた今度ね」
美鈴さんはそう言うと手のひらをポンと叩いた。これで第一幕終了。そう告げるみたいに。
それから美鈴さんは明日の大まかな流れを懇切丁寧に教えてくれた。私の初バイト。魔法少女としてのデビュー戦について。




