第110話 「軽業小屋以外でこんな包丁の使い方は絶対禁止!」足立区だと逮捕されます。
「さぁ、ジュリエット、ニンジンはまず皮を剥いて、半月切りよ。」
「まず、ピーラーで皮を剥いてください。」
突然料理をしたいと言い出したジュリエットへのあさとカエデの料理教室が始まった。
「はい、これがピーラー」
「あら、小さな刺股、可愛い形の道具ね。これで皮が剥けるの?」
「先に、スリットの入った板がついてるの……」
「あら、これ刃物なのね。ここで皮を刮ぐのかしら?」
「そうよ。小さいけどよく切れる刃物なの。指を切らないように、気をつけてね。」
「確かにそうね。ニンジンと一緒に、指の皮もむけそうね。」
「ジュリエット、刮いだ皮を治す魔法は、まだイメージできてないから、失敗しないでね。」
「分かったわ」(笑)
「ジュリエット、右利きよね?」
「剣はこっちで持つわ。右利きよね……。」
「じゃ、まな板の上にニンジン置いて、左手で太いところを持って、こんな感じで刮いでみて。」
「持ってる手の側から、先っぽへ向かうと、刃が手に当たらないので、安全です。」
カエデが補足しつつ、あさが見本を見せた。持つ手のそばから、細いところへ刮いでいった。これなら、怪我しないよね。
「あさ、これでいいのかしら?」
「ジュリエット、上手よ。ちゃんとできてるわ。ちょっと回して、次のところを刮いでいくの。」
「これでいい?」
無事、順調にニンジンの皮剥きをしているジュリエット……。危なっかしっく見える。(汗)
「細いとこ終わったら、残りの太いとこ……。細いとこを持ってね。」
「あさ、その便利な道具もファミプで売ってるのかにゃ?」
「あ、これは私が買ってきたものなの。シナモン、お店に置くことできる?」
「さっきの定規付きやわらかまな板と一緒に、仕入れるように、言っとくわ。エリー、少し待っててね。」
多分この後……。頑張れ福くん。
「じゃ、ジュリエット、この包丁とまな板使って。」
「まな板は普通の木のまな板ね。……包丁は、黒くて四角いのね。」
「秋山さまの使ってる刀と同じ技術で作られた、和包丁よ。」
「これは菜切包丁、お野菜を切るとき用の包丁です。」
「刃が真っ直ぐなの。だから、お野菜は、切り残しなく切れるのよ。」
「ちょっと見ててね。」
あさはじゃがいもをスパッと真っ二つに……。
「ほぉ、鋭い切れ味じゃの。力はほとんど入れてないが、刃を引いて切っておったの。」
「なかなかの業物でござるな。」
「注文してから1年ほど待たされる、人気の包丁です。」
「買った後、さらに人気が出て、2年待ちになってたわね。」
「ちゃんと磨がないと、切れなくなりますけどね。」
「刀も同じでござるよ。」
「ジュリエット、包丁はよく切れるの。特にこの包丁は切れるのよね。」
「だから、振り回したり、考えなしに切ったりしちゃだめなんですよね。」
「カエデたちに教えたとき、口酸っぱく言ったわよね。」
「カエデは何歳で包丁持ったのかしら?」
「私と康太が10歳、あゆみが8歳です。あさちゃんが料理教室してくれて、包丁も教わりました。」
子ども達を教えた経験から、あさはちゃんと教えられるって、自信があったのかな?
「そんなに早くに教えて大丈夫だったの?エルフなんて、赤子も同然よ。」
「子供用の刃先が丸い安全な包丁があるんです。」
「ジュリエット姉さまが剣を持たれたのは、人間で何歳ぐらいですか?」
「木剣は人間なら6歳ぐらいの体格の時だったわね。」
「それと同じよ。教えれば、安全に使える年齢から始めたの。」
「そうね。そう思える年齢ね。」
「今のジュリエットなら、もっと大丈夫な年齢にゃ。」
「エリー、なんか失礼なこと言ってません?」
「ジュリエット、包丁は振り回しはダメにゃ!」
エリーの一言で、ちょっとジュリエットの包丁が動いた。
「代わりに、拘束!」
「うぐぐぐぐ……。」
「静かにしておきなさい。」
「じゃ、包丁の使い方を教えますね。」
魔法で口を塞がれたエリーは放置で、料理教室が続いた。
「和包丁は基本引いて使うの。刀も同じよね。」
「確かにそうでござる。」
「ですので、刃が進む方向に指や手を残さないのが基本です。」
「切れるところに指や手を残さないってことね。」
「でも、左の手で野菜を支えなきゃだめですよね。」
「あら、剣も刀も、相手が動いてても、切っちゃうわよ。」
「だからジュリエットが切ったら、いろんな大きさになるにゃ」
「切っちゃだめなものも切るしね。」
「大変だったにゃ」
口の拘束が解けたエリーが叫び、ヒルルが応えた。
ジュリエットに包丁持たせたくなかった理由が見えてきた。(汗)
「包丁は、それではだめなんです。等間隔に、均一に切るので、大抵の場合は右手で切って、左手でお肉や野菜を支えて固定するの……。」
「やりやすい方で良いのではないの……?」
「ジュリエットのやり方で、ニンジン縦に半分に切ってみて……。」
「みんな下がるにゃ!」
「えいっ!」……スパっ!
ジュリエットが空中に投げたニンジンをスパッと切り落とした。見事に斜めで、小さな方は床に落ちた。
「私が切ってみるね。」
あさが、まな板の上にニンジンを置き、丁寧に半分に切って、平らな面を下に二つ並べ、隣にジュリエットの形の歪な大小のニンジンを並べた。
「ジュリエットのは、大きさが揃ってないでしょ。」
「料理する時、大きさを揃えるのはとても大切なことなんです。」
「火の通り方を揃えるのと、見た目を揃えるためなの。」
「食べた時、固かったり、柔らかかったりしたら、いやですよね。」
「ジュリエットばっかり大きいのとったら、腹が立つニャァ〜」
「それはそうね。」
あさとカエデが、打ち合わせしてたの?ってぐらいの名調子で説明している。
「5㎜幅に切ってみるわよ。」
「これを使うと便利です。」
カエデがエリーと同じ、定規付き柔らかまな板を敷いてくれた。
「この5㎜の筋に合わせて切ると、ちゃんと揃うのよ。」
「慣れたら、目分量でもOKです。」
あさがメモリに合わせて、綺麗に5ミリ幅でニンジンを半月切りに。
細くなったあたりで、斜めにして大きさを調整、綺麗に揃った半月切りのニンジンができた。
「そうね、支えずに、そこまで均等にするには、魔法使うしかないわね。」
「魔法は、後で試してみるとして、今は包丁で頑張って。」
左手の指を伸ばしたままニンジンを支え、切ろうとしていた。
「ストップ!だめです。……ジュリエット姉さま、指を切ります!」
「え?何がだめなの?」
「そのまま包丁を引くと、指が落ちます。」
「えっ。……ほんとだわ。危なかったわ。カエデありがとう。」
「カエデ、むかし教えたこと、ジュリエットに教えてあげて。」
「ニンジンを支える左手は、猫の手にします。」
「卵を握ってる感じに丸めるのよね。」
「あゆみも包丁使えるのかしら?」
「8歳の時に一緒に教わったよ。」
「丸めた指の先から、二番目の指の平らな腹に包丁を当てて、切っていくと、指は絶対切らないですよ。」
「こんな感じだよ。」
あゆみがジュリエットの小さい方のニンジンを5㎜幅に上手に切っていった。
「あゆみも上手ですわね。確かに、それなら、指を切り落としたりしませんわね。……やってみてもいいかしら。」
「どうぞ、違ってたら、二人が教えます。」
左手を猫の手にして大きめになったニンジンをささえ、右手に持った包丁を指の腹に当てて、きれいに5㎜に切りそろえていった。
「この指の腹に当てておくのが秘訣なのですわね。」
「ちょっと親指が外に出たがってたよ。」
「気をつけて、丸めた手の中に入れてくださいね。」
「二人、合格あげられる?」
「「ジュリエット姉さま、もう少し切ってみて。」」
ジュリエットはニンジンを最後まで、あさと同じように途中で斜めにして大きさを揃えた。
「「合格です」」
「「やったぁ〜。炊事当番、3人に増える!」」
「あら、私が料理したいのは、義隆のためよ。炊事当番のためじゃないわよ。」
「「えぇぇぇ〜〜」」
がっくりきた二人に、すかさず助け舟が……。
「ジュリエット姉さま、天童さんに美味しいご飯を作るには、切るのだけじゃダメです。まだまだマスターしなきゃならないことだらけですよ。」
「料理当番しながら、エリーさんとヒルルさんに、教わった方が上達早いよね。」
「天童くん、喜ぶわよね。」
カエデとあゆみにあさまで加わって、エリーとヒルルの援護射撃をした。
「じゃぁ、教えてもらおうかしら。エリー、ヒルル、料理当番やってあげてもいいわよ。」
「エリー、二人でやった方が、楽かもしれないわよ。」
「教えながらだと、大変かもにゃ」
「私に教えられないってことかしら?」
「ちゃんと真面目に覚えるにゃ?」
「義隆のためですもの。当たり前よ。」
「ジュリエット姉さまが料理するなんて、天地がひっくり返るぐらいの奇跡ね。」
「あさはまた、朝に続いてありえないことを、まき起こしたわね。」
アイとカザリの二人が驚愕し感嘆していた。
「じゃ、ジュリエット、後もう1本、ニンジンを半月切り5㎜で、お願いね。」
見るとエリーとヒルルはジャガイモとセロリは切り終わっていた。
「この後は切った野菜の蒸らし炒めです。ジュリエット姉さまが切り終わるまで、ちょっと休憩です。ことりちゃんがお茶を用意して待ってくれてます。みなさん、どうぞお寛ぎください。」
カエデとあさがしゃべり疲れた様子で、ことりちゃんにペコリと感謝の意を伝えていた。かなり喋り続けてたもんね。お疲れ様……。後半も頑張って!
お米研ぎで1話、野菜切りとジュリエットの包丁教室で1話。カレーのレシピはあと何話……?普通に作り方だけなら、あと1話で十分だと思うんだけど、ジュリエット、事件起こしたりしないよね……?
みなさん、この後の展開の無事を祈ってくださいね。美味しいカレーできるかなぁ?




