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傲慢悪役令嬢VS極悪魅了聖女  作者: 星キノ
魅了聖女の章
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25/53

C-G-5 予定調和

「聖女殿」


 卒業記念式典の当日。

 全校生徒で講堂の飾り付けをしている時に、彼は現れた。


「ヴィシャル様! どうしたんですかぁ?」


 私は魅了しておいた取り巻きに飾り付けを任せ、自分は魅了できていない人間たちに見つからないように奥の方で手を動かしているフリをしていた所で、駒から先触れが出ていたので彼が接近してくること自体は知っていたけど、さも今気付いたと言わんばかりの態度で彼と向き合った。


「実は君に相談したいことがあってな。その……出来れば2人きりで話したい」


 おっとこれはもしやアレかな。

 遂にアタシが婚約者になる流れかな。


 アタシが目配せしたりするとそれだけでバレてしまう可能性を考慮し、アタシは無言で頷いて彼の手をとり講堂の舞台袖へと彼を誘導した。

 いつも剣の素振りとかをしているからかヴィシャル様の掌は硬くゴツゴツした男らしい手だけど、手の甲側は女かと思うぐらい柔らかく、スキンケアが行き届いているのが見て取れる。


「ここなら多分大丈夫……それで、どうしたんですか?」

「ああ……実はサマラの事なんだが」


 来たか。


「君も噂ぐらいは流石に耳にしていると思うが、先日彼女の父君が失踪してしまったと言う話なんだが……」


 んん〜?

 あれ? アタシと結婚するって話ではない……?


「え、うん。まあ、噂ぐらいは……」


 確かにその話は何日か前になんかデボラから聞いたけど、流石にこれはパチ(嘘っぱち)扱いてるでしょーってアタシがスルーした奴だ。

 曰く、『バガリー家の当主に隠し子が発覚すると同時に当主が失踪し、サマラが憔悴している』と言う話だった。


 隠し子はまあ居ても不思議ではない。どうせ貴族なんてそんなもんだし。ってか、アタシが何なら隠し子みたいなポジ(ポジション)だし。

 でもそれでサマラが憔悴って、それは流石に順番違くね? 今年入ってからなんかずっと憔悴してるじゃんアイツ。


「その噂なんだが……実際には隠し子が2人いることが発覚して、それと同時に母君が怒り心頭で実家に帰られ父君が失踪したと言うのが真相で……」

「は?」



 いや事実かよ。

 っていうか事実が噂超えてきてんだけど。ヤバすぎでしょバガリー家。


「それで……サマラには兄弟が居ないことを知っているか?」

「まあ、話には聞いてますけど……」

「当主が失踪し当主代行となる奥方も不在、血縁者も特にはおらずサマラも他に兄弟が居ないとなると、自動的にサマラがバガリー家当主となることになったんだ」

「へっ!? 当主!?」


 寝耳に水。

 というかこれ、読めたわ。

 そうするとヴィシャル様はもうサマラと婚約出来ないって話に繋がってく感じか。


「ああ。それで話し合いの結果、婚約を穏便に解消することとなった」


 キターーーー!

 読み通り!! キマシタワーー!!

 人生イージーモード過ぎ。


 内心ガッツポーズをキメつつも、あくまでもアタシは平静を装って彼にその話の先を促す。


「そうなんだ……大変でしたね……」

「それで、その……今の私には、そうなると婚約者が居ないということになる。そこで聖女殿、もし良ければだが、私と──」



 ──私と、結婚してくれないか。



 うっひょーー! その言葉を待ってたぜぇ! などとは口が裂けても言えないので、代わりにアタシは嬉しそう……とはあえて真反対に、さも不安そうに目を伏せ、そっぽを向くことにした。


「気持ちは、嬉しいのですが……」


 ほぉら食いつく。

 所詮女と駆け引きしたことのない童貞野郎だわ。


「私ではダメか?」

「ち、違うんです! その……アタシって、たかが男爵家の、庶子ですし……」


 別にアタシは天下の聖女様々なんでこんなの別にコンプでもなんでもないんだけど、あえてそれをさも気にしているように振る舞えば案の定、ヴィシャル様はアタシに優しく声をかけてくれる。


「そんなことはどうでもいい。実はずっと……サマラがこんなことになる前から……君に惹かれていたんだ……」


 魅了してないというか、魅了避けの護符のせいでずっと掛けられないでいるのにこれである。

 アタシの人生チョロすぎでは。


「……アタシで、本当にいいんですか?」

「もちろんだ。私は君が欲しい。どうか私の伴侶として、共にこの国を支えてくれないか」



 そう言って、彼は片膝をついてくれた。

 アタシの前で、この国の2番目が3番目ぐらいに偉い人が、アタシにひれ伏しているようなもんだ。

 遂に来たわけだ。アタシの時代が。


「……私で、よければ……」


 わざとちょっとだけ間を置いてから、アタシは小さく頷き、目に力を込める。目というか、涙腺というか。

 そうすればあら不思議、アタシの目頭から宝石のような涙が流れ出るというわけだ。これもアタシの日頃の鍛錬(演技)によるもの。



「──喜んで」



 その一言で、ヴィシャル様の顔はぱっと明るくなった。マジで嬉しそうじゃん。

 そこまで喜ばれると、こっちまで嬉しくなってくるじゃん。まあ実際嬉しいんだけどね。何もかもが上手くいったからね。


「ありがとう、聖女殿──いや、ベティ……」

「こちらこそ……ありがとうございます、ヴィシャル様」


 手を握られる。

 さっきまでのゴツゴツした掌が、今度はやけに熱く感じられた。


 いやあ、長かった。長かったよ本当に。予定調和的なものもあるけど、とりま何とかなってくれて一安心だ。とりあえずこれでようやく、ヴィシャル様はアタシのものになった。これでアタシは王太子妃……いや、未来の王妃か。最高じゃん。王妃かつ聖女とか最強過ぎる。


 今のところは何もかも完璧だ。


「発表は、いつにする?」

「そんなの、この後の卒業記念式典の時に決まってるじゃないか」

「素敵!」


 何もかも予定通りだ。ここまでは完全に計画通り。


 あとは一つだけ懸念事項があるわけなんだけれども、さてそこはどうなることやら……

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