株式会社エレメンタル4
それから私は自転車に乗って株式会社エレメンタルへ向かった。求人誌に書かれた住所は隣町だったし、わざわざ電車で行くこともないと思う。
株式会社エレメンタルの所在地は千葉県酒々井町だった。成田住みの私にとっては目と鼻の先。先週も友達と買い物に行ったし、道に迷ったりはしないと思う。
自宅のある住宅街を抜けると国道に乗って酒々井方面へ向かった。通学路とは逆方向。だから少しだけ冒険してるみたいな気分になった。
これから私は魔法少女になる。しかも日給二万円。二万円、二万円、二万円! そう考えると自然と口元が緩む。
それだけ給料が出れば私のやりたいことができるかも知れないのだ。ずっとしたかったことが――。
自宅を出てから四〇分くらいで目的地にたどり着いた。それは真新しい四角い建物で、形はコンビニの居抜きのように見えた。いや、実際コンビニの居抜き物件なのだと思う。最近はこの手の建物が多いのだ。
「お邪魔しまーす」
私はそう言ってその建物のガラス扉を押し開けた。さっきまで必死に自転車を漕いできたせいか額から汗が滴る。
「はい、いらっしゃいませ」
中に入るとすぐに受付の女性が私を迎えてくれた。声から察するにさっき電話に出たのはこの人だと思う。
「あの! さっき面接の件で電話した夏木なんですが……」
「夏木様ですね。担当の者を呼びますので少々お待ちください」
彼女はそう言うと立ち上がった。そしてパーティションで区切られたドアを開いて中に入っていった。どうやらこの建物はパーティションで何部屋か作ってあるらしく、奥から男女の話し声が聞こえる。たぶん奥には事務所と応接スペースがあるのだろう。
三分ほど待っただろうか? 彼女が戻ってきた。
「申し訳ありません。奥でお待ちいただいてもよろしいですか? 担当の逢川が今接客中でして……」
「はい! 大丈夫です。私も早く来すぎたので」
「ありがとうございます。ではこちらに」
彼女はそう言うと私を奥に案内してくれた。パーティションの向こう側は予想通り事務所のようだ。ホワイトボードと事務机。そんなありふれた会社の事務所。
「こちらでお待ちください」
彼女はにこやかに言うと私にソファーに座るように促した。パーティションの向こう側から何やら笑い声が聞こえた。




