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平壌大空襲

私が歴史を書くのだから、歴史は私に好意的だろう

                   ー ウィンストン·チャーチル

20XX年 10月23日08:00 平壌郊外 陸自第5大隊

北進部隊と南進部隊が合流し、首都平壌を完全に包囲した。物質の供給ルートは断たれ、平壌防衛軍は既存の物質、部隊で我々と戦うしかないだろう。既に日韓軍は射撃陣地を確保し、榴弾砲による首都砲撃も可能で、我々はかなり有利な状況だ。

 とはいえ、平壌攻略で犠牲が少ないとは考えにくい。現時点でも、民間人ごときに数十名の死傷者を出す有り様なのだ。できれば交戦は避けたい。そこで首都攻撃を前に平壌市内にビラをまいた。ビラの内容は"戦闘意志のない者は武器を捨てて平壌から出て、23日正午までに包囲している日韓兵に保護を求めること"というもの。軍人でも民間人でも、一人でも減ってくれたらそれだけ有利になる。民間人までもが攻撃を仕掛けてくる可能性もあるのだから、できるだけ人はいない方が良い。


「全然出てきませんね」

平壌市内から出て来る人々を保護するために郊外に配置された第2小隊の隊員が呟く。平壌から日韓軍の勢力下へ続く道に検問を設置し、我々が投降した者を保護、後方へ輸送することになっているのだ。数時間前にはけっこうな人数が出て来たが、それ以降全く出て来る気配がない。現時点で1000人弱を保護したが、あと4時間で我々も撤退だ。

「そうだな。でも1000人も減れば大したもんだろ。朝鮮人にしては投降した者は多い方じゃないか?」小隊長が言う。

「平壌攻撃も遂に始まるんですね。どれだけの戦死者が出ることやら···」

「ああ、司令部の予測では、最悪日韓両軍で2万人が戦死するだろうとのことだ。運が良くて600人くらい。核にも気をつけないとな」

一応北朝鮮も核保有国だ。首都まで追い詰められたため、核を使用して戦況を打開しようとするかもしれない。それを警戒し、グローバルホークをはじめとする偵察部隊を総動員して核の捜索にあたっている。

「核なんて使われたら大変なことになりますからね。一刻も早く排除して···」

隊員が言いかけたとき、検問に向かって平壌から1台の乗用車が走って来た。保護を求めに来たようだ。

「車両接近!戦闘用意!」

民間人による攻撃の可能性もあるので、念のため隊員たちを戦闘体勢に着かせる。銃座に隊員が飛んで行き、M2重機関銃の照準を乗用車に合わせる。

「日韓軍検問です。止まってください」

メガホンを使って朝鮮語で話と、乗用車は指示に従いゆっくりと停車した。直ぐに銃を撃てるよう、SIG226に手を置き隊員2名が車に接近する。

 車を覗くと、若者3人と老人1人が乗っていた。窓を開けさせ話をすると、保護をして欲しいとのことだった。

「車を調べます。降りてください」

安全を確認するため、降車してもらう。後部座席の老人が降りるのに苦労していたため、隊員たちが駆けつけて手伝う。

 その時、一人の若者が銃を取りだし、降車を手伝っている隊員の頭に向けようとしていた。

「危ない!伏せろ!」

小隊長が叫び、SIG226を構えて咄嗟に発砲する。同時に若者も発砲し、隊員と若者が同時に倒れた。

「1名負傷!衛生兵を呼べ!」

若者は死亡。隊員は横から頬を被弾して出血していたが、命に別状はなさそうだった。しかし死んだほうがマシなほど痛いだろう。頬を貫通、口の中を砕きながら銃弾が通り、また反対の頬を貫通して抜けたのだ。ちなみに老人ともう一人の若者は共犯の疑いで拘束され、後方に輸送された。民間人による攻撃が頻発している。平壌攻略の際、最悪の場合平壌市民数十万人が軍民問わずに攻撃してくることになるだろう。




08:30  仁川(インチョン)空港 BP-1爆撃隊 第5航空群

「本部より爆撃指令が出た。目標は平壌。主に首都防衛軍を攻撃するが、戦略爆撃も兼ねている。とにかく爆弾をぶちまけろ」

遂に平壌爆撃命令が出た。おそらくビラをまいたものの投降する者が少なかったからであろう。爆撃で脅して投降者を増やそうという作戦のようだ。"戦略爆撃も兼ねている"ということは民間人への爆撃も許可されているということだ。平和主義の国が戦略爆撃を認めるようにまでなってしまった。気は進まないが、友軍の被害を抑えるためにも作戦を遂行しなくてはいけない。

 今回の作戦には、護衛機としてF-3Aが40機、韓国軍のF-15Kが30機。爆撃部隊として韓国軍のF-16が50機、T-50が40機、空自のF-35Aが40機、F-2が30機、そして我々のBP-1が20機が参加する。BP-1は海自のP-1を改造したものだ。P-1自体搭載量はかなりのものだが、改造した結果、爆弾など最大15t搭載できるようになった。爆撃機にしては少ないが、機体の割には良い方だろう。

 

命令が下ったため、整備員が機体の整備や武器の積み込みを行う。F-35やF-2にはJM117や500ポンド爆弾を搭載し、BP-1には日本が米軍のものをベースに開発した1000ポンドサーモバリック爆弾を24発搭載した。サーモバリック爆弾は与那国島攻略の際も活躍したもので、1発だけで半径100mを吹き飛ばすほどの威力がある。これを24発搭載したものが20機となると、平壌を文字通り火の海にできる。既に巡航ミサイルで平壌の対空ミサイルはあらかた破壊しているため、反撃もあまり受けないはずだ。


整備も終了し、200機以上の航空機が平壌目指して飛び立って行った。




09:00  平壌郊外の上空 第5航空群

「平壌市が見えてきた。随分貧相だな。これが首都なのか···」

BP-1パイロットが平壌を見て呟く。高層ビルなどは全くなく、低い建物が密集しているだけだ。まるで昭和初期の東京のようだ。しかしここに数万人の敵兵が潜んでいるのだ。

「投下開始地点まで1分。爆弾投下用意、兵倉開け」

閉まっていた兵倉が開き、1000ポンド爆弾が顔を見せる。爆弾にはこれまで犠牲になった隊員の名前が書いてあった。士気を高めるために昔から行われていることだ。遂に今世紀最大の戦略爆撃が行われるのだ。

「投下開始まで5秒、4、3、2、1、投下!」

ガタンッと爆弾が外れる音がして、20機のBP-1から爆弾が投下される。殺傷範囲が広いため、連続では投下せず2秒置きで投下する。この爆弾を投下したのち戦闘攻撃機部隊が生き残った敵を攻撃することになっている。

数十秒後、全弾投下したため反転して帰投ルートに着く。

「着弾まで10秒···3、2、1···」

眩い閃光と共に火球が現れ、一瞬にして市街地を焼き尽くす。家々が燃え上がり、黒煙を上げている。これが400発以上投下されたため、一瞬にして平壌は炎に包まれた。

「酷いな···」

ドンッ!ドンッ!と爆弾が炸裂する音、振動が機体にまで伝わって来る。ちょうどその時、戦闘攻撃機部隊とすれ違った。護衛機、攻撃機の大編隊だ。



同時刻  F-35A ブラボー編隊

BP-1の空爆が終了し、我々が残った部隊を駆逐する。

 

既に平壌市街は炎に包まれており、標的らしい標的は見つからない。BP-1の爆撃でほとんどの目標が破壊されたようだ。対空砲火を避けるため、黒煙を吸わないようにしつつ低空を飛行すると、街の様子がよく見えてくる。家々は燃え上がり、燃えるものがなくなった頃には崩壊してしまう。ビルも倒壊はしないものの、窓から炎を吹いて激しく燃えている。街の大通りには人々が溢れ、消火活動をしたり、避難したりしている。黒焦げの死体も無数に転がっており、まさに地獄だった。

「こちらブラボー1、市内に標的を確認できず。平壌市郊外の敵部隊への攻撃へ移行する」

残った部隊が平壌郊外の敵部隊を攻撃したが、それも僅かだった。10機ほどが爆弾を投下したら全滅してしまった。


結局、200機以上を動員したものの第5航空群を含む30機ほどが攻撃するだけで平壌爆撃は終了した。

閲覧ありがとうございます


最近更新が遅くてすみませんm(_ _)m

いろいろありまして···。今後も1日1話というのは厳しいかもしれませんが、ネタ切れというわけではないので、今後ともよろしくお願いします!

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