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与那国の狙撃兵

暴力によって得られた勝利は敗北に等しい。それはほんの一瞬しか続かない。

                     ー マハトマ·ガンジー

20XX年 10月18日22:00 ASEAN首脳会議

「南沙諸島、西沙諸島を占拠する中国軍に対する攻撃ですが、国連への軍事介入を要請したところ、許可が出ました。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ドイツなどを中心に国連軍を結成、軍事介入に協力してくれるそうです」議長の発表に各国の代表から拍手が湧く。

 ASEAN諸国は、中国による海洋進出により領土の一部を侵略されている。そこで再三国連に軍事介入を要請したのだが、そのたびに断られていたのだ。しかし今回になってようやく応じてくれた。これまでは中国とまあまあ仲の良いロシアが拒否権を発動していたのだが、さすがに他国の圧力もあり、ロシアの了解も得られたようだ。他の理事国も犠牲の大きい対中戦争介入に消極的だったが、日本が中国の主要部隊を殲滅したことを受けて、介入に踏み切った。ちなみに中国は常任理事国の座から引きずり下ろされた。

 アメリカが介入を宣言したあと、相次いでイギリスなども参戦を発表したのだった。我々と同じく日本も国連に要請しており、中国本土への国連軍派遣も想定されている。これが実現されたら、中国共産党はおしまいだろう。ASEAN、日本、国連軍が中国を攻撃することになる。



同時刻  与那国島 西部方面隊ヘリボーン部隊

そのころ、自衛隊は与那国島奪還を目指して行動していた。中国の反撃が行われる前に奪還したいということで、18日のうちに先島諸島全島を奪還する予定だ。成功すれば、日本の領土は全て回復することになる。


「アルファからブラボーへ、降着地点まであと7km。降着後、我々は空港の奪還に向かう。素早く合流地点に向かえ。送れ」「こちらブラボー、了解。幸運を」4機のV-22オスプレイと6機のUH-60がAH-64D、AH-1の援護を受けつつ与那国島を目指して飛行する。ヘリのドアを開き、交戦に備えてドアガンナーがブローニングM2を構える。

 「友軍のミサイル着弾まで5秒。3、2、1···」後方に展開している護衛艦隊から発射されたAGM-1が島に着弾し、大爆発が起こる。こちらは人員が200人程度しかいないが、ミサイルをまんべんなく浴びせて補う。今回の攻撃に使用されているAGM-1の弾頭はサーモバリック弾頭だそうだ。メカニズムはよくわからんが、人に対してはとにかく強力な爆弾だ。サーモバリック爆弾は瞬時の燃焼による爆風などで攻撃する兵器で、戦車などを撃破する能力は低いが、人に対しては強い威力を発揮する。このミサイルの規模だと、半径100mの敵兵は、衝撃波や瞬時の酸素燃焼による酸欠で全滅するだろう。与那国島に無数にいる中国兵には有効なものだ。凄まじい爆音と共に、核爆発のように小さなキノコが発生する。


22:20

「総員戦闘用意、そろそろ降着するぞ!」V-22に搭乗しているアルファチームの隊長が部下に命じる。降着を前に、ランプドア付近の隊員が地上の敵をMINIMIで掃射する。「タッタッタッタ!」我々の降着を援護しようと、AH-64が援護射撃を開始する。海自のF-35Bも飛来し、25mmバルカン砲で敵を掃射する。

 ヘリが着陸し、隊長が先陣を切って外に出る。「俺が援護する!突撃!」隊長が89式小銃で敵兵に発砲し、その隙に30名の隊員がヘリから下りて内陸に進撃する。


内陸部に進撃したが、ミサイルが着弾した周辺には黒焦げの死体、衝撃波で粉々になった死体、酸欠で死んだと思われるきれいな死体などがあるだけだった。長音速巡航ミサイルだから、攻撃に気づいて避難しようとしても間に合わなかっただろう。

 「こちらブラボー。そこの死体まみれの所にいるのはアルファチームか?」合流予定のブラボーチームから訊かれる。「ああ、そうだ。どこにいる?」と隊長が言うと、草むらかと思っていたものがうごめき、立ち上がってこちらに向かって来た。ギリースーツで擬装していたのだ。ブラボーチーム隊長が走って来て話す。「早く着いたんで、こうして待ってました。こいつと敵兵を狙撃しながら」後ろでM24を持っていた隊員がうなずく。「見事な擬装をしていたところを悪いが、空港を確保せねばならん。せっかくだからブラボーチームは山ルートから空港に接近しろ」「了解です。それでは失礼。おい、行くぞ!」ブラボーチーム隊長が部下を連れて、素早く山に入って行く。「よし、我々も空港を目指すぞ」徒歩で移動を再開する。


やけ野原となった市街地に着いた。ここの住民が戻って来たら大変なことになりそうだ。瓦礫と死体でいっぱいだ。しかし、その瓦礫に敵が隠れている可能性もあるため、警戒して進む。

 「バババババッ!」銃声が鳴り響き、隊員2名が倒れる。「敵襲!」予想通り、瓦礫に隠れて攻撃してきた。たまたま火点を発見できたため、89式小銃で掃射する。そこからの発砲は治まったので、多分仕留めたのだろう。「隊員を救出!救援部隊を呼べ!」通信士が後方の救援部隊に連絡、UH-60が来てくれることになった。敵兵はまだいるようだ。隊員が応戦するが、なかなか決着が着かない。すっ、と隠れていた障害物から顔を出すと、弾丸が飛んで来きた。あわてて隠れてる。「くそ···もったいないが、擲弾を使うか···」小銃の銃口に擲弾を装着する。擲弾はグレネードランチャーみたいなものだ。自衛隊ではM203のような発射基は装備せず、このようなライフルグレネードを使っている。「発射!」放物線を描いて敵の隠れる場所で爆発する。悲鳴が聞こえ、肉片が飛んでくる。「気持ちわりい···」今度は顔を出しても大丈夫だった。気を取り直して前進する。


22:30  与那国空港前 ブラボーチーム

「アルファチーム遅いな···」隊長がギリースーツを着て、山から空港を見下ろす。攻撃準備はできているが、アルファチームがなかなか来ない。「もうやっちゃって良いんじゃないですか?結構小規模みたいだし」部下が言う。「そうだな···あっちの隊長に訊いてみるよ」早速トランシーバーで連絡をとる。「ブラボーチーム配置完了です。もう攻撃開始できますが?」アルファチーム隊長が答える。「ああ、そうか、予定より遅れてるし、もう攻撃を開始して良いぞ。俺は遅くなるが、俺のチームの分隊が1分ほど着く。」「了解です···攻撃して良いとさ。じゃあ、遠慮なく。全チーム、攻撃用意。カウントダウン、3、2、1···」M24や64式狙撃銃で一斉に発砲する。待機している時点でスコープに敵兵の頭を捉えていたため、攻撃開始と同時に一斉に複数の敵兵の頭が吹き飛ぶ。敵も一斉に障害物に隠れる。「バ~カ、見えてるよ···」隊長がM24の引き金を引き、敵兵の額を撃ち抜く。

 「10時方向に敵戦車」「了解」部下の報告を受けて戦車に照準を合わせる。とはいえ、ライフルで戦車は撃破できないので、たまにハッチから顔を出す戦車長を狙う。まるでモグラ叩きのようだ。敵も我々を探しているようで、山の方向に目を凝らしている。しかし我々はギリースーツを着こなしているので、なかなか見つからない。我々を探そうと顔を出した敵兵を素早く撃ち抜く。「おっ···戦車長さん、顔出しちゃったね···不細工な顔だな~」ようやく出てきた車長の額に照準を合わせ、引き金を引く。血飛沫と同時に戦車長の頭が大きく反り返り、崩れるように車内に滑り落ちていく。「ワンダウン」薬莢を廃莢し、次の獲物を狙う。


22:35  

「なんだ、これは!?」アルファチーム隊長が空港前に到着すると、額に穴の空いた敵兵が無数に倒れていた。ギリースーツを着たブラボーチーム隊長と再び合流する。「そちらの分隊さんがもう空港を制圧しました。戦車も破壊してくれてね。それにしても遅いですよ」「すまんな···、しかし、たった5分でこんなに殺したのか?」「5分もあれば我々のチームにとっては楽勝ですよ」「はぁ···、まあ、良いか」


のちに増援部隊が与那国島全土を占領。与那国空港に日の丸が翻り、遂に奪還に成功した。

 自衛隊の被害は、戦死者3名、負傷者34名。中国軍は戦死者187名、負傷者212名となった。中国軍兵士の死者のうち、7割がミサイル攻撃で死亡し、2割が狙撃で死亡した。ブラボーチームが狙撃を行った時点で、残りは1割になったのだ。しかも、狙撃部隊は2割を射殺して戦死者ゼロ、小銃部隊は1割を射殺して戦死者3名と、狙撃の有効性を示す戦いとなった。

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