オートサービス香取2
ドアの向こう側は事務所だった。ガラスのテーブルと古びたソファと事務机。あとは自動車メーカーのカレンダーに車検案内のポスター。そんなありふれた整備工場の光景が広がる。
「そこで靴脱いでね」
美鈴さんは靴を脱ぎながら言うと私に家に上がるように促した。どうやら事務所の奥から自宅に上がれるらしい。
「うん」
私はそう返事しながら彼女のあとに続く。
自宅に上がると足裏に畳の感触が伝わった。そして奥にある台所からは洗剤と漂白剤の匂いがした。非常に生活感のある匂いだ。正直あまり心地の良い匂いではない。
そんな生活感のある空間を抜けて古びた廊下に出た。廊下の奥からは線香の匂いがした。おそらく奥に仏壇があるのだろう。
「ごめんねぇ。古い家でしょ?」
「ううん。そんなことないよ。私のおばあちゃんちもこんな感じ」
「ハハハ、やっぱねぇ。よく言われるんだ。『お前んちババア臭い』ってね」
美鈴さんはそう言って笑うと階段に足を掛けた。私も彼女の後ろからついて行く。そして急な階段を上りきるとすぐに彼女の部屋があった。
「入って入って」
美鈴さんに促されて彼女の部屋に入るとそこにはバイクの模型やら男性アイドルのポスターやらが小ぎれいに飾られていた。男子と女子の部屋のハイブリッドみたいな部屋だな……。そんな感想を覚える。
そんな部屋のベッドの横に赤い下縁眼鏡の女の子が座っていた。髪は黒髪のセミロングでポニーテール。服装はサーモンピンクのカラーシャツにデニム。よく言えばカジュアル。悪く言えば地味。そんな女の子だ。
「紹介するよ。この子が弥生! 私の幼なじみなんだ!」
美鈴さんに紹介されて弥生さんが私に軽く会釈をした。私も同じように会釈し返す。
「初めまして。春日弥生です」
彼女はそう言うと緊張した面持ちで口元だけ緩めた。




