第39話 ダンジョンの街『プレオ』〜上層部の密談
【本日3話投稿】2話目です。
重たい話になりそうだった合併説明会、ひとまず終了。時はエリーたちが異世界コンビニに着いた頃に遡ります。別行動のジュリエットはギルマス執務室の重い扉を開けるところだった。いつものようにノックもせずに入っていった。
「ギルマス、入るわよ。…あら、ごめんなさい。私が最後だったのね。」
「ジュリエット様、お待ちしておりました。」
「ギルマス(怒)。年上扱いしないでって言ってるよね。怒るわよ。」
「おう!精神的な年齢で扱えって分かってはいるんだけどな。今日はなんだか特別なんだよ。悪い。」
「それは、わかるから、この後はいつも通りにしてちょうだい。」
「まぁ、ジュリエット、わしらがいるからじゃ、許しちゃってくれのぉ。」
彼らはこの部屋ではちょくちょく会っているのだが、隠密能力の強い3人は一部の職員以外には気づかれずにここに入っている。この部屋自体『機密漏洩防止魔法』がかかっている。この3人はこのギルドの幹部。それぞれS級。関係者なので、当然入室時にノックをしない。落ち落ち昼寝もできないと思いつつ、昼寝してるギルマスだ。
「ここに揃うのは久方ぶりでござる。」
「ギルマスが意識不明になっておった16年前のあの時以来じゃの。」
「あの半年は大変であったでござる。」
「特別救護室で、毎日1回、ヒールとクリーンをかけて、マナポーションをクイーンが飲ませたのよ。特にクイーンが大変だたんだから、恋女房に感謝、忘れちゃダメよ。」
「重々承知しております。」(汗)
「年上扱いするな」と言われていても、この3人には頭が上がらないギルマスだった。
「今日は、あのコンビニのことじゃのぉ」
「ドボルジンクには、結界魔道具、一時記憶忘却魔法具、秘密保持魔法契約、冒険者Payの開発と多岐にわたって、ご協力感謝する。初日の襲撃も無事の対応。ありがたい。」
「あれは、秋山殿が防いだようなもんじゃの。」(笑)
「申し訳ない。そこそこのやつだったので、体が先に動いておった。」
「大丈夫じゃ。わしとチーターでわざと店長に魔力を纏って突撃して、実証実験はしておいた。問題なく起動しておったのぉ。チーターのやつ楽しんでおったのぉ。」
「やはり実証実験でござったか。」
「店長、なんだか気づいていたみたいだわ。見た目と違って、意外と鋭いわよあの子。」(笑)
「攻撃魔法は防ぐのに、突撃できた理由を考えたんじゃろうのぉ。敵対されてないと考えたわけじゃの。」(笑)
りおん、この人たちを敵に回してはいけないよ。
「それと、リオ殿の犬2匹、それがしと同時に犯人に反応しておった。あれは鍛えれば、使い物になるやもれませぬ。」
「良い機会にやってみるかの。言葉も理解しておるらしい。」
「では、りおん殿はお三方のお眼鏡に適ったと言うことで、良いですな。」
「そうじゃの、りおんだけでなく、あさも強くて良い子じゃの。春樹たち4人もなかなかじゃ。あの家系はいったい何者なのかのぉ?」
「家系というより、加護を持ったものだと思われる。最初に話しておった日も『創造主を信仰してるから、預言を認めないわけにはいかない』と話しておった。創造主への畏敬の念は確かなもののようである。」
「あちらの創造主も同じ方なのかのぉ?」
「我々が創世神国のあり方を話しておったときも、賛同の意を表しておったでござる。」
「あやつは素直で、よく顔に出るからのぉ。わかりやすいの」
「この体で彼方に飛ばされたとき、『お主のゆかりにある者ゲートを通りしおり、彼の地への扉となり、永遠にその地を得るであろう。使いである彼の地の者には閉ざされる』と御使いの語り掛けがございました。」
「そうであった。わしらも納得のできる出来事であったからこそ、あの邸宅の土地を りおんのものとして登記した。」
「私も御使いの言葉、聞きたかったわ」
「それがしもでござる」
「りおん殿に会ってから理解できたのだが、あの半年の眠りは、獣人である俺と小さな猫である俺が別々の世で同時に生きるための成長期間だったようだ。創造主様の奇跡としか思えない。」
「「「ほう…」」」
「猫である俺は、古家の軒下で生まれた。その後、家は取り壊され、りおん殿とあさ殿がその地を買取り、家を建てた。森の木と米を育てる田の土を使った土壁の家だ。補強に竹も使っている。大工や左官が作る家を時には手伝いながら、楽しげに見守ってる夫婦だった。」
「それは、被造物への祝福が溢れそうな家だの。」
「実際、果樹の豊かな鳥や小物の住まう庭だった。食い物も多く、俺は食に困らなかった。」
それからしばらく、ギルマスのクロちゃんの思い出をとても楽しく聞いた3人だった。
「私もそこで風の精霊になって過ごしたかったわ」
「慎ましやかで、武士の住む家にはふさわしいでござるの。」
「いや、片付けるのは苦手だったようだ。荷物が多いのを悩んでおった。」
「そんなことまで見ておったのか?」
「日がな一日、隣の家の干場の下に座り、りおん殿の仕事ぶりを見るのが楽しみで…。あさ殿が帰ってきたら煮干しがもらえるので、庭に降りた。美味かった。」
時折二人の激しい喧嘩を何度も目撃したのは、内緒にしておこうと思うクロちゃんだった。
「篠山の3人は、よく遊びにきておったぞ。春樹は休みのたびに泊まりにきておった。岡山というのは、庭にある青い箱で丸1日走らねば着かないところだと話しておった。まるも一緒に出掛けておった。」
「あの子たちが素直なのも、祝福なのかもしれないわね。」
「だと良いのぉ」
「彼らは幼い。どうなるかは、導き手の一人であろう我々にも責任があるでござるな。」
「子どもは街の宝だからな。…りおん様のことはこれぐらいで良いか?」
「ギルマス、『さま』になっとるが、本音はそちらかの。感謝が溢れておるのぉ」
「そうかもしませんな。」(汗)
「では、これからのことを…」
「あ、その前にのぉ…ギルマスが話しておった念話だが、出来たぞ」
「えっ?」
「インカムの話をしておったろうが、それが出来たんじゃのぉ」
「今、コンビニにいるエリーと会話できるわよ」
(エリー、聞こえる?)
(ジュリエット、頭の中に話しかけてきてる?)
(そう、さっき話して繋いでおいた念話よ)
(そっちは問題ない?)
(新しい店員さんが5人と、結構パワフルな社長の妹が来たわよ。)
(それは楽しみね。後で行くわ…。また後でね。)
「ジュリエット、突然黙り込んで、何してるんだ?」
「エリーと話してたのよ。頭の中で話すんだから、外には聞こえないわよ。」
「そりゃ、便利かな?」
「コンビニに5人の新人とパワフルな社長の妹が来てるって。」
「便利じゃろ、ジュリエット」
「ええ、でも敵には渡してはダメな魔法ね。当分は私たち3人だけで使ってみるわ」
「そうじゃのぉ、それがええじゃろうの」
「俺も使えるのか?」
「ジュリエットじゃから、いきなり取得できたとも言えるの。適性が必要じゃの。あれば使える可能性はあるのぉ。」
「俺は?」
「わからんがパーティーに一人いれば、3人は繋がる。」
「繋がるのは1対1だ。」
「ちなみにうちは私よ。おしゃべり付きの女子は適性が高いのかも」
「多分りおんもできるじゃろうの」
「妄想癖があるからかしら?」
「そうじゃの。あの社長もじゃの」
「まぁ、あやつらはその前に魔法の特訓じゃのぉ。」
「インカムがあるから、やりたがらないかもしれないでござる。」
「おお、そうじゃ、それじゃ」
「創造主の戒めの十二戒を守らねばならんの。」
「りおん殿のところは十戒らしいから、こちらは二戒追加されておるのかのぉ。」
「確か、聖なる書の十戒がどうのと家で話しておりました。」
気を抜くと言葉が丁寧に戻るギルマスである。なんと十戒もどうやら同じものらしい。
「魔法がないからの、二戒はないのかもしれぬのぉ。」
=====
『空と大地と海を愛し、魔法の力を極めよ。研鑽せよ。』
『自ら新たな力を創ってはならぬ。力の創造は我の役目ぞ。』
=====
「この二つじゃの。それで今日行った時に結界の魔道具に新たな結界を加えておく。名付けて『化石と電気の力を忘れる魔法陣』じゃ。」
「「ほう」」
「化石のガスと電気を使っておる道具のことを認識できなくなる魔法陣じゃ。」
「あったほうが良いわね」
「龍の槍とわしら以外のこっちものは、コンビニで見た電気の道具、ガスの道具は認識できぬようにした。見ても、気にならない。記憶にすら残らないのじゃ。」
「創世神国の者が見たら、手に入れたがるであろうからな」
「この四日間は大丈夫でござるか?」
「創世神国の者の悪意は結界がはじいておるのぉ。悪意のないものが興味を持たないように魔法陣を作ったのじゃ。」
「それで店に来たのに、帰って行ったやつが何人かいたのね。」
「あれは、そうだったでござるか。」
「色々防御が出来上がるまでは、表立って関わらぬほうが良いと思い、開店セレモニーまでは見て見ぬ振りをしておったでござる」
「もう、大丈夫よね。私、あの子達お気に入りなの!可愛くて!」
「りおん殿とあさ殿もなかなかの御仁でござるの。侍について詳しいでござる。」
「りおんは、よく人を選んでこの地に連れてきておる。何事かをなしてくれるじゃろうのぉ」
ドボルジンク様と秋山様、ジュリエット様が開店初日からいきなりコンビニの常連になったのは、こういう配慮だったのを、まだ『戦場のファミリーストップ』の面々は知らない。ありがたいことである。
いよいよ『プレオダンジョン街』の重鎮が揃って、異世界コンビニへ。ダンジョンの街での本格的な冒険が始まるかな? まだまだな気がする。




