中国本土攻撃
我々が戦争を終結させなければ、戦争が我々を終わりにする。
ー ハーバード·ジョン·ウェルズ
20XX年 10月18日06:00 中国海軍 寧波東海艦隊司令部
「日本軍が停戦協定を破棄し、先ほど先島諸島の我が軍が奇襲を受けました。敵の兵力が圧倒的で、残存部隊も降伏。占領されたようです···」再び、冷や汗をかきながら参謀長が国家主席に戦況を説明する。「奪還のため、急いで艦隊を集結させています。練習空母として運用している"遼寧"も参戦する予定です。現場海域には潜水艦部隊もいるので、奪還は容易いかと···。今回のは奇襲攻撃でしたが、その割にこの被害というのは少ない方かと思い···」「もういい、お前はしゃべるな」またも言い訳しようとする参謀長を主席が黙らせる。
寧波では3か月前、テロリストによって乗っ取られた核ミサイルが撃ち込まれ、多数の死傷者と共に艦隊も壊滅的な被害を受けた。その攻撃と日本との交戦で実戦用の空母2隻が沈没。これにより実戦用空母はゼロとなったのだ。建造中のものもあるが、国内の治安が悪く、ストライキも発生していて時間がかかっている。
こんな状況で集結させた艦隊は、空母"遼寧"、駆逐艦9隻、フリゲート11隻、輸送艦などの後方支援艦が7隻、潜水艦10隻となった。潜水艦の損失は未だにないため、日本軍に対する攻撃の中心となるだろう。この艦隊を召集していて、出撃できるようになるのは10時間後だそうだ。
作戦内容が決定した。おおざっぱに言うと、出撃の用意ができ次第先島諸島を攻撃、奪還し、沖縄攻略も目指すことになった。日本が核武装を宣言したこともあり、嘘かどうかは別にして日本本土攻撃はとりあえず避ける方針だ。
07:00 先島諸島上空 グローバルホーク偵察部隊
「寧波にて敵艦隊に動きがあります。空母に艦載機や武器、弾薬を積み込んでいるもよう···」高度2万mを飛行する無人偵察機"グローバルホーク"が中国海軍の動きを捉えていた。最近になって自衛隊でもようやく本格的な無人偵察機を導入した。そのグローバルホークは制空権を確保した直後から、こうして偵察行動を行っていたのだ。早速防衛省に報告する。
07:10 先島諸島沖 護衛艦隊
「本部からの情報。中国の寧波にて敵艦隊に動きあり。先島諸島侵攻の恐れがあるため、敵基地への攻撃を許可する、とのこと」敵基地への攻撃許可···、つまり中国本土へのミサイル攻撃が許可されたのだ。専守防衛に反するとしてきた敵基地への攻撃だが、今回の戦争でそれは間違いだったと判明した。まあ、戦争になる前からそんなことわかりきっていたが。
「了解。敵基地への攻撃を行う」艦隊も敵基地への攻撃を決定。日中戦争以来の本土攻撃が行われることとなった。新しく就任した首相は中国に対して徹底交戦の構えを見せている。大した討論もなく、スムーズに攻撃許可が下されたようだ。我々にとっては有難いことだ。
07:20
「こちらイージス艦"ちょうかい"、AGM-1発射準備完了」護衛艦6隻にそれぞれ8発ずつ、計48発の新型ミサイルAGM-1が搭載されていて、発射準備が完了する。ハープーンの代わりにAGM-1発射基を搭載している。
AGM-1は先の戦闘で大活躍したASM-3の派生型である巡航ミサイルだ。ASM-3を大型化させ、誘導装置なども改造し、射程2000km、速度マッハ3の超音速巡航ミサイルを作った。しかし、まだ研究が足りない段階で急遽作ったものなので、実際の性能は不明だ。初めて作ったというのに、いきなり超音速巡航ミサイルであるため少々不安だ。超音速巡航ミサイルは他の国でも開発されているが、だいぶ難航しているのだ。
「全艦一斉射撃まで、5、4、3、2、1···発射!」6隻の護衛艦からミサイルが中国に向けて発射された。速度が速いため、直ぐに見えなくなる。24発が寧波、14発が青島、残り10発が湛港の南海艦隊司令部に発射された。「寧波への到達まで15分」隊員皆が、無事に着弾することを祈る。
07:35 中国 寧波東海艦隊司令部
出撃に備えて艦隊が急いで集まって来ている。空母には艦載機や燃料、物質などが積み込まれ、揚陸艦には戦車や装甲車、陸戦隊が搭乗する。
「今でどれくらい集まった?」司令部を訪れている主席が参謀長に訊く。「ああ、はい。予想よりも早く集まっていますね。空母はそろそろ出撃準備が完了します。あとは陸戦隊ですね」「敵のゲリラとかが攻撃してこないだろうな?こんなとこを攻撃されたらひとたまりもないぞ?」「大丈夫です。基地周辺は陸軍兵2000人と複数の武装警察が警備しています。虫一匹入れま···」参謀長が言おうとしたとき、何かが戦車を満載した輸送船に突入し、大爆発を起こした。「何事だ!?」主席があわてて参謀長に訊くが、その参謀長も目を丸くして炎上する輸送船を眺めていた。
「ドンッ!ドンッ!」次々と爆発が起こり、基地の施設や停泊する艦船を破壊していく。一瞬だったが、何かミサイルのようなものが飛来しているようだった。「何が"虫一匹入れません"だ!ミサイルが入って来てんだろ!」「いや···"虫一匹入れま"と言っただけで、"虫一匹入れません"とは言ってない···」「あ~!バカかお前は!こんな時にふざけんな!」予想以上にバカな参謀長にぶちギレる。「主席、避難します」急いで護衛官が主席を司令部のシェルターに避難させる。
同時刻 駆逐艦"旅大"
「敵襲!敵襲!戦闘用意!」艦内の警報が鳴り響き、乗員たちが戦闘配置に付く。しかし中国本土でミサイル攻撃を受けるとは全く予想外で、突然の出来事に乗員もパニックになる。
隣の埠頭に停泊している揚陸艦"玉昭"にミサイルが命中、無数の乗員や搭乗している陸戦隊が吹き飛ぶ。「空母を最優先で守れ!輸送船は二の次だ!」空母"遼寧"にミサイルが接近していたため、僚艦と協力した25mm機関砲で迎撃する。"旅大"級駆逐艦は旧式で、ミサイルさえまともに装備していない。この機関砲も手動で動かすものだ。しかし僚艦との十字砲火で運良くミサイルの撃墜に成功した。
「8時方向!ミサイル接近!」観測員が報告するが、遅かった。自艦付近にミサイルが命中し、爆発が起こり、火災が発生する。直ぐには沈まなかったが、のちに燃料タンクに火が引火、大爆発を起こして沈没した。
この各基地へのミサイル攻撃で、駆逐艦3隻沈没、11隻が損傷。輸送艦6隻が沈没し、搭乗していた戦車20輌、装甲車などの車両60輌が一緒に沈み、乗員、陸戦隊員など2000人ほどが死傷した。中国も予想外の攻撃で大損害を受け、戦況は大きく劣勢に傾いた。
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