株式会社エレメンタル3
下の階に降りるとリビングに母が居た。母の手元にはノートPC。おそらくCADで製図しているのだと思う。母は在宅で工業デザイナーをしているのだ。自分の母親ながらすごい特殊な仕事だと思う。
「あら聖那? 制服なんか着てどこ行くの?」
「バイトの面接だよー。日当が良いのあったんだ!」
「へー、そうなんだ。……まさかいかがわしい仕事じゃないでしょうね?」
母そう言いながら私に疑いの目を向ける。
「違う違う! そんなんじゃないって! 普通のバイトだよ」
「本当にぃ? まぁいいわ。あんまりバイトにうつつ抜かすんじゃないよ。学生の本分は勉強! いつも言ってるでしょ?」
「はいはい、分かったよ。週末だけのバイトだから大丈夫だって」
私はそれだけ言って母に手を振った。
流石に『私! 魔法少女になることにしたから!』なんて言えるわけがない。もしそんなこと言ったら本当に病院に連行されてしまう……。気がする。
「あ! ちょっと聖那! 今日はお父さん帰ってくる日だからね! 五時までには帰ってくるのよ! 迎え行くんだからね」
「分かってるって! 今回はお父さん一週間ぐらい居られるの?」
「いんや。三日だって。すぐに次の船に乗るみたいなのよねぇ。ったくお父さんも忙しないんだから」
母はそう言うと不満たらたらにため息を吐いた――。
私の家庭環境はだいぶ変わっていた。母は工業デザイナーで父が客船の航海士。あとは航空自衛官の兄もいる。なかなか変わった一家だと思う。まぁ自宅に居るのは私と母だけで父と兄はほぼほぼ帰ってはこないのだけれど。
「お兄ちゃんは? もうしばらく見てないけど?」
「昭人? ああ、あの子はお盆に帰省するってさ。まったく百里なんてここからそんなに遠くないんだからたまには帰って来りゃいいのにねぇ」
母はそう言うと再びため息をこぼした。そして立ち上がってコーヒーメーカーに手を伸ばして赤いネスカフェのコーヒーカップにそれを注ぐ。
「とにかく! 今日はお父さんと一緒にご飯行くんだからちゃんと帰ってきなさいね」
「はーい。んじゃ行ってくるよー」
私はそう言うと玄関に向かった。そしてローファーに足をねじ込むと玄関のドアを開いた。




