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オフィス・トライメライ2

 八階に着くと私たちは社長室へ直行した。どうやらこのフロアには社長室と会議室しかないらしくかなり簡素に見える。

 

「逢川です」

 

 逢川さんは社長室のドアをノックしながらそう言った。中から女性の声で「どうぞ」と返ってくる。

 

「失礼します」

 

 逢川さんはそう返すとドアノブに手を掛けてドアを押し開けた。ドアが開いた瞬間、室内からチョコレートとタバコの混ざったような匂いがした。それは甘さと苦さが混ざったような匂いでどことなくコーヒーっぽい。


 それから私たちは逢川さんの後ろに並ぶ形で社長室に入った。スニーカーの裏にカーペットの弾力が伝わる。室内は思いのほか簡素でガラス製の机と応接用のテーブルとソファ。あとは本棚ぐらいしかない。


 そんな断捨離したてみたいな部屋の奥に彼女はいた。ワインレッドのスーツに枠なしの小さくて長方形の眼鏡。綺麗にウェーブの掛かった金髪。顔は……。まぁ見ようによっては美人に見えるって感じの純日本人的な顔だ。見た感じの年齢はたぶん逢川さんより少し上だと思う。


 ただ……。そんな和風美人的な顔の中に一つだけ異質なものが紛れ込んでいた。日本人ではまずあり得ないような青い眼。それだけがまるで後付けされたように顔に埋め込まれている。


「お疲れ様です!」


 逢川さんはそう言うと彼女に頭を下げた。美鈴さんと弥生さんも同じように頭を下げる。私は……。とりあえず二人と同じようにした。集団行動。右へならえってやつだ。


「お疲れ逢川。もう三人も見つけるなんて景気がいいじゃないか」


 彼女はそう言うと私たちの方へ歩み寄ってきた。そして私の前で立ち止まると「初めまして」と言って右手を差し出した。私は反射的に彼女の手を握り返す。


「トライメライの代表の出雲です。よろしく」


 彼女はそう言うと口元だけ緩めた。眼は笑っていない。ただブルーハワイみたいに青く光っているだけだ。


「初めまして。夏木聖那です」


「夏木さんね。まぁ立ち話もなんだから掛けて」


 出雲さんはそう言うと私たちにソファーに座るように促した。


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