珈琲と占いの店 地底人3
弥生さん曰く、アンダーグラウンド幕張名店街には『地底人』という名前の占い館があるらしい。……らしいというか私もそれは見た気がする。おそらくあの薄暗い廊下を抜けてすぐに見つけた店だ。どうやら弥生さんはそこの常連らしく、『地底人』の占いをかなり熱心に信奉しているらしい。
「――信じらんないかもしんないけど、あそこのタロットはよく当たるんだよね」
弥生さんは目を輝かせながら言うと「本当だよ」と付け加えた。
「そ、そうなんだ」
私は少し気圧されながら答える。正直に言えば私は占いをあまり信用していないのだ。あんなのは気休めだと思う。宝くじの番号や人の死期が当たるならともかくそれ以外は全て眉唾のこじつけなんじゃないだろうか?
「はいはい。分かったよ弥生。聖那ちゃん困ってるでしょ!」
私の反応を見て美鈴さんが私たちの間に割って入った。その言い方から察するに美鈴さんも占いをあまり信じていないらしい。
「何だよー。本当に当たるんだからね! メイリンだって四柱推命とかやる口でしょ?」
「ん? ああ、あんなん全部こじつけだよ。ま、大事な小遣い稼ぎだからあんまり悪くも言えないけどねぇ。……ともかく、飯行こう! 腹減っちゃったよ」
美鈴さんはそう言うと大げさにお腹をさすった――。
それから私たちは幕張メッセ近くのファミレスに入った。夏休みらしく学生と子供が多い。
「へっへーん。実はお昼代貰ってきたんだよね」
美鈴さんはそう言うとポケットから裸の五千円札を取り出してヒラヒラとなびかせた。
「……また逢川さんにたかったの?」
「人聞きが悪いなぁ。違うよ! これは出雲社長から! 急に仕事振ったお詫びだってさ」
「いつの間に……。はぁ、あんたはいいよね。社長と仲良いから」
弥生さんは呆れたみたいにため息を吐く。
「仲良い……。うーん、どうなんだろね? 私はあの人好きだけどさ。たぶん私より弥生の方が気に入ってるんじゃないの? ほら、重要なことはぜんぶあんたに振るじゃん? たぶん私は仕事的には信用されてないんだよねぇ」
美鈴さんはそう言いながらメニュー表を私に差し出した。私は「ありがと」と言ってそれを受け取る。
「……まぁ。あんたは信用なさそうではあるよね。パッと見、ノリと勢いだけに見えるし」
「おいおい、随分とディスるじゃん弥生ちゃん。ま、本当のことだから何も言えねーけど……。今日はふわとろオムライスにしようかなぁ」
美鈴さんはそんな風に軽口を叩きながらメニューをペラペラ捲った。




