第109話 「蒸らし炒めの野菜の甘いミノタウルスのカレー」①ご飯の炊き方と野菜の切り方
「基本の材料は、じゃがいも、玉ねぎ、ニンジン。それとお肉よ。」
「あさ先生、今日はミノタウルスのお肉です。これ、とっても美味しかったですよね〜。」
「街で売ってる中では、柔らかくて好物の栗の香りのする高級なお肉よ。ギルマス奮発したわね。」
「ステーキ食べた時、そんな香りしてたぁ〜……かな?」
あさとアシスタントのカエデの進行で、カレー作りの教室が始まった。楽しげに合いの手を入れてくれているのはエリーではなく、先頭に座ってるジュリエット。アイたちママ友軍団や黒狼ママたちを従えての参加である。足立区に行ってる間に、ママの数が膨れ上がって、座敷で寝かせられる子どもの世話は、常連パパたちが頑張ってた!
従えては、ないんだと思う……。
「カエデ、先生はやめといて。……それほど馬鹿じゃないわ〜。」
「料理番組にしたかったのに〜!」
「師は御子さまのみじゃからのぉ」
「はい。」
ドボルジンクの言葉に笑顔で応えたあさだった。
「他に、エリンギやマッシュルームなどキノコ、オクラやズッキーニなど緑黄色野菜もお好みで加えます。」
「いろいろ試していいんですよね。」
「失敗したら、家族で笑っておきましょう〜」
「今日は美味しそうなアスパラガスと森でとれたマッシュルームを一緒に入れます。」
「あさ、マッシュルームは、ダンジョンの森産だぞ。」
「ギルマス、いろいろ提供ありがとうです。……後、大切なのはご飯。お米よ。」
「お米って、獣人や人間も食べられるのかい?」
「家畜用に売ってるけど、食べたことないよ。」
「うちは病気の時に、お粥を食べるね。麦より優しいんだよ。」
ママ友と黒狼ママたちが口々にいろいろ教えてくれた。
「今日食べたカレーと大人気のおにぎりのご飯は、この街で売ってるお米よ。」
「ファミプにはギルドが納品してくれてます。」
「ウチで買うのは、こんなに白くないよ。」
「これ、別のだろ?」
「病気の時のお粥とか重湯には、味より栄養素なので、そちらもおすすめよ。」
「ほんと、美味しくないよ。力をつけるのに、我慢して食べてもらうけどね。」
「ファミプで売ってるお米は、精米という工程を経てます。」
「精米?」
「そう、精米。美味しくするのに外側の糠を取り除いてるの。」
「あさちゃん、お店のご飯は家のご飯よりちょっと色ついてるよ。」
「カエデ、いい質問ですね。……ヌカを全部取った白米は美味しいけど、大切なビタミンとか、栄養素を糠と一緒に落としてしまうのよ。」
「白米は美味しいけど、健康には不向きってことですか?」
「だから、プレオの街で売るお米には、みんなの健康を考えて、少しだけヌカを残したのよ。」
「不味いとこ、残したのかい?」
「カザリさん、秋山先生のお祖父様の時代に白米ばかり食べてた街の人たちが病気になったことがあるのよ。」
「玄米を食べてた農家の人たちは無事だったんだよね。」
「脚気でござるな。白米が原因だったと祖父から聞いた。白米を初めて食べたのは、6日前だがな。あれは七分米なのでござるか……。」
秋山先生は豪快に笑った。
「というわけで、白米ではなく、七分米をファミプでは販売することにしたわ。」
「ジュリエットの結婚式などには、白米も用意しますね。」
「ご馳走だもんね。」
満面の笑顔で、カエデが笑った。後ろで夕子さんが目頭を押さえてた。
「じゃ、順番に作っていきます。」
「最初、洗い米ですね。」
「七分米はお水をすぐに吸うので、テキパキするのがコツよ。」
「テキパキ、サッサです。」
サッとザルを渡した。
「お鍋にお米を入れて、お米の2倍ぐらいのたっぷりのお水を入れて、サっとかき混ぜる。」
「はい、ザルです。」
「汚れたお水をお米が吸うので、1回混ぜたら、十分よ。」
「お水を捨てて、お米をザルでキャッチ!」
「もう一度、お鍋に移して、お水を入れて、今度はサッサッサッと優しくお米を洗って、しっかり優しく洗って、お水を捨てる。」
「もう一度、お水を加えて、サッサッサと優しくお米を洗って、ザルに移してお水をよく切るって感じですよね。」
「洗い加減の目安はあるのかい?」
「カザリさん、水が薄く白いぐらいでいいわよ。」
「あささん、『さん』はいらないよ。カザリでいい。」
「じゃ、私もあさで、お願いね。」
「ザルでよく水を切ってから、使わないお鍋かボールに移して、濡れ布巾をかぶせておくんですよね。」
「カエデ、正解。このまま夏は1時間ぐらい、お水を吸わせてから炊くの。」
「冬場は2時間ぐらい置いとくんですよね。」
「マジックバッグがあれば、その後保管して、何日か後でも美味しく炊ける。」
足立区では、ジップロックに入れて、冷蔵庫で2〜3日保管可能だよね。
「では、次はカレーの野菜を切っていきます。」
「まず、玉ねぎ。筋を切るように細めの千切りにして、フライパンに油を引いて、焦茶色になるまで炒めるわよ。」
「家族4人でこっちの大きな玉ねぎ2個ぐらいですね。今日は6個、12〜15人前です。」
こちらの家族4人分は、足立区では大体8人前になる。参加者が多いから更に3倍の量を作ることにしたらしい。
「大変だから、暇な時に旦那さんにやってもらって、マジックバッグで保存がいいかも。」
「ちゃんと茶色くなるまで、30分以上かかります。」
「ママ、うちはおじいちゃんに頑張って貰えばいいね。」
ギルマス、頑張れ!
「ウチでは、りおんちゃんの担当。凍らしてからやると早いんだって。」
「冷凍魔法って、使える人いらっしゃいますか?」
「カエデ、私ができるわよ。カチンコチンに凍らせてさしあげるわよ。」
「ジュリエット、これ、お願い!」
あさが、千切りしておいた大きな玉ねぎ4個分を渡した。
「カチンコチンに凍らせればいいのね」
「程々に……。絶対零度にはしないでね。」
「冬に凍った池で歩けるぐらいでいい?」
「そんなもんだと思う。」
二人の感覚は、合ってるのだろうか……?
「じゃがいも幅1cm、ニンジン5ミリ、セロリが3mmで切ります。」
「お鍋ひとつで蒸らし炒めするから、厚さを調整して、均等に火が通る工夫なの。」
「じゃ、午前中みたいに、別々に炒めるときは、大きくてもいいんですか?」
「たくさん作る時や、ゴロゴロお野菜のカレーの時は、それでもいいわね。」
「じゃ、カエデはこの大きなじゃがいも4個を1cmの厚さの銀杏切りにしてね。」
「4つに切って、1cm幅でスライスすればいいですか?」
「そうそう。ニンジンはこれも大きいわね。2本皮剥いて5mmの厚さで半月切り。」
「セロリは1本半を3mmにスライスですよね。」
「どなたかやってみたい人、いますかぁ〜?」
「はーい!」
「エッ!ジュリエット、料理するにゃ?」
「包丁、ちゃんと握ったことないでしょ!」
「お嬢様だもんねぇ。」
エリーとアイとヒルルが、目を丸くして、驚いていた。
「やったことないから、やりたいのよ。文句ありますの?」
「あとで、教えるから、今日はやめとこうにゃ。」
「基礎の基礎から、二人でちゃんと教えるから。」
なぜか必死なエリーとヒルル……。以前、何かあったのか?
「ジュリエット、ちゃんと私の説明聞いてから、やってくれるなら、いいわよ。」
「あさ、その条件でいいわ。教えてくださる?」
「交渉成立ね。エリー、ヒルル、私に任せてくださいな。」
「まぁ、あさなら、何があっても、治してくれるから、いいかにゃ!」
「そうよね。あさなら大丈夫よね。」
以前、何があったかは、想像できる気がした。二人とも、ご苦労だったね。
「じゃ、エリーには3mm幅でセロリをお願いね。」
「茎のところは3mm幅で、葉っぱのところは同じぐらいで適当に。分けといてくださいね。」
「3mmって、どのくらいにゃ?」
「エリーさん、これ使ってください。」
カエデがエリーに秘密兵器を渡した。
「この薄くて黒いの、まな板かにゃ?」
「はい。そこに、3mm、5mm、10mmの縞々が入ってるんです。」
「あ、これにゃ!」
「それに合わせて切ると便利ですよ。」
「これ、いいにゃぁ。欲しいニャァ」
「これはお店の備品なんです。売れるといいですね。」
「エリー、調べておくわ。……シナモン、よろしくね。」
「ヒルルさん、私の代わりに、ジャガイモお願いしていいですか?」
「ジャガイモ1cm幅だよね。大丈夫よ。そのまな板、まだある?」
「これ使ってください。……よろしくお願いします。」
「さぁ、ジュリエット、ニンジンは、まず皮を剥いて、その後5mm半月切りよ。」
とんでもないことが起こるのか……? ジュリエットが料理教室に参戦。あさは自信があるのか、まさかの安請け合いではないよね?
『お肉たっぷり蒸らし炒めで野菜の甘いミノタウルスの美味しいカレー作り』、まだまだ続きます。ご飯も炊かねばならないし……。
カレーの名称も、まだまだ長くなったりしないよね……?
『お肉たっぷり蒸らし炒めで野菜の甘いアスパラガスとキノコとミノタウルスの美味しいカレー』。……まだまだ増えそうだね。(汗)
『お肉たっぷり蒸らし炒めで野菜の甘いアスパラガスとキノコとミノタウルスの美味しく、栄養たっぷり七分搗きご飯の……カレー』




