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うたうたいたいがうたうたいほどうたうまくないからうたうたわない
君の声が聞こえなくなって幾星霜過ぎ、
「明日こそは」
なんて呟いてみても、返事なんて聞こえなくて泣きたくなる。
きっと何か言っているはずなんだけど、
「聞こえないだけだ」
とか叫んでみたりして、同じように叫んでいるだろう君の声が、聞こえなくて途方に暮れてみたりする。
「君の歌をもう一度聞かせてよ」
過去に何度も声に出した言葉を口に乗せて君に贈る。もう届かないことは百も承知で。
底が見えない深い穴の淵に立った。爪先が間違えば落ちて逝くだろう。闇に向かって嘘を吐いてみる。
「君の声なんか本当はどうでもいいんだ」
泣きそうな君の声が聞こえた気がする。そうだったらどんなに良いか想像してみた。本当は聞こえてなんかいないから。君の声なんか忘れてしまった。
「なんだか片想いのようだね」
思いついてみると少しだけ笑えた。本当に久しぶりに笑った気がする。たぶん、君の声が聞こえなくなって初めて笑えた。
「あはは」
今度はわざとらしく声を上げて笑ってみる。なんだか狂った人みたいだ。
「あははははは」
もう少し長い間笑ってみたけど、いつもつられて笑ってた君の笑う声はどこにもないんだ。
「明日こそは、なんて来ないこと、わかってた」
そうしてまた笑って、爪先の踏みしめる場所を無くしてみる。体はもう闇の中。
「君の歌声、もう一度聞きたかったな」




