第68話 国や指導者主導ではなく、寺子屋は庶民の思いで作るもの……これは譲れないこと。
「はい、ちょうどジュリエットがことりたちに、こちらの言葉を教えてくださるのであれば、同じ場所で、寺子屋をやれるのではという提案です。」
「翻訳魔法で、言葉がわかるから、私たちも教えることができる。」
「日本でいい感じの本を買ってきくれば、翻訳魔法で、みんなの教科書にもなるね。」
「僕たち、先生になるの?」
「春樹先生」
「あゆみ先生」
「はいはい、頑張ってね。」
「「「「あさ先生は、怖そう。」」」」
「しごくわよ!」(怒)
「あさたちは、すぐ脱線するのが悪い癖ね。でも感覚的にわかりやすいわ。」
「いえいえ、ジュリエット、今のこのやりとりが、寺子屋なんですよ。」
「「「えっ?」」」 ×全員
「春樹、あゆみも、今いろんなこと学んだだろ?」
「日本の寺子屋の歴史、和算、幕末の欧米列強の悪巧み。」
「軍国教育ってのもあったよ」
「それは、私が一番知っとるよ」
「そうね、大婆ちゃんは軍国教育の時代の小学生よね。」
「米帝に負けた瞬間、大人、先生は嘘ついてたんやなと知った。
……最近は米帝と日本の自由主義もまやかしだと感じとるなぁ。リベラルの野党も嘘つきやなぁ。あの人ら、自分の超高額な給料は問題にしないやろ。年収二千万で、ボーナスが六百万円やて……。一般人の年収超えとるで。
……どうすればいいのかは、このあと生きるあゆみたちの課題やね。」
「「「「他にも毎月百万円以上の文書交通費だって……」」」」
「あら、康太たちも詳しいのね。」(笑)
「ジュリエット姉さまが、共通語の読み書きを教えて、それを私たちも一緒に習って、私たちは算数や数学、そのほかにも役立つことを知ってる範囲で伝えたらいいのかな?」
「大婆ちゃんの生の歴史もちゃんと聞きたいね。」
「話しとかんといつポックリいくか、わからへんでぇ。」
「おばあちゃん、怖いこと言わんといて」
「お婆さまも先生になれるわね。寺子屋って、こういう教育なのね。頭に残るわね。」
「細かなことはみんなで相談じゃのぉ。」
「新しいこの街の学び場として、作るのは良いじゃろうの。しかし、職業は子供たちの自由じゃ。そこからコンビニとギルドを選んでくれるかどうかは、別の話じゃの。」
「親が冒険者で、このコンビニに一緒に来てる子達なら、いつの間にか就職してる子もいるかもしれないわよ。」
「どんな仕事を選ぶにしても、役に立つことです。やらぬ選択肢はないのでは?」
「冒険者にも必要じゃの」
「秋山先生の剣術も、学びの一つに入れてもらいたいです。」
「康太、それは良いが、ついてこられるでござるか?」
「頑張りますが、お手柔らかに、お願いします。」
「小さな子どもも一緒に指導することになるでござるでな。」
「これは、寺子屋やることになりそうかな?」
「最初は、イートインでやってもいいわよね」
「あさ、グッドアイデア!…寺子屋も、寺のお堂とかで始めたのよね。イートインで始めて、必要そうなら施設建設ね。」
「冒険者さんたちの朝の買い物が終わった後、子供たちの学びの時間。いいわね。」
「これなら、準備出来次第始められるわね。」
「国連で識字率の低い国に寺子屋を作るプロジェクトをやった時、出席率が低くて困ったらしいわよ。給食を提供したら、定着したとか。」
「まぁ、どうするかは臨機応変。細かなことはまず当事者と担当者で相談することからでいかがでしょう?」
「当事者?りおん 子どもに聞くの?」
「先ほどお話ししたように、教育は上から作るのではなく、できれば親達の想いから作ってもらいたいんです。会場は提供します。教科書、教師の協力もします。でも、親達が子ども達に学んで欲しいと言う思いで作ってもらいたいんです。」
「じゃ、ママ達に声をかけて、学びの場を作りたいってこと?」
「はい。ジュリエットを祝福し、思いやるママ達の様子を見てて、当然、この愛情は子供に向けられてる。寺子屋はきっとできるとそう感じたんです。」
「いつから、どこで、誰から、どんなふうに、どれくらい、子どもたちに学ばせたいか、必要ないか、親たちの意見で決めてもらいたいんです。
もちろん、お父さんたちにも参加してもらいたいですけど、先ずは子供に接するお母さんの想いをお聞きした方がこの街では良いのではないでしょうか?」
「りおんは我々では信用できんと言うことじゃの。」
「子どもの教育は上に立つものに任せたら、ろくなことにならないと…。」
「一つの方針で子どもを育てるのは、間違いだと考えるのでござるな。」
「子どもを自分の想いで染めたい愛情は、重たいって言いたいのね。」
「誰であれ、指導者の思惑で導くと、独善的になりやすいのでございます。ギルマスと御三方を信用して、その指導のもとに教育を委ねるとしても、次に立つ世代が独善的に教育するかもしれないのでございます。だから、最初から庶民に委ねて、画一的でない導き方を模索すべきなのでございます。」
「お?執事が出て来たのぉ。緊張して、激しく思考しておるの」
「そうですね。落ち着きます。」
言われてみれば、執事言葉の時は、普段の自分が下がって、後ろ隣から眺めてる感じだな。ふふ、そういうことだったのか。
楽しんでも良さそうだな。
「りおんの言うことはわかっとる。ちょっと確認したまでじゃの」
「寺子屋という制度を作れと言うのでござるな。」
「それを指導者が決めるのではなく、直接の関係者、親達が決める環境を作れということだなあ。」
「私たちがこうしなさい。といえば、アイリーン達はその通りするわね。それが伝統になるのも、りおんは良しとしないということね。」
「御三方とギルマスを良しとしないわけではなく、上に立つものが定め教育を導くというルールを作らないためでございます。」
「りおちゃん、私たち庶民が、親達一人一人が考えて、小さな群れの子ども達を導くってことね。それを、今度は今日来てくれたママ達に考えてもらわないとダメなのね。」
「りおんちゃん、それめっちゃ大変じゃない?慎重に準備を進めてやらないとだめだよね。」
「わしらが定めて、守らせる方が、ずっと楽に進むが、それでは確かにずっと上からの定めに従う教育になるのぉ。それはわしらの信仰にも背く。りおん、よく考えてくれた。礼を言うぞ。」
「強制的に従わせる教えになってはならぬでござるの。」
「創造神様は、求めよさらば与えられん。と仰ってますわ。求めないで与えられるのは、何かおかしいのよ。子どもの将来を求めた時、与えられるのよね。」
「でも、具体的にはどう説明し、考えてもらうか、そこまではわかってません。」
「それは難しそうだな。何か工夫が必要だな。」
…良い案が浮かぶでもなく、しばらく過ぎて。
「僕らも意見いいですか?」
「ああ、春樹たちの考えも知りたい。」
「僕たちのクラスでも、ディスカッションやディベーションと言う、自分たちで考える授業があるんだけど、ディスカッションで言うと、相手と共有する力、テクニックを学ぶ授業って感じで、りおちゃんの想いとは違う気がする。」
「りおちゃんの言ってるのは、ここでの毎日の雑談みたいな、何気ない会話の中で過ごす時間みたいな学びの場なの? あれ好きよ。」
「あゆみ、さっきの大婆ちゃんも話してくれた、あの時間よね。」
「りおちゃんが居る会話、バカみたいだけど、僕たちの心に残ってること多いよね。」
「イートインでのジュリエット姉さまとのおしゃべり、それもディスカッションなのかな? だったら、魔法について教わったり、言葉を学びたいと思ったり、あゆにとっても、新しいことにつながってるよ。」
「俺、即座に反応するのが苦手で、出遅れてて無口に思われるけど、聞いてるだけでもそうだなって頷いてるよ。バカ言ってるなぁ〜と呆れてもいるけど」(笑)
「学校の授業って、どんなに費やしても、まとまらない絵画みたい。だってみんな能力を求めてるだけ、同じ方向向いてるだけで、互いはあんまり興味ないの。違う方向に進むと、弾かれるの。ディスカッションするときも、同じ方向向くため。いろんな方向があることは、認めてくれないの。追いついていかないと、取り残されるの。待ってるとその子も置いてかれるの。イートインではどこに向いててもいいのにね。」
「違っていいよって、りおちゃんが言ってくれるから、僕らは平気で学校行けるの。」
「『同じ方向向きなさい』の授業がここプレムでも始まると、私たち、居場所なくなるわよね。そんなの嫌だな。」
「そんなところ、シシカゲくんたち連れて来たくないよね。」
「のぞみちゃんが楽しくなさそうなの、嫌だな。」
「みんながどっち向いててもいい、楽しい学びの場所、絶対作ってね。」
「「「「お願いします」」」」
「カエデとあゆみ、作ってねじゃなく、作ろうねよ。」
「やっぱり現役は違うなぁ〜。僕の話の数倍訴求力、訴える力があったよ。」
「そうじゃの、最初からこの話聞いとれば、終わりだったのぉ」
「りおん、いらなかったわね。」
「えっ!」(驚)
「ドボルジンクさまとジュリエットの冗談よ、りおちゃんも頑張ったわよ。」
「ドボルジンク殿、ミサ=聖餐のひとときも斯く有りたいでござるの。」
「お互いがお互いを認め合う。誰かが導くのではなく、互いに神に示され、認め合う時間だの」
「意思を持った人として、私たちは創造されたと言うことよね。意思を持たぬ|土偶のように扱われるのは真っ平だわ。」
「そんなものとは断固戦うべきだな」
「そんな政府とも、戦うべきだと私も思う」
「あさちゃん、革命でもするの?」
「つい、今の総理大臣のこと思い出すと、腹立って。…国民のこと、自分の道具としか見てないでしょ。日本国の幸せ、経済の発展っていうけど、国民の幸せって一言も言ったことないのよ、あの人。あんなのと高校が同じと思うと、腹が立って来た!」
「「「「あさ叔母ちゃぁ〜ん。冷静にぃ」」」」
「叔母ちゃん言うな!っていつも言ってるでしょ。」(怒)
「あさ、その辺にしといてね、あっちのことは、まだ力無いんだから。」
「絶対力蓄えてやるわ!まずは協力し合う人、見つけなきゃ。シナモンが一人目ね。」
「まぁ、付き合ってあげるから、話し戻していい?」
ちょうどお後がよろしいようで。どうやって、ママたちに寺子屋について考えてもらうかは、次回のお話です。次もまた、見てくださいね。




