先島奪還
1人の死は悲劇だが、100万人の死は統計上の数字にすぎない。
ー ヨシフ·スターリン
20XX年 10月18日03:00 宮古島沖 護衛艦隊"いずも"
「カタパルト射出用意よし」「発艦用意、発艦用意、アフターバーナー点火。ジェット遮蔽板上げ···発艦用意よし」「1番カタパルト射出します。3、2、1···」カタパルトが射出され、勢い良くF-3戦闘機が発艦する。空母として改造された"いずも"にはF-3が25機、F-35Cが20機搭載されている。F-3は最新鋭のステルス戦闘機で、コンパクト、かつ高い機動性性能を持つ戦闘機だ。今回の作戦で、アメリカから購入したF-35と一緒に初陣を飾ることになる。
他にも"ひゅうが"にF-35BとAH-64Dが10機。揚陸艦"おおすみ"にはAH-64Dが5機とエアクッション揚陸艇"LCAC"が2隻、AAV-7水陸両用装甲車を10輌、その他上陸部隊を搭載している。F-35による空爆ののち、LCACや現役復帰した輸送船"ゆら"、輸送艇"1号"などが上陸を行う。戦闘開始から3か月、ようやく先島諸島奪還が行われる。
既に第一次攻撃隊のF-3、F-35合計30機が先島諸島の敵部隊空爆のため発艦して行った。
03:15 F-3戦闘機 アルファ編隊
「AWACSイーグルより第一次攻撃隊全機へ、敵航空機が先島諸島上空を旋回している。数は50機ほどだ。アルファ編隊は制空権の確保に向かえ」「ラジャー。アルファ1から4は攻撃隊を護衛、残りは制空権の確保に向かう」SBUの攻撃で、敵航空部隊も我々の攻撃を警戒しているようだ。かなりの数が先島諸島上空にいる。アルファ1から4にF-35の護衛を任せ、残りの10機は敵機を狩りに向かう。
暗闇の中をしばらく飛行すると、レーダーが敵編隊を捉えた。こちらのレーダーは敵機を捉えているが、敵機はこちらを捉えていないはずだ。F-3はレーダー、ステルス技術共に最新鋭で、レーダーの探知距離が長くアウトレジ攻撃が可能だ。
「全機一斉にミサイルを発射後、敵編隊に接近して戦闘を続行する」編隊長が指示する。HMDに敵機をかざすと電子音が鳴り、敵機をロックオンする。「目標捕捉···、レッツダンス!一斉射撃だ」兵倉が開き、AAM4が4発、一斉に発射される。他の機も隊長に続きミサイルを発射し、計40発が敵編隊に飛んで行く。
命中まであと数秒というところでようやく敵機が我々の攻撃に気づくが、遅すぎた。敵機38機が撃墜され、暗闇の向こうでポツポツと爆発が見える。「なんだかワンパターンでつまらんな···。まあいい、全機突撃!次はAAM5で攻撃する!」今のところ、AAM4を発射するとほとんど全弾命中となる。激しい戦闘に備えて訓練をしてきた隊長にとっては何か物足りない。
「敵機視認、随分減ったな···」敵機の排気ノズルから出る炎が見えてくる。訓練の成果を活かせることを期待していた隊長だったが、敵機の少なさにがっかりする。しかし任務は任務だ。最後まで務めねば。気をとりなおし、再びHMDで敵機を捉える。「敵機ロックオン、シュート!」AAM5が発射され、フレアを射出しながら回避運動をとる敵機に真っ直ぐ命中する。隊長が敵機を1機撃墜したころには、僚機が残りを殲滅していた。損失ゼロで敵機51機を撃墜したのだった。「よし、引き続き周囲を警戒。攻撃隊の援護を行う」あまりの圧勝っぷりに、敵は罠を仕掛けているのではないか?と思ったほどだ。しかし敵に罠などなかった。純粋に我々が圧勝したのだ···。ふと、かつての零戦パイロットもこんな気持ちだったのではないか、と隊長は思った。
03:30 F-35攻撃隊
「目標捕捉、これより攻撃を開始する」敵地上部隊がサーチライトで我々を探しているようだった。F-35もステルスなので、レーダーに映りにくい。音はするのにレーダーには映らないという状況だろう。必死にサーチライトを振り回している。
「空港で敵航空機が離陸しようとしている。飛べなくしてやれ」「ラジャー、空港周囲の敵も爆撃する」F-35はJDAM4発を搭載している。GPS誘導爆弾で、命中率は高い。早速離陸しようとハンガーからJ-16戦闘機が出て来て、それを援護しようと敵の対空砲火が始まる。しかし、我々の姿はレーダーで捕捉できないうえ、この暗闇なのでなかなか命中しない。たちまち僚機の機銃掃射で沈黙する。「目標ロック、投下!」地上の航空機にJDAMが投下される。かなり誤差があったが、GPSで誘導してくれて戦闘機のど真ん中に命中する。「目標の撃破を確認、次の攻撃へ移行」
次の目標は空港周囲に展開する榴弾砲部隊。上陸部隊にとっては脅威となるだろう。きれいに一列に並んでいるため、バルカン砲で片付けることにした。F-35の搭載する25mmバルカン砲は、自衛隊が保有する戦闘機で最も高威力だ。地上支援にも持ってこいだ。「目標捕捉···発射!」ブゥーンッ!という独特な銃声と共に一気に数百発の弾丸が発射される。バルカン砲は1秒に100発ほど発射できるため、発射ボタンをカチッと押すだけでも凄まじい威力がある。弾丸が命中し、砲と敵兵を吹き飛ばす。25mm弾が人に命中すると酷い有り様だ。一瞬で、本当にミンチになる。1掃射だけで榴弾砲5基を破壊する。
僚機、続いて第二次攻撃隊も各敵部隊を爆撃し、3島は炎に包まれる。そして、遂に上陸部隊が上陸を開始する。
03:50 宮古島沖 上陸部隊 AH-64D
揚陸艦"おおすみ"、"くにさき"、"しもきた"から発進したLCAC6隻が、宮古島、石垣島、西表島にそれぞれ上陸を行う。ほかにも"ゆら"型輸送船や"1号"型輸送艇、ゴムボートなどが島を目指す。上空には、我々援護チームのAH-64DやF-35B、ヘリボーン部隊のV-22オスプレイなどが飛行している。
海岸に近づくと、ぼんやりと炎が見えてくる。我々が来る前からSBUが海岸防衛線を攻撃していたのだ。それにより敵は我々を攻撃する余裕がないらしく、弾もあまり飛んで来ない。
「敵部隊確認、攻撃を開始せよ」攻撃ヘリ部隊がナイトビジョンで敵を確認し、SBUを誤射しないよう、ハイドラ70mmロケット弾を連射する。ロケット弾が着弾し、パラパラと閃光が走る。この一撃だけで敵対空砲部隊は沈黙した。味方が奮戦してくれていたようだ。「SBUより、敵内陸部より敵戦車。援護されたし···」「了解」SBUから支援要請があった。高度を上げ内陸部を覗くと、99式戦車が5輌ほど海岸に向かっていた。「ヘルファイヤ発射用意」HUDに敵戦車を捉え、ロックオンする。「発射!」僚機からもミサイルが発射され、敵戦車に向かう。撃ちっぱなしが可能なので、直ぐに退避できる。数秒後、ミサイルが命中し敵戦車の砲塔が吹き飛ぶ。「目標に命中」引き続き上陸部隊を援護する。
04:00 LCAC上陸部隊
「そろそろ上陸するぞ。戦車の援護を受けつつ内陸部に進撃する」海岸まであと数十m、激戦が続いているようで、たまにこちらにも弾丸が飛んで来る。搭載されている10式戦車もエンジンを始動させ、上陸に備えている。「揚陸まで5、4、3、2、1···」LCACのランプドアが開かれ、戦車、隊員が一気に突撃を開始する。敵もドアが開くのを待っていたらしく、開いた瞬間集中砲火を浴びせる。これにより数名の隊員が被弾、殺られてしまった。「戦車の後ろにまわれ!隠れろ!」部隊長の指示で10式戦車の後ろに身を隠す。10式戦車が、さっき攻撃してきた敵兵にブローニングM2重機関銃を浴びせる。
「10時方向、丘の上!」味方が叫び、直ぐに89式小銃を構え、発砲する。ドットサイトを着けているので早撃ちしやすい。命中し、敵兵が丘から転げ落ちる。そのころ海岸にもう1隻のLCACが上陸、戦車や装甲車を揚陸させた。その時、ヒューンという音がして、近くで次々と爆発が起こる。「迫撃砲だ!伏せろ!」一斉に隊員たちが伏せる。迫撃砲弾が着弾し、複数の隊員が吹き飛んだ。「こちら上陸部隊、迫撃砲の攻撃を受けている!片付けてくれ!」ヘリ部隊に支援を要請する。
同時刻 航空支援部隊 AH-64D
「迫撃砲!?まだ生きてやがったか···」支援要請を受け、敵を探す。迫撃砲は厄介だ。持ち運びできるから、どこからでも撃てる。今回のように殲滅したかと思っていても生き残っているわけだ。「こちらOH-6、港付近から迫撃砲のものと思われる閃光が見える」島を偵察していたOH-6が発見してくれたようだ。「了解、急行する」
現場に到着した。報告通り、迫撃砲部隊が無数に展開していた。「あの野郎どもめ、皆殺しだ···」30mmチェーンガンで敵を捉え、発砲する。「タッタッタッタ!」大型な弾なので連射速度は遅いが、威力は抜群だ。迫撃砲を破壊し、逃げようとする敵兵にも発砲する。ナイトビジョンでははっきりとは見えないが、敵兵に命中し、何やらいろいろなものが飛び散っていた。おそらく肉片だろう。30mmもの弾丸となると、小さな爆弾みたいなものだ。人なんて粉々にしてしまう。あっという間に数十名を射殺した。「こちら支援部隊、迫撃砲を排除した。引き続き援護する」任務は達成したが、何だか人を殺したという感覚がない。現代戦争では、直接敵を視認しなくてもディスプレイを見れば攻撃できる。なのでTVゲームの感覚だ。人を殺したという実感の沸かない自分に恐怖をおぼえる。
04:10 宮古島内陸 西部方面普通科部隊
軽装甲機動車の援護を受けつつ、89式小銃を構えながら空港を目指す。空港付近には先島諸島での敵司令塔が置かれている。上空にはAH-1、AH-64、F-35Bが飛び回り、空港周囲を攻撃している。
空港に近づくと、黒焦げの装甲車や死体が無数に転がっていて、異臭を放っている。敵にもはや勝機はない。空港の出入口に到着すると、敵兵がこちらに白旗を振って、何か叫んでいる。「$^*§@¡!##<!」「···何って言ってる?」「降伏するから撃つな···みたいなことですね」空港の出入口が開き、ぞろぞろと敵兵が出てくる。あっという間に数百人が頭の後ろで手を組んで空港前に集まる。
内陸部に進撃した自衛隊は全く抵抗を受けず、多数の捕虜を獲得したのだった。
05:00
陸、海、空が連携して上陸作戦を行ったところ、2時間ほどで宮古島、石垣島、西表島の奪還に成功した。
奇襲のうえSBUの協力もあり、ヘリ4機、隊員31名を失うも、被害は最小限で済んだ。被害のわりに戦果は大きい。敵航空機50機撃墜、戦車や装甲車など100輌近くを撃破したのだ。捕虜も、戦死した500名を除いて3000人ほど捕らえた。
中国は、本土のわずかな艦隊をかき集め反撃を試みるだろうが、対策は練ってある。
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