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国家総動員

殺戮と作戦で戦闘に勝利する。将軍が偉大なほど作戦に寄与し、偉大でないほど殺戮に寄与する。

                    ー ウィンストン·チャーチル

20XX年 10月22日18:00  平安南道(ピョンアンナムド) 平壌まで50km 南進部隊(文徳上陸部隊) 陸自第5大隊

韓国海兵隊がこっぴどく殺られたのち、代わって陸自部隊を先頭に進撃することとなった。北朝鮮軍は人海戦術+ゲリラ攻撃という戦い方だそうなので戦車の援護を受けつつ前進する。第1次世界大戦と同じだ。本来戦車とは歩兵を支援するためのもので、"戦車を撃破するため"に作られたのではない。基を辿ればこれが正しい使い方だ。戦車で障害物を踏み潰し、その後を普通科部隊が続き、薄暗い森の中を行く。

「10時方向。小屋の裏に人がいる」

先頭を行く10式戦車から報告が入る。直ぐに隊員3人が89式小銃を構えて、森の中にひっそりとたたずむ古びた小屋に向かう。ただの民間人である可能性もあるが、侵略者だと言って襲って来る可能性もあるため、銃の安全装置は外し、単射できるようにしておく。89式小銃で言うとセレクトレバーを「タ」と書いてある場所にすれば良い。「タ」が単射、「レ」が連射、「3」が3点バースト、「ア」が安全装置だ。何ともセンスのない表記だが、昔からそうなので仕方ない。

 慎重に銃を構えながら進むと、小屋の裏に年寄り二人がいた。朝鮮語の話せる隊員に話をさせる。この二人はこの周辺の住人だそうだ。

「危ないから、後方の我々の勢力下まで行ってください。トラックで移送します」隊員が朝鮮語で話す。

「ここは我々の土地だ。畑を荒らされては困る。日帝ごときに渡してたまるか!」年寄り二人が怒った声で言う。

「しかし···」

通訳の隊員が言いかけた時、後ろで銃を構えていた隊員が吹き飛び、倒れた。その隊員を見ると、額に穴が空いて血が吹き出していた。

「スナイパーだ!敵襲!」

隊員が叫ぶ。ふとさっきの老人を見ると、いつのまにか手に鉈を持ち、襲って来ていた。鉈を振り降ろそうとしていたため、素早く腕を掴んで捻り、鉈を落とさせる。その後足を引っ掛け転倒させ、拘束した。もう一人がその後ろから鎌を振り降ろそうとしていたが、駆けつけた味方が老人に発砲し射殺した。スナイパーが潜んでいるため、拘束した老人を連れて木陰に隠れる。


数分経過したが、これ以上の攻撃はなく、敵スナイパーも逃げたようだった。早くも隊員1名を殺されてしまった。民間の老人を殺したうえ一人殺られるとは···。誰もが胸くそ悪くなる。しかし犠牲者がこれ以上増える前に平壌を攻略しなくてはいけない。中央集権の国だから、首都を陥落させれば降伏させられるはずだ。再び前進を開始する。




20:00  黄海北道(ファンヘプクト) 北進部隊 平壌まで40km 陸自第2大隊

平壌まで40kmに迫った。もう少しで榴弾砲の射程に入り、平壌を直接砲撃できるようになる。今日中に特科部隊の射撃陣地を確保するのが我々の任務だ。既に暗くなりつつあり、隊員たちはナイトビジョンを装備して前進する。

「ここまで来るともう北朝鮮も終わりだな」大隊長と部下の隊員が話ながら歩く。

「そうですね。"半島統一"とか言ってるのに自国すら守れないのなら、国民も不満に思うんじゃないでしょうかね」

「あとは将軍様がどう出るか···。しかし、そもそも北朝鮮を攻略してどうするんだ?政権を潰すのが目的だが、今占領してる区域はどうなる?」

隊員が答える。

「新政府を作る手助けをすることになってるはずです。占領した場所は···どうなるんですかね。韓国に併合させようにも、韓国にはそれほどの経済力がないですからね。北朝鮮が立て直るまで日本が統治するんじゃないですか?」

「世界中から苦情が来そうだな···」

そんな話をしていると、先頭部隊から連絡が入った。

「前方に民間人らしき人影···子供ですね」

連絡を受け、大隊長たちも先頭に向かう。すると10代前半の子供が通訳担当の隊員と話していた。民間人は厄介だ。戦闘意識があるのか、全くわからない。南進部隊の情報によると、民間の老人が襲って来て、やむを得ず射殺したということがあったらしい。しかし、さすがに子供は撃てない。隊員に素早く保護するように命じる。

 ふと、子供の足を見ると、それは義足だった。何となく直感で分かった。これは爆弾だ。

「離れろ!子供から離れろ!」

隊員たちに叫ぶが、突然のことに隊員たちもあたふたしていた。

 案の定、子供は自爆。隊員十数名と、近くにあった軽装甲機動車を吹き飛ばした。大隊長たちも爆風で飛ばされる。伏せながら辺りを見回すと、草むらから無数の人影が現れ、奇声を上げながら突撃してきた。ほとんどの者は鉈や鎌などで武装し、突撃して来る。咄嗟に持っていた9mm機関拳銃を構えて、発砲する。他の隊員たちも89式小銃で射撃を開始するが、たまに飛んで来る銃弾のため、なかなか有効な反撃ができない。後方に突撃を援護する者がいて、そいつが銃撃しているのだろう。みるみる突撃部隊が迫ってくる。

 遂に前方で射撃していた隊員が突撃してきた者に襲われる。しばらくは格闘で何とか戦っていたが、数が多すぎる。隊員は腕を鉈で切り落とされ、悲鳴を上げてその場に倒れる。その後はもう地獄絵図だ。鎌やら斧やらでズタズタに切り刻まれる。

「畜生!」

我々の所にも敵が迫る。9mm機関拳銃を撃つが、装填している間に敵は目と鼻の先にいた。鉈を振り降ろそうとしていたので、バヨネットを取り出し、素早く敵の腹部を刺す。そして刺したまま、鍵を回すようにして捻る。こうすることで傷口が広がり、殺傷力を高めることができるのだ。腹から血が吹き出し、敵は悲鳴を上げて倒れる。とどめに首を斬り、絶命させる。そのころには隊員たちもある程度敵を殲滅していて、SIG226を構えて周囲を警戒していた。

「やれやれ···、危なかったな。被害はどのくらいだ?」さっきの隊員に訊く。

「16名戦死、25名負傷です。敵は60名ほど突撃してきたようで、全員射殺しました。やられましたね。民間人までこんな···。しかし、何であれが爆弾だと?」

「いや···、北朝鮮で義足ってあんまりないかな~と思って。都合良く我々に接してきた奴が義足だったから怪しいと思ったわけだ。まあ、ほぼ直感だよ」大隊長が答える。


平壌攻略を前に、我々の被害も増えつつある。今回の攻撃はあくまで民間人によるものだ。それだけで40名もの死傷者を出してしまったのだ。正規軍との戦いはさらに激しくなるだろう。まるで昔の日本と戦っているようだ。本土決戦となり、国民全員が兵士となって戦う。まさに国家総動員の体勢だ。

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