第67話 業務提携より先に教育を!〜でも国や街が押し付ける義務教育は『百害あって一理なし』。
「まぁ、雑談しながら食事にして、そのあと話を続けようかの。」
懸案だったギルドとの提携時期や業務運営についての会議もいつものように食事や雑談に流れている。ゆるいが内容は濃いと思ってる参加者たち。
美味しい食事に、話しの花が咲いて、会議は中断した。
「そういえば、エリーさんとヒルルさんは、こちらに来られなくて良かったんですか?」
「あいつら、昼間のクレープ作りが楽しすぎて、休憩したいとさ。……本音はもらったライムサワーと濁酒が飲みたいだけだ。好きにさせといた。」
「あの子たち、業務には興味ないですわね。受付に並ぶ方ですもの。」(微)
「おいらも並ぶ方っスよ。」
「おまえは大きなパーティの頭領だろ。並ぶ方視点も大切だ!」
「イートインで美味しそうに、おつまみ買って、楽しまれてましたよ。」
「ことり隊長が居ないぃ〜って、念話送って来てますわ。」
「能力の無駄遣いしておるのぉ!」(笑)
「ことり、隊長に昇格したの?とても早い昇進ですわね。」(微笑)
「ジュリエット様、クレープ隊の隊長なんですって。カエデちゃんも生地班でカエデ班長って呼ばれてました。」
「じゃ、正式にそれで行こうかな!」(笑)
「辞令、作っとくわ。兄さんから渡してね。」
「辞令、軽すぎ!」
「カエデは社員じゃないし。あげないわよ。」(怒)
「「「4人とも、うちに頂戴!(下さい!)」」」
「保護者の同意、…取られそうだから、却下!上場企業就職強い!」
「お義父さん、りおちゃんが二部上場に、いい会社に就職したって、親戚のお葬式で自慢してたんでしょ。親にとっては勲章レベルよね。」
「きっかり1年で辞表出したけどね。」
「りおん、それは父上はさぞがっかりしたでござろう。」
「今からでも一部上場に入り直しません?」
「丁重に断固お断りします。」(笑)
「高校生で入れるの?」
「入りたいかも、ファミプ本社。」
「カエデ、お前もか!」
「りおちゃん、古すぎて、高校生にはわかりません。」
「世界史で習っただろ?」
「ほんとに古すぎってこと?……アニメじゃないのね。」(笑)
「「「バイト代増えるなら、考えるかも」」」(笑)
「叔父さん、人望ないですね。」
「人望が服着て歩いてると思ってたんだけどなぁ。」
「人望のある りおん殿、そろそろ続きをお願いするでござる。」
「食事もあらかた終わったのぉ。」
「では、私はイートインに戻ります。」
「エリーたち、迷惑かけてない?」
「素敵なお客様ですよ。いっぱい食べてくれます。」(悪笑)
『『『ことりの成長が怖い』』』×上司たち
「りおん、アイデア、聴きたいわぁ。楽しみよね。」
「ジュリエット様、ハードルを下げていただきたい。」(汗)
「様、つけるなら、もっとあげるわよ。」(怒)
「僕から提案したいのは、スタッフ募集を日本人だけでなく、スラムや冒険者家族の子供達に広げてはという事です。」
「冒険者の子供はある程度年齢になると親が読み書きと計算は教えるが、冒険者になってから適性を見て事務ができる子がギルドの受付に入る。」
「ほとんどが生活に必要なレベルまでで、半蔵みたいに必要書類さえ苦手な奴もいる。」
「半蔵は、まだいい方よね。だから頭領務められてるのよ。首領になるには更なる修行が必要ね。」
「スラムの子は、その前に生活基盤作りでござるな。」
「それを、逆にしてしまおうという事です。」
「「「逆?」」」 ×全員
「冒険者になる前に、子どももあるいは大人も『読み書き計算』を覚えさせるのです。」
「りおちゃん、義務教育制度作るの?」
「春樹と僕は反対かな?」
「さっき、かなり批判してなかった? あゆみも嫌だな。ね、康太兄ちゃん。」
「わたしの時は、行かなくていいって言ってくれたのに?」
「高等すぎる日本の教育を持ってくると、弊害も大きいよね。」
「社長も、義務教育に疑問を持ってるという事ですね。」
「僕も、教育は政府から民の手に戻せって思っています。」
「私もりおちゃんと同じ。国が教育すると、最悪、戦争に行きたがる子供を作るしね。」
「あさ、それ太平洋戦争前の軍国教育のこと?」
「そう、教科書黒塗りして、お国のために死にますって教育に変えたの。この子たちにも、子どもができたら、私の子には絶対受けさせたくないわ。」(涙)
「そうだね、だからモブである我々が、教育を担うべきなんだよ。全体主義は嫌なんだ。」
「「「「なんで教育?」」」」
「あゆみ、康太、カエデ、春樹。
義務教育じゃないよ。……秋山様、寺子屋ってご存知ですか?」
「たしか、日本の江戸時代の教育制度でござるな。」
「制度というか、商人、農民、大工、工芸職人など庶民から自然発生的にできた。学び場のようです。
親たちの子供に学ばせたいという思いと、商家の旦那や職人の棟梁の弟子を育てたいという思いから、僧侶や禄を離れた侍、学のある町人が師匠を務めたようです。道場でも行っていたのでは?」
「「「ほう」」」
「この店にいる日本人は全員かなり高等な『読み書き計算』ができます。春樹たち高校生も聖なる書を読みこなし、帳簿をつけ、統計を取り、表に書き起こす。四則演算は8歳までに習ってます。」
「普通科だから、帳簿は習ってないよ。」
「そうだね春樹。でも、その基礎は身についてるよ。僕も普通科だけど、エクセリで帳簿つけてる。」
「そうか、確かにお小遣い長は、小学生の時につけた。」
「実は教育が義務付けられてるので、ほぼ全国民が読み書き計算ができる国なんです。」
「ほぉ、それはすごい、異世界はみんなそうなのでござるか?」
「いえ、経済力のある国は、高いところが多いですが、低い国々もあります。これは日本という私たちの国の特徴です。世界でもトップクラスと言われています。
政府は義務教育の成果だというのですが、秋山様にお尋ねした『寺子屋』がそのベースを築いたと僕は思ってます。」
「国王、領主というのは自分の手柄にしたいものじゃからのぉ。」
「まぁ、ここまで識字率を上げたのは明治政府からの今の政府なのは確かです。が、その基礎を作ったのは、その前の江戸時代、平和な250年の庶民たちです。」
「「「「庶民=モブってこと?」」」」
「そうなんだよ。あゆみ。……江戸時代の終わり、鎖国制度のあった我が国に、開国を迫った外国の探索方、スパイだね。その作家が、地方の農民まで瓦版、当時の1枚刷りの新聞を読めたと祖国に報告しています。それで、周りの国々を手中に収めてたのに、日本の植民地化は諦めたとも聴きます。良い取引をした方が、さらに利が出るとの報告もあったそうです。」
「高等教育を目指す者にはその後の教育制度を考えるとして、まずは『読み書き計算』を学ぶ場を作れば、早いうちに、冒険者のスキルアップと、ギルドスタッフの獲得が可能になるという提案です。人は、レベルアップすれば、その上を目指すものですよね。」
「それは納得じゃの」
「寺子屋と義務教育って、違うの?」
「学校に一日行ったりしないよ。お昼まで学んで、昼からは家やお店の手伝いをしてたらしいよ。」
「今のあゆみたちと一緒じゃん!」
「ちゃんと学校行けよ!」
「「「行ってるよ!」」」
「習うのは、手習。習字と書き取りだな。……と計算。加減乗除を基本に、商家の帳簿がつけられる程度の算数。」
「「「「結構高度じゃない?」」」」
「商家はちゃんと取引の手紙を書けて、帳簿をつけられるように教えたんだって。」
「俺には無理っス。」
「「「「半蔵さんも一緒に頑張ろうね。」」」」
「地理、人名、手紙の書き方、暦、礼儀作法、人によっては道徳である儒学、百人一首、徒然草など、ある程度、高度なものも教えていたようだよ。」
「「「「やっぱり勉強は大変なんだ。」」」」
「でも、先生に習うんじゃないんだよ。基本は先生一人で、小学生から中学生あたりまで一緒に教えるんだよ。だから、今のあゆみたちのように、机に座って、先生の言うことを聞くんじゃなかったんだって。」
「「「えぇ? どうするの?」」」
「それぞれの学ぶ内容の教材を渡されて、それを読んで自分で学んだらしい。大きい子が小さい子を教えてもいたんだって。彼らにとっても復習になり、教えることによって学びが深まるといこともあったらしい。」
「時代劇で、ちゃんと前を向いて習ってるのは、時代考証してないってこと?」
「別のシーンにあった、墨で真っ黒に汚れて大騒ぎしてる子供たちの方が、あってるかもね。自分で学ぶ力を持てた子は、その後仕事に励み、学びを深めていったらしいです。」
「カエデのように、一日中絵を描いてた子もいたそうよ。」
「私、通信教育の勉強もしてるよ」(怒)
「そうね、ごめんね。」
「本当にそんな時代だったの?証拠はあるの?」
「康太、証拠はな、江戸文化にある……。
浮世絵、イラストだな。
瓦版、SNSのラインやインスタ。
黄表紙は今のWeb版なろうのラノベだ。
そう言ったものが格安で、庶民向けに売られてた。大工さんや農家の人たちも買える値段だったそうだ。あの北斎の浮世絵も、うどん1杯分だったらしいぞ。」
「「「「安ぅっ」」」」
「そういえば、ヨーロッパと貿易を始めた時、売れ残った浮世絵で品物を包んで送ったら、それを見た芸術家さんたちが驚愕して、浮世絵が世界的な絵画として評価された。ってこの間公共放送でやってた。……お母さんと見たよ。」
「他にも算額、高度な数学の問題をさ寺社仏閣に奉納、それを解いた人が答えの算額を奉納して、あってるかを判断してのが、たくさん残ってる。」
「和算って言って、縦書きだったのよ。で、数字は漢数字。」
「長くならない?」
「一億二百五十八万三百七十五.…長っ!」
「春ちゃん、頭の中は見えません!」
「あゆみちゃん、頭の中で漢字縦書き書いてみ!」
「一
億
五
千
三
百
八
十
七
万
八
千
二
百
五
十
六
…長っ」
「つまり、基礎的な学びの場所、寺子屋を始めて、冒険者とギルドスタッフの教育を始めてしまおう。と言うことでござるな。」
「はい、ちょうどジュリエットがことりたちに、こちらの言葉を教えてくださるのであれば、同じ場所で、寺子屋をやれるのではという提案です。」
りおんの提案は、コンビニの経営についてでも、冒険者ギルドの人員募集でもなく、寺子屋の設置だった。義務教育としての学校ではなく、モブ=庶民の意思で始める寺子屋。この普及をどう促していくのか、りおんの思いはどう伝わっていくのか。
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