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人海戦術

20XX年 10月24日08:00  平壌郊外 陸自第2大隊

平壌爆撃から24時間が経過した。市内からは未だに黒煙が上がっており、市街地での火災が治まっていないようだ。

 爆撃の結果投降する者が急増し、空爆開始から現在までに40万人以上が平壌から出て来た。さすがに1個大隊では対処できないため、韓国陸軍も10万人ほど動員してこの人々を保護している。あまりの爆撃の規模に驚いたのだろう。まさか日本が戦略爆撃機を保有していて、しかも戦略爆撃を実施するとは想定していなかったはずだ。また、民間人の死傷者も尋常ではないらしく、保護した人々の情報から推測すると死者だけで6万人になるだろうとのことだった。人口密集地にサーモバリック爆弾を400発も投下したのだからそのくらいの死者は出ているだろう。


「作戦司令部から今後の予定だ。今日中に地上部隊で平壌を攻撃、政府施設を制圧する。明日から国連軍と共に中国本土攻撃を開始するため、できるだけ早く北朝鮮戦を終結させ、対中戦に部隊をまわしてほしいとのことだ。では、総員出撃用意!」

指令を受けて、各部隊でミーティングが行われてた。我々第2大隊は、陸自第10、第11普通科連隊や韓国陸軍などと共に政府施設の制圧にあたることとなった。のちに特殊作戦群とも合流するらしい。

「またあの残忍な連中と一緒に戦うのか、気が進まんな。優秀なのは確かだがな···」

第2大隊長が部下に愚痴を言う。特殊作戦群とは開城(ケソン)の戦いで一緒に戦ったが、かなりクレイジーな連中だった。敵といえど人を殺すことに何の抵抗もないようで、あの時は酷い死体がころがっていた。実戦では心強いかもそれないが···。

「まあ、今回だけですから我慢しましょうよ。我々は北朝鮮との戦争が終わったら仕事も終わり、休暇ですから。普段より給料は沢山貰えますよ。終わったら海外旅行にでも行こうかな」

「そうだな。生きていればの話だが···」



08:30  

出撃用意が完了し、皆装甲車などに乗り込みいつでも出発できる状態にした。そのころ奴らがやって来た。

「特殊作戦群第1中隊オスカーチーム、只今到着いたしました。大隊長殿、開戦初日以来ですね。今回もよろしくお願いします」

オスカーチーム隊長が敬礼をしながら言う。

「ははは···そうだな···。相棒のバレットも一緒かな?」

「はい、今日に備えて念入りに整備しました。弾もピカピカに磨いて。でも敵兵の頭ぶち抜いたら汚れてしまうんで、使うのがもったいないですね。まあ、ナイフもあるんで」

ニコニコして担いでいるM82バレットライフルを撫でながら話す。前回もこんな調子だったな···。

「前回は1発外してしまったんでね。気をつけます」

「いやいや、外しても大丈夫だぞ。外したって言っても、頭に当たらなかっただけじゃないか。ゲームじゃあるまいし···」

「いや、戦争ってのはゲームと同じですよ。リトライできないってだけで。ヘッドショット数=キル数にしたいんですよね。気楽にいきましょうや」

さすが元傭兵。戦争をゲーム感覚と考えるのか···。まあ、傭兵ってのは戦えば戦うほど報酬が増える。ゲームで言うスコアみたいなもんだろう。その感覚を特殊作戦群に入隊しても引きずっているようだ。



09:00

平壌を包囲していた部隊が一斉に市内に向けて進撃を開始する。今日中とのことなので急がなくてはいけない。平壌市内の敵部隊は発見したものはあらかた撃破したが、念のため上空に航空部隊を待機させていて、標的を発見したら即攻撃できるようにしていた。韓国軍のK2戦車、韓国海兵隊を先頭に平壌に突入する。


市街地に入った。爆撃による煙で視界は悪く、50m先以降はほとんど見えない。戦車に搭載されているセンサーで索敵してもらいながら前進する。

 爆撃の跡は酷いものだ。木製の建物は全て倒壊し、コンクリート製の建物も外壁を残して全て焼けていて、通りは黒焦げの死体でいっぱいだ。倒壊した建物で避難経路が塞がれたためだろう。路面電車が停車しており、ドアから死体が溢れ出ていた。電車から出ようとドアに殺到したが、外に出る前に酸欠で死亡したようだ。サーモバリック爆弾は周りの酸素を一気に燃焼させるため、人の吸う酸素も奪われる。それで酸欠になる。

 おぞましい光景を見ながらも韓国海兵隊、自衛隊が首都中心部を目指して前進する。すると、早速無線で連絡が入った。

「こちら第3小隊、敵の攻撃を受けている!応援を要請!」

第3小隊は我々第2大隊より後方にいる部隊だ。後方が攻撃されたということは先頭も狙われるはずだ。

「第2大隊より韓国海兵隊へ。敵の総攻撃が予想される。警戒されたし···」

しばらく沈黙したのち返事が来た。

「こちら韓国海兵隊第7大隊、既に攻撃を受けている!第2大隊は応援に来てくれ!」

「了解。第3小隊の応援は第5大隊に任せ、我々はそちらへ向かう」

既に挟み撃ちにされていた。銃声や爆発音が聞こえてきており、かなりの激戦のようだ。素早く現場へ向かう。


しばらく移動すると、炎上するK2戦車や負傷して倒れている韓国海兵隊員が見えてきた。一人の障害物に身を隠している海兵隊員がこちらに手招いていたため、かがみながらそちらへ向かう。しかし日本語を話せないようで、ジェスチャーと下手な英語で説明していた。待ち伏せ攻撃で戦車が殺られ、木陰や倒壊した建物、マンホールから敵兵が無数に涌き出て来てあっという間に殲滅されたらしい。敵兵はまだ無数にいて、全然減っていないとのことだ。確かに、見たところ海兵隊員の死体しかない。そして遠くには敵兵と思われる影が無数にあった。

「よし、応戦するぞ。擲弾用意!」

隊長の指示で隊員たちが89式小銃の銃口に擲弾を装着する。無数に敵兵がいるから、適当に撃てば当たるだろう。

「発射用意、てっ!」

擲弾が放物線を描いて発射され、しばらくして連続で爆発が起きた。閃光と共に敵兵が吹き飛ぶ。

「射撃用意、撃て!」

今度は銃弾を浴びせる。爆発で怯んでいるうちに攻撃した方が有効だ。爆発で数十人、銃撃でまた数十人と倒していく。敵も反撃してくるが、弾は全然違う方向に飛んでいる。こちらには飛んで来そうもないため遮蔽物からこっそり銃を構え、ドットサイトに銃を乱射している敵兵の頭を捕らえ、引き金を引く。敵兵は頭を反り返して倒れてた。これで早くも全滅だ。

「こいつら···、兵士か?やけに射撃が下手だが···」

隊員たちが死体を調べると、ほとんどが老人などの年配の人だった。しかも軍人のような体つきではなく、民間人であろうと思われた。

「やはり民間人か。総力戦というわけだな。しかし民間人が海兵隊を殲滅するとは···」

我々は負傷者もゼロだったが、先頭の海兵隊の被害は大きく、戦車1輌と装甲車3輌、海兵隊員29名が戦死した。敵はざっと数えたところ70名ほど死亡していた。


 隊員たちが敵兵の調査をしていたとき、数名の隊員が頭を反り返して倒れた。少し時間を置いて銃声が聞こえる。

「スナイパーだ!隠れろ!」

隊員が遮蔽物に身を隠そうとするが、たちまち爆発して体が粉々に吹き飛ぶ。遮蔽物周辺には爆弾が仕込んであったのだ。上陸作戦の際も使われた戦法だ。それでも隊長たちは何とか遮蔽物に隠れられたが、様子を見ようと顔を出すと銃弾が飛んで来る。今度は狙いも正確だ。おそらく正規軍だろう。

「くそ···、擲弾はいくつある?」

部下の隊員に尋ねる。

「4つありますね。手榴弾も4つです」

「よし···、擲弾を全弾投擲し様子を見よう」

再び隊員たちが擲弾を小銃の銃口に装着し、発射した。敵陣に命中し爆発を起こす。しかし敵の攻撃は治まらず、逆にあちらからもグレネードランチャーで攻撃された。火点がバレたようだ。

「くそ···、周辺にいる部隊はあるか?援護して貰おう」

「えっと···、おお!特殊作戦群のオスカーチームが5km後方にいます!至急援護を要請します」

「オスカーチームか···」

気は進まないが、この際だから仕方ない。




10:00  特殊作戦群第1中隊オスカーチーム

「了解、援護に向かいます···。野郎ども、大隊長殿から援護要請だ。出撃!」

後方で待機していたオスカーチームが第2大隊の援護に向かう。既に武装は完了しており、隊長は相棒のM82バレットライフルを持って軽装甲機動車に乗り込み、直ぐに出発した。


比較的近いため、直ぐに到着した。応援要請のあった場所から1kmの地点で降車、狙撃陣地を確保する。隊長はバレットライフルのバイポットを展開し、伏せ撃ちの姿勢をとった。部下が観測員として双眼鏡で標的を探る。

「凄い数だな···」

スコープを覗きながら隊長が呟く。第2大隊と韓国海兵隊が応戦しているのが見えるが、敵兵の数は圧倒的だ。いくら射殺しても後方からトラックで次々と輸送されている。驚くことに敵兵全員が銃で武装しているというわけではなく、弾倉だけ持って突撃する者もいた。その者は戦死者の銃を拾い、持っている弾倉を装填して射撃を続行していた。これは第2次世界大戦で武器の不足しているソ連軍で行われた戦法で、結果はもちろん悲惨なものになる。銃を拾えなければただの自殺だ。

「気の毒だが、死んで貰いますぜ···」

前線に移動中のトラックの燃料タンクに照準を合わせる。引火しやすくなるよう曳光弾を装填する。

「距離940m、風向きは南南西4m···」

観測員が標的や気象の情報を観測し、狙う位置を計算する。距離1kmとなると風や重力、気温などで弾道がずれる。こうして計算することである程度の弾道が分かり、弾道を修正できるのだ。

「1ミルドットで狙ってください」

「了解」

部下の観測を受けて狙う位置を修正する。再びスコープを覗くと、今の時間だけで敵にかなりの戦死者がでていた。弾倉を持って突撃しているが、足元が死体だらけで足の踏み場がなくうまく進めない。そこを日韓軍に銃撃され、折り重なるように倒れる。まさに死体の山だ。

 改めてトラックに照準を合わせる。そのトラックは荷台に兵士数十名を乗せ、前線に猛スピードで向かっていた。燃料タンクに狙いを定め、引き金を引く。曳光弾が飛んで行き、見事燃料タンクを撃ち抜いた。トラックは爆発し横転。荷台の兵士を投げ出しながら滑って行き、別のトラックと衝突。そこで再び爆発し、衝突したトラックも粉々に吹き飛ばした。

「ナイスショット!たまらんなあ!」

隊長が思わず叫ぶ。弾丸1発でトラック2輌を撃破したのだ。直後に部下の撃った弾丸もトラックに命中。道路は炎に包まれた。

「こちら第2大隊。ナイスショットだな。助かったぞ」

「朝飯前です!援護要請はいつでもどうぞ!」

大隊長からも誉められ、オスカーチーム隊長はご満悦だった。

「早速だが、敵スナイパーを始末してほしい。北西のどこかだな···」

「了解。探してみます」

スコープで索敵する。同じスナイパーであるため、狙撃陣地はある程度予想できる。

「おそらくあの建物···あっ、いたいた。あいつですね、ドラグノフ持ってる奴。少々お待ちを。脳ミソぶちまけてやります」

半壊したビルに敵スナイパーがいた。早速照準を合わせる。かなり離れているが、バレットライフルなら大丈夫。3kmまで余裕で狙うことができる。

「標的、敵スナイパー···」

通常弾を装填し、敵兵の額に狙いを定める。呼吸を整えてから引き金を引いた。1秒弱で3km先の敵兵に弾丸が見事命中。額どころか上半身が粉々になり、肉片が飛び散る。12.7mm弾が直撃するとこうなるのだ。

「ワンダウン。各員敵を確認し次第始末しろ」

隊長の指示で隊員たちは無数にいる敵兵の狙撃を開始した。次々と弾丸が命中し、敵兵をなぎ倒していく。

「おっ、部下ながらやるな。負けてたまるか···」

隊長も部下に負けまいと狙撃を再開した。

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