先島諸島包囲戦
20XX年 7月8日05:00 宮古島から北東に100kmの海域 護衛艦隊
空自部隊が大戦果をあげた。戦闘機20機の損失だけで、空母1隻を撃沈、1隻を撃破し、他の艦艇十数隻も撃沈、撃破した。敵航空機も100機ほど無力化できた。
敵艦隊は排除できたが、宮古島にはまだ10万人もの敵兵や多数の航空部隊が展開している。そのまま攻略するのでは我々の犠牲も大きいだろうから、島を包囲したうえで、艦砲射撃や空爆などを行うこととした。捕虜となった宮古島防衛隊員には悪いが、奪還はまだ行わない。
また、攻撃自体に問題がある。艦砲射撃をしようにも、護衛艦の装置する艦砲の射程が短いのだ。"あたご"などの装備する5インチ砲は射程100km以上の特殊な砲弾を撃てるのだが、自衛隊ではその砲弾を運用していない。普通の砲弾では射程が30km程度のため、海岸にかなり接近しなくてはいけない。
空爆も、敵対空ミサイル部隊が展開している中で行われることになる。米軍などでは巡航ミサイルで対空ミサイルなどを無力化した後に爆撃部隊を送るのだが、自衛隊ではそれはできない。だから巡航ミサイルを導入するべきだと言っていたのに···。最初の攻撃ではかなりの犠牲が出るだろう。
問題はいろいろあるが、航空部隊は宮古島攻撃のため出撃した。JDAMを搭載したF-2が20機と護衛のF-15が40機、P-3Cに爆弾を搭載した臨時の爆撃機が8機だ。できるだけ島に接近しなくても済むよう、高高度からの爆撃となる。高高度から投下すれば、爆弾の滑降距離が長くなるぶん島に近づかなくて済む。無誘導爆弾なら命中率は悪いが、JDAMならある程度は大丈夫だ。
「ハンター01、02は敵空軍基地を爆撃せよ。座標は···」司令部から目標が指示される。"敵空軍基地"とは言うが、元々は宮古空港だ。日本のものを爆撃するのだから、いい気もちではない。
高度1万mを飛行、朝日を背にして攻撃を行う。敵から見れば、我々の背景に太陽があるのだから、多少は目眩ましになるだろう。宮古島がうっすらと見えてきた。HUDに目標を合わせると、電子音が鳴る。ロックオンしたということだ。「ハンター01、目標をロック、攻撃を開始する」2機のF-2から8発のJDAMが投下される。その後、僚機もJDAMや無誘導爆弾を投下、P-3Cもバラバラと爆弾を投下する。もろに爆撃機だ。
ほぼ同時に、レーダー警報が鳴る。敵対空ミサイルにロックオンされたようだ。「回避!回避!」フレアを射出し、回避機動をとる。しかし大型機であるP-3Cはそんな機動をとれるわけもない。ミサイルが命中し、煙を吐きながら墜落して行く。乗員の脱出はなかった。
やはり敵のミサイルの性能も向上している。なかなか撒くことができない。たちまちP-3Cが8機、F-15が4機、F-2が6機撃墜される。P-3Cは全滅だ。その後US-2などが脱出したパイロットの救助に向かったが、生存者は106名中23名だった。生存者の話によると、脱出して海上に浮いていると中国軍のボートが来て、その者たちを射殺してまわったらしい。我々も中国軍の恨みを買ってしまったようだ。巡航ミサイルがあればこんなことにはならなかったのだが···。攻撃終了後直ぐに撤収したが、被害は大きかった。
07:00 宮古島沖 護衛艦隊
「射撃よーい、てっ!」護衛艦隊から次々と砲弾が発射される。航空部隊の爆撃により、空港の敵はほぼ壊滅、敵陸上部隊にも相当な被害を与えた。あとは護衛艦隊が島に接近し、艦砲射撃を行う。徹底的に砲撃をしたのち、上陸部隊を送り島を奪還する。既に宮古島、石垣島、西表島の3島は友軍に包囲されている。もう勝負は着いただろう。
同時刻 宮古島沖の海中 中国人民解放軍特殊部隊"飛龍"
「いたぞ···標的だ」小型の潜航艇で"飛龍"部隊は敵艦隊にむけて移動していた。危険な任務なため、部隊と言っても2人だけだが。この2名の部隊がほかにも5チームあって、同じ任務に就いている。任務はここにある高性能爆薬を敵艦の船底に仕掛け、爆破すること。ありがたいことに敵艦隊は沿岸にかなり近づいてくれた。「ドーン、ドーン!」と、海中にまで艦砲射撃の衝撃が伝わってくる。爆薬が誤作動で起爆してしまいそうだ。起爆方法は時限式となっているので、セットしたら直ぐに退避しなくてはいけない。
しばらく移動すると、標的が目の前に迫っていた。巨体が目の前を動いているのを見ると、本能的に恐怖をおぼえる。「爆薬をセットしろ」部下に起爆時間を設定し、爆薬をセットさせた。「1分だと!?間に合わないだろ。ふざけてんのか?」「いえいえ、競争しましょうよ。これで逃げられないんじゃ特殊部隊失格ですよ」部下がおもしろがって爆薬を船底にセットした。こんなときでも平常心で居られるのが我々特殊部隊だ。それにしてもこいつは遊びすぎだが。「···分かったよ···それじゃあ、行くぞ」時限信管を作動させ、急いで撤収した。
07:10 護衛艦隊 護衛艦"はなづき"
艦砲射撃が続いている。攻撃目標はほとんど撃破し、宮古島は煙に覆われている。「そろそろ上陸部隊を···」と指示しかけたとき、大きな水柱が上がり、船体が揺れた。「何事だ!」「わ···分かりません。攻撃を受けたようです···」突然の攻撃に艦内があわただしくなる。「機関室で火災!水も入って来ています!」かなりのダメージなようだ。窓から外を見ると、他の艦艇も数隻炎上していた。レーダーにもソナーにも何も映っていなかったのに···。きっと敵特殊部隊の攻撃だ。またもや、してやられた。
07:30
懸命なダメージコントロールにより"はなづき"は沈没を免れるも、かなりの損傷を受けた。しばらくは戦線復帰できないだろう。他の艦艇では護衛艦"まきなみ"が沈没、3隻が大破、乗員92名が死亡した。
政府が巡航ミサイルなどの長距離攻撃兵器を「敵国を刺激する」と言っていつまでも導入しなかったことが、今回の大損害の原因であろう。結局それで血を流すのは我々自衛官だ。多数の自衛官や遺族に政府への不満がつのる。
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