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文徳上陸作戦

老兵は死なず、ただ消えるのみ

              ー ダグラス·マッカーサー

20XX年 10月22日04:00 黄海 平安南道(ピョンアンナムド)沖 日韓艦隊

攻撃開始から30時間が経過した。日韓軍は軍事境界線から100kmの範囲にある北朝鮮の江原道(カンウォンド)黄海北道(ファンヘプクト)黄海南道(ファンヘナムド)、日本海に面している咸鏡南道(ハムギョンナムド)を占領した。つまり、北朝鮮の国土の半分を制圧したことになる。既に軍事境界線から北上した部隊は首都平壌(ピョンヤン)から南に30kmの所まで侵出している。しかし平壌の北側はまだ敵の勢力圏で、首都防衛のために平壌に物質や兵器を輸送している。平壌攻略にためにはこの北側の敵を殲滅し、平壌を完全に包囲する必要がある。

 そこで考えられた作戦が、平壌から70kmほど離れた黄海沿岸の文徳(ムンドク)に上陸するというものだ。文徳から内陸部に向かい、それからさらに南下。北上部隊と合流し平壌を包囲するという作戦だ。上陸作戦を行うとなると艦隊をその海域に送り込むことになるが、文徳沖は中国の青島(チンタオ)にも近く、中国軍による攻撃を受ける可能性がある。そのため朝鮮半島に近い中国の主要港を機雷封鎖することとなった。潜水艦がこっそり港に接近し機雷を設置。船を行き来できなくする。作戦が決定し、今は日韓艦隊が上陸地点に向かっている。


「全艦、ミサイルの一斉発射を行う。発射用意」

自衛隊、韓国軍の軍艦が上陸に先駆けて巡航ミサイルによる掃射を行う。偵察機の情報によると、文徳海岸には敵の大部隊が展開していて戦闘に備えているとのことだった。敵も我々が上陸することをある程度は予測しているようだ。それがターゲットだ。

「AGM-1発射スタンバイ」

「玄武-3発射スタンバイ」

自衛隊の超音速巡航ミサイルAGM-1と韓国軍の巡航ミサイル玄武-3の発射用意が整う。

「発射用意、5、4、3、2、1···」

「パシュッ!パシュッ!パシュッ!···」それぞれの軍艦のVLSから無数に巡航ミサイルが発射される。玄武-3は亜音速ミサイルであるため、あっという間にAGM-1に越されてしまう。しかし着弾は同時になるように、玄武-3は沿岸の近い目標、AGM-1は内陸部の目標を攻撃することになっている。

「ミサイル、目標到達まで4分」



4分後  グローバルホーク 制御センター

ターゲットの状況を見るため、無人偵察機グローバルホークを飛行させていた。操縦は日本本土から行っていて、北朝鮮の上空2万mにいるが、地上の様子がはっきりと見える。現在偵察しているのは内陸の敵陸軍基地。これからミサイルが着弾するとも知らずに兵器の整備などを行っているようだった。

「ミサイル着弾まで10秒···3、2、1···」

AGM-1が命中。大爆発を起こして敵基地の兵舎数ヶ所が吹き飛ぶ。次々とミサイルが命中し、逃げようとしていた兵士も爆風に吹き飛ばされる。一瞬にして敵基地は瓦礫と死体で埋もれた。

「ミサイル目標に全弾命中。引き続き偵察する」

黄海の味方艦隊に報告する。



05:00  文徳沿岸 F-35C編隊

「ミサイル攻撃で敵の対空砲は殲滅した。残りの地上部隊を攻撃せよ」

"いずも"から発艦したF-35Cと護衛のF-3C、60機が上陸地点である文徳沿岸を目指す。


海岸が見えてきたが、敵部隊はほとんどいなかった。ポツポツと銃座やトーチカ、障害物があるだけで、大規模な敵は確認できない。なんだか不気味だ。ここは重要拠点なはずだが···。

 不審に思いながらもF-35C部隊はその銃座やトーチカへの攻撃を開始した。爆弾を搭載していたが、爆弾を使うほどの標的ではない。25mmバルカン砲で全基破壊した。トーチカにも兵士はいないようだ。障害物除去のため爆弾を投下し、何の反撃も受けずに帰投する。



05:30  文徳沿岸 韓国海兵隊

「揚陸完了、総員下車戦闘用意」

AAV7で上陸した海兵隊員が下車戦闘に備えてK2アサルトライフルのスライドを引き、射撃用意をする。車内に乗っていたが、今のところ爆発も発砲もないようだ。日本の航空部隊が沿岸を空爆したそうだが、敵の姿はほとんどなかったそうだ。我々に気づいていないのだろうか···。

「ランプドア開け、総員突撃!」

ランプドアが開き、無数の海兵隊員が降車。内陸部に進撃する。自衛隊のLCACも着岸し部隊を降ろしている。


森に入った。K2を構えてゆっくりと前進する。かつての日本兵にように森で待ち構えているということもあるかもしれない。周囲を警戒する。

 と、その時。突然いくつかの木が爆発し、複数の隊員が死傷した。木に穴を空け、爆弾でも仕込んでいたのだろう。木の破片によって人を殺傷することができる。爆発と同時に木陰や草むら、洞穴から敵兵が無数にわき出て、発砲しながら突撃して来る。そしてRPG、迫撃砲も一斉に飛んで来て、歩兵を援護していたAAV7が撃破される。

「敵襲!応戦しろ!3時から9時の方向!」

隊員たちがパニックになりながらも素早く応戦する。完全に奇襲されてしまった。敵の大規模攻撃に隊員が次々と被弾し倒れていく。生き残った隊員たちは遮蔽物に隠れようと近くの倒木に向かう。しかしこれも罠だった。倒木付近には地雷が仕掛けてあったのだ。ここを遮蔽物にすると詠まれていたのだろう。たちまち爆発し、数名の隊員が死傷した。

「負傷者を運べ!援護射撃!」部隊長が叫ぶ。

殺られっぱなしだったが、徐々に体制を立て直し、敵兵を仕留めていく。しかしやけに敵の数が多い。そして数の割に銃撃が少ない。よく見てみると、銃で武装している者もいるが、武器を持っていない者や棍棒しか持っていない者などまで突撃してきていた。そして銃を装備している者が撃たれたら、他の者が銃を拾い、突撃してきている。昔のソ連軍の戦法と同じだ。

「くそっ、敵が多すぎる!白兵戦の用意だ!」

弾切れになった隊員が続出したため、銃に銃剣を装着。白兵戦に備えてた。

「突撃用意···、今だ!行け行け!」

敵との距離が10mほどに迫ったとき、全員に突撃命令を出す。隊員たちが掛け声を上げながら一斉に突撃を開始した。敵も弾切れのようで、ナイフや棍棒で応戦してきた。第1次世界大戦と同じような、時代錯誤の戦いだ。銃剣のほうが長いので有利だが、敵が多すぎる。1人あたり6人ほどと格闘しなくてはいけないのだ。さすがに勝機もなく、隊員たちが次々とタコ殴りされたり、首をナイフで斬られたりした。まさに地獄絵図だ。


20分ほどの戦闘により、第1波として上陸した韓国第6海兵連隊600名は、負傷者など21名を残して全滅した。ヘリなどによる航空支援があればこれほどの死者は防げたかもしれないが、ヘリ部隊は北進部隊の援護にほとんどが駆り出されていたうえ、急遽行われた上陸作戦だったため遅れてしまったのだ。誰もが、これまでの北朝鮮軍の抵抗の無さに高を括ってしまっていた。




05:50  文徳沿岸 陸上自衛隊第4大隊

「敵の数が多すぎる!至急応援を···、ああ、くそっ!·····プツッ···」

先に上陸した韓国海兵隊から応援要請があった。沿岸からたった800mほどの場所だったため、直ぐに駆けつけた。銃声はなく、慎重に前進すると、森の中で無数の兵士が倒れていた。本当に死体だらけだ。韓国兵の死体が数百、北朝鮮兵の死体はもっとある。しかも北朝鮮兵で銃を持っているのはほんの一部だ。生存者を探したが、結局負傷して後方に送られて来た者だけだった。つまり全滅したということだ。


上陸開始からたった20分で1個連隊が全滅···。敵も手強いということだ。平壌攻略が難しいということは確かだろう。

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