オートサービス香取3
弥生さんは良くも悪くも普通な女の子だった。少なくとも見た目はどこにでもいる少女に見えた。年相応の女子学生。美鈴さんとは随分とタイプが違う。
「あ! 飲み物取ってくんね! 聖那ちゃんコーラでいい?」
「うん! ありがとう」
美鈴さんはそう言うと階段を駆け下りていった。
美鈴さんが居なくなると部屋がシーンとしてしまった。弥生さんはまるで私が見えないかのように俯いてマンガを読んでいる。読んでいるマンガは少年誌に載っている『桜高校の葬列』という学園モノのようだ。
私はこのマンガに見覚えがあった。……というよりも私の家にも同じものがあった。なんでも母の大学時代の友達が書いた作品らしい。たしか作者は……。篠田楓子という名前だったと思う。
思えば私が小学校の頃に母に連れられて篠田先生のサイン会に行ったっけ……。そんな記憶がよみがえった。そしてそのサイン会の会場にはなぜかカワウソが居たっけ……。そんな謎の記憶が脳裏をかすめる。
「篠田先生の作品って面白いよね」
気がつくと私は弥生さんにそんな言葉を掛けていた。同じマンガを持っている。ただそれだけの理由で。
でも弥生さんは私のそんな思いつきで発した言葉に過剰に反応した。「だよね! だよね! すっごい好きなんだぁ。良かったぁ。分かってくれる人居て。私の周りに篠田先生のマンガ好きな人居なくてさぁ~」と。急なマシンガントークに思わず苦笑してしまう。
「実は……。私のお母さんが篠田先生と大学同じなんだよね。だからウチにもマンガあってさ」
「嘘!? マジで? いいな! いいな! お母さんっ! もう!」
そんな弥生さんの反応を見て私は思った。前言撤回。この子も全然普通じゃない。
そうこうしていると美鈴さんが戻ってきた。コーラの大きなペットボトルとポテトチップスを持って。




