珈琲と占いの店 地底人12
「まずひとつ言っとくと私たちは弥生のサポートなんだ」
美鈴さんは最初にそう言うと私が出雲社長から預かった封筒を開いた。そして中からクリップ留めされた書類を取り出すと私の方を向けてそれを並べる。
「実はもともと魔法少女の企画は弥生一人のために用意されたものなんだ。で! それが上手くいったから新たに人員追加って流れになってね。だから基本的には私も聖那ちゃんも弥生のサポって感じなんだ。まぁ……。本当は各々別の現場行った方が効率はいいんだろうけどね」
美鈴さんはそこまで話すとカウンターの弥生さんに目をやった。そして「あの子はちょっと特殊なんだよね」と付け加える。
「そうなんだ。じゃあ基本は弥生さんが魔法少女的なことやるって感じ?」
「うん、まぁ。そうね。そんな感じ。……とは言ってもウチらだって最低限の仕事はしなきゃいけないんだけどね。ま、私はともかく聖那ちゃんは初回だし大丈夫だよ。たぶんだけど……。台詞もないんじゃないかな?」
美鈴さんはそう言うと口元に曲げた人差し指を置いて資料を逆側から目でなぞった。
「今回のは割とやりやすい仕事だと思う。さっきも話したけど『あけぼし』っていう施設で子供の相手をするんだ。それで……。悪い奴をぶっ飛ばす感じだね」
「悪い……奴?」
「そう、悪い奴。あ! ちなみに中身はトライメライが抱えてる小劇団の演者さんがやるみたいよ? だから……。実質ヒーローショーに近いイベントだって思って貰えれば問題ないと思う」
そこまで話を聞いてようやくこのバイトの流れが少しだけ理解できた。要はナントカ遊園地のナンタラ戦隊ショーみたいな感じなのだろう。
「……何となく仕事内容は分かったよ」
「うん。まぁ、そうだね。たぶん聖那ちゃんの想像通りだと思う。『子供たちの前で悪役をやっつけてハッピーエンド』ってね。まぁ……。実際はそこまで単純じゃないらしいけど」
「そうなの?」
「まぁ……。色々あるんだよね。でも聖那ちゃんが気にすることでもないから大丈夫だよ! とにかくここに書かれてるとおり動いてさえくれれば問題ないから!」
彼女はまるで何を隠すみたいに言うと「はぁあ」と笑い声みたいなため息を吐いた。
私は内心『何か裏があるんだろうな』と思った。思っただけでそれ以上美鈴さんを追求はしなかったのだけれど。
そうこうしている間に弥生さんの占いは終わったようだ。カウンターの上には十字架の付いたお墓みたいな形にカードが並べられていた。




