第57話 天童義隆。オタクは、男の中の男だった!
クレープが盛況だと思ったら、クレープ焼き機も盛況。主婦が種無しパンが早く焼けると興味を持って“ちゃぱてぃー”食材も大盛況。白い“ちゃぱてぃー”も売れていた。…そこにエルフのご婦人。ジュリエットのお母様?
「うちにもこんな子一人欲しいわ。…婿にどうかしら。」
天童君の母世代のエルフさんが、ため息混じりにつぶやいた。…推定年齢300歳、憶測です。
「母さん、勝手に婿探ししないで…。孫がこんなにいるんだから、いいじゃない!」
「それは、あんたの妹の子でしょ。あんたも早く見せなさい。」
「天童、昨日会ったばかりなのにわるいわね。聞かなかったことにして。」
「えっ、ジュリエット様。お母様なんですか? 」
「そうよ。…似てないけどね。」
「似てますよ。優しい雰囲気とか…
お母さんですか、初めまして。天童 義隆と申します。
ファミリーストップに勤めて4年目です。
まだまだひよっこですが、……」
…
「娘さんを僕にください。
幸せにできないかもしれませんが、
一緒に幸せになります。」
…
…
…
…
「「「「「「「「「「「「「「「「「ええええええええええ」」」」」」」」」」」」」」」」
「「ええ?」」
「えっ?」
子供たちも沈黙の後、みんなが驚いて、エリーとヒルルが驚いて…
ジュリエット本人が小さく驚いた。
「ジュリエットさま、ちょっとお待ちください。」
ダッシュで事務室に走って行った。逃げた? …訳ではなさそう? …
…
大きな花束を持って来た。いつの間に?
あ、うちの近所の花屋のフローレンス風花さんだ。
深夜に注文しとけば、勝手に休憩して、ファミプPay使えた?
十分買って来られる。ゲート事務所直結。誰にも見られずにロッカーで。
うん。可能だ。『断固憶測』
…
店員、客、子供、孫、犬、同僚、店長、大婆ちゃん、
秘書、秘書室長、総員注目で静まった中。
…
ジュリエットの前に花束を大事そうに抱えて、跪き。間を開けて、徐に…。
「ジュリエット様、昨日お会いしたばかりで失礼ではないか考え続けましたが、どうしても気持ちを抑えきれずに、一晩考えました。せめて、お伝えだけさせて頂きたいと。この真っ赤な薔薇の花束を捧げます。」
…
「突然お母様に会って、動揺して、「娘さんを僕にください。」と本心が突っ走ってしまいました。ごめんなさい。…昨日悩んで出した答えは…」
絶妙な間がうまい。そのまま頑張れ!
…
「あなたに惚れました。僕のことを覚えてほしくて…、
この花束を受け取ってください。」
…
「ジュリエット、なんか応えなさいよ。わたしに孫、抱かせなさいよ。」
「母さん、黙ってて! 誠実には誠実で返したいの。」
…
「天童、ありがとう。気持ちは受け取っておくわ…。」
…
「あなたの可愛い容姿も、その真っ直ぐな性格も、嫌いじゃないわ。わたしを真っ直ぐに見つめて来た男も百年で初めてよ。その前はわたし子供だったわ。」
…
「真っ赤な薔薇の花を持って来た男も初めてよ。いただいていい?」
「ぜひ、受け取ってください。」
「ありがとう」
…
「まず店員と客からね。わたしはあなたを知らない。あなたもわたしを知らない。男と女は知るところから始めるものでしょ。」
…
「わたしがあなたを好きになるか、あなたがわたしへの興味を失うか。結論が出るまでは、店員と客ね。」
「はい。嬉しいです。」
「その次は、何すればいいのかしらね? あさにでもまず相談するわ…。」
…
「義隆、わたし、あなたを少し気に入ったから、これからしばらくは、あなたを守るわ。だって、こんな素敵な言葉と贈り物、貰ったんですもの。」
しおらしく顔を赤らめ、少し俯き加減に花束を見つめるジュリエットだった。
そして真っ赤な顔をして、美しい睡蓮が埋め尽くす湖を見つめるような目の天童青年だった。男前に見えた。…元々悪くはないな。
…
「うん、めでたい。」(棒)
「とても素敵な告白だったわね。」(棒)
「うちらも嬉しいから、喜んで祝杯をあげるにゃ」(棒)
「気が抜けてそうな人には、ヒールをかけるわよ。」(棒)
「こっちに、既婚者用社員寮、建てなきゃダメかしら?」(棒)
「また、孫が増える。嬉しいかな?」(棒)
棒読みで、祝ってる りおん、あさ、エリー、ヒルル、シナモン…
オチはジュリ母。その場の空気が固まって、風まで止まってる。あ、暑くないからエアコン止まってるんだ。家電までタイミングを計ったのか?
その空気は晴れることなく、無の感覚で、子供達も笑わず、
「試食のクレープ焼けました。追加のご注文も受けられます。」(棒)
「うちは、2つずつ、6個お願いね。」(棒)
「蜂蜜とチョコ2つずつとイチゴひとつ。」(棒)
「カエデちゃん、材料は全粒粉でお塩とお砂糖。お水は試しに軟水っての入れてみよ。お塩とお砂糖は次から持って来ていい?」(棒)
「大丈夫ですよ。冒険者Payでしたら、お会計はこの携帯端末で大丈夫です。」(棒)
「じゃ、これね。」(棒)
棒読みが続く。
…
…
…
「店長!午前便持って来ました。追加の種無しパンの材料も持って来ました。」
「おぉ〜福の神ぃ!」
「「「「「「「あああぁ〜〜〜福の神だぁ!」」」」」」」
「「「「「「「「「「「福の神、福の神、福の神」」」」」」」」」」」
「「「「「「「福の神バンザ〜イ。いいところに来た福の神」」」」」」」
〜〜〜〜〜〜 店中が大爆笑! 〜〜〜〜〜〜
「福田福副室長、本当いいところに来てくれたわ。おかげでみんなの心がほぐれたわ。」
「「「「ナイスタイミング。」」」」
「「やっと笑えたわ」」
「天童、お前、時と場所を弁えろ…。」
「でも、すごい素敵なプロポーズ?を見せてもらったわ。」
「一晩で大したもんだ!」
「「「ジュリエットお姉さまも素敵だわ。」」」
「「「「姉さんに俺も惚れた!」」」」
「「「覚悟が足りん」」」
「「気の迷いよ。やめとけ!」」
「「「「優先者は義隆ね」」」」
「「おめでとう(にゃ)。ジュリエット。応援するから、幸せつかんでね。」」
「よくわからないけど、ありがとう。でも、100歳近く違うのよ。義隆、本当にいいの?」
「「いつも、エルフの100歳はまだ成人したばっかりって言ってるの誰よ(にゃ)」」
「もう、このままOKな感じだけど、出会ったばっかりだから、ゆっくり関係を作るといいと思うよ。俺も昨日会ったばかりだけど、天童はいいやつだと思っとくよ。オタクだけど…。」(笑)
「りおんのお墨付き。なんかあっても安心ね。」(笑)
「ジュリエットは小さいクレープ焼いて。見てたからできるでしょ。」
「天童はクリームにチョコレート、イチゴ一粒とシナモンでくるっと巻いて。」
「さぁ、みなさん、もう一度試食よ!あま〜い。新しいカップルの幸せを分けてもらいましょ!お一人もう一つずつどうぞ。」
あさとシナモンの号令で二人の共同作業の開始です。もう結婚式?(笑)
「なんだか、わからないけど…」
「「「「「「「「「「おめでとう〜」」」」」」」」」」
お店の外の女子会にも騒動が伝わり、祝福と試食の列が増えていった。
ジュリエットと義隆が焼き、店内にはチョコとハチミツの甘すぎる香りが漂う中、シナモンの爽やかな香りも合わさり、小さなクレープを受け取る行列ができていた。スノーとノエル、大婆ちゃんも並んでた。(笑)
はてさて
「ドボルジンク様、秋山様、いらしゃいませ。」
「あさ、シナモン、何かあったかのぉ?」
「幸せそうな空気でござるな。」
「ジュリエット様に、春の予感です。」
「それは重畳、良い結果を祈ろうぞ!」
「なに気が早いこと言ってるのよ。わたしもわけわからないのよ。でも、ちょっと幸せなの。どうしてくれるのよ、義隆。」
「一緒に幸せになりましょう。」(笑)
「ドボルジンク様、いつも娘がお世話になってます。」
「良い婿に恵まれたようじゃの。重畳じゃの」
「りおん殿が見立てた婿なら、心配ないでござろう。」
「えぇ、昨日会ったばかりですから、責任は鴉瑠之かと…」
「一番ここで長いのはシナモンよね。」
「まぁね。こっちに連れて来るって気にさせた奴ってことだけは、言っとくわ。」
「まぁ、あの花束はなかなかの気構えじゃのぉ。」
風花さん、赤いのだけで、あんなにあったか? 全部買い占めた?
抱えると隠れるほどの赤いバラ。皆で眺め感心した。
「ドボルジンク様、秋山様、おひとつどうぞ。
初めてお二人が作られた幸せのクレープです。」
「姉さまのお母さまも、おひとつどうぞ。」
「あささん、シナモン室長、りお店長、福の神もどうぞ。」
ことりとエレンが、幸せのクレープを関係者に配って回ってた。
クレープをもう一度買う人がいて、あゆみとカエデ、エリーとヒルルも大忙しだった。
幸せな雰囲気で、試食コーナーが包まれた。
「りおさん、よくわからないんですけど、天童がジュリエットさまに告白したんですか?」
「福くん、その前に舞い上がって、お母様に「娘さんをください」って頼んでた」
「なんなんですか、あいつ。ネジ何本すっ飛んでるんだ? エルフっての省いて、みんなに話したら、社内報トップページになるな。」
「まぁ、やめといてやりたいけど、鴉瑠之がどうするかだな」
「トップ記事、確定ですね。」(笑)
その後、すべての潮が引いた時、驚愕の事実を天童くんから見せられたりおんと福。
「「全ての謎は、解けた!」」
「まぁ、あの人のヒットCMコピーですけど……オタク舐めたらあっかっん〜です。」
「好きです。付き合ってください。」「愛してます。結婚してください。」これ、半分近くは、恋愛ドラマの失敗する定番のセリフだよね。
初対面で一目惚れ。一晩悩んだ男は、「まずは僕のことを知ってください」とまっすぐに伝えた。「天童くん、グッジョブ」と思った方、ぜひ、いいねとご感想を。
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……したくなったでしょ。(笑)




