第107話 エレンちゃんはかわいい天然少女でした。教えて無理でも自力で頑張ります。
「では、秘密保持魔法契約を取り行います。抵抗は無駄ですから、ご了承ください。」
「わかった、了承する。」
「この魔道具、異世界の秘密をあちらを知らない人に話せない魔法契約なので、契約者同士の会話は可能です。契約者でない人に聞かれそうになったら、話せなくなります。録音機、盗聴器も対象です。異世界では、スマホも店内カメラも録音・録画できないんです。」
「電子機器まで制御されるのか。どうやっているんだろう?」
「意外と単純なことで、防いでるのかもしれません。」
「魔法って、イメージですもんね。」
「あら、エレンも魔法詳しいの?」
「後でやって見せてあげるね。」
では、この水晶の魔道具に手を乗せて、「秘密保持魔法契約を守ります。」と唱えてください。それで契約完了です。
「えぇ?」
「エレンどうかしたの?」
「私たちの時、もっと長かったよ」
「あ、その方が、儀式的だろぉ〜」
「それだけの理由なの?」
「みんなには内緒だよ!」
「はぁ〜……尊敬して損した気分!」
「尊敬なんて、やめときなって〜」
「いえ、店長とあささんを目指して頑張ります!」
「まず、いい人見つけなさいな。」
「えぇ、お爺ちゃんみたいなこと言わないでぇ〜」
「親の願いでもあるのよ。せっつかないけど、それはわかってね。」
「もう、エルフさんと交際宣言した男の子が出てますよ。」
「出会いはいっぱいです。大丈夫」
「ホビットぐらいならいいけど、ドラゴニュートとかは、ちょっと怖いな。」
「ドワーフの婿は、ありですわ。」
そういえば、背は低くないが、逞しい体のリチャードさん。バイキングっぽい体格だね。
「では、こちらの水晶に手を置いて、私、リチャード・カーマイケルは秘密保持魔法契約を守り、異世界で見聞きすることをこちらで語らないと誓います。」
「私、静江・イザワ・カーマイケルは秘密保持魔法契約を守り、異世界で見聞きすることをこちらで語らないと誓います。」
二人の誓いと共に、温かな光がそれぞれを包んだ。魔法契約の成立である。
「簡易なのに、なかなか厳かな経験だな。」
「心が安らかになりますわ。」
「では、あちらに行ってみますか?」
「荷物の移動と寮の見学は、もう少し日が落ちて温度が下がってから若いのに手伝わせます。」
「はい、私とお兄ちゃんたちが手伝います。」
「同僚たちもハリキッテ、手伝うと思います。一部除きますが……。」
修一くん……の、従姉妹からの扱われ方が、気の毒になった。
「まぁ、可愛い店員さんたちね。エレンのこと、よろしくお願いしますね。」
「あさちゃんの姪の、あゆみです。高校生です。」
「柳田ことりと申します。エレンちゃんの同僚です。」
「柳田さんの……?」
「あ、姪です。」
「ママ、二人と一緒に魔法の練習してるのよ。やっと話せた〜!……すごいのよぉ〜!花火の魔法で疲れも癒せるの。りおんさんとの激論、肩凝ってない?」
「めっちゃくちゃ、疲れた!今までで一番怖い腹の探り合いだった。」
「一緒に行った貿易交渉でも、あそこまで見透かされること無かったものね。」
「ほんと、すごい能力だな。聖霊の魔法は……。」
「魔法に忌避感ないですね。」
「先祖のエルフが、神様の魔法があることは伝えてくれてたからね。」
「え、そうなの?」
「エレン、御伽噺、聞かせてやったろ。良い魔法と悪い魔法の……。」
「あ、あれ、本当の話だったのか!」
「「はぁ〜」」
「一人っ子でよかったわ。こんなの何人も製造してたら、責任取れないわ。」
「エレンちゃん、とっても素直で、良い子ですよ。」
「切磋琢磨する仲間ができたので、これからいろいろ学びますよ。」
「はーい。北千住の本社にいる時より、エレンちゃんと仲良くなりました。」
「よかったわ。よろしくお願いしますわね。」
「はい。」
「ことりちゃん、あゆみちゃん、花火手伝って」
「せ〜の」
「「「ファイヤーフラワー」」」
3人の指先から魔法の光がす〜うっと伸び、天井間際で光を結び、一瞬暗くなってから花火が弾けた。3色の綺麗な光が部屋中に広がった。
「わぁ、すごいわぁ、それぞれに色が違って、本物の花火のように、広がっていって、とても綺麗ね。こんなすごいことができるようになったの?」
「ママの言うとおり、綺麗だし、なんだか、温かいものに包まれて、体も楽になった。ありがとう。」
「私はやっとなの。昨日、部屋でやってみたら、もう少し小さいけど、できたわ。……今日は二人と一緒だから、うまく行ったみたい。これからも練習します。」
実は、エレンの花火はひとまわり小さい光だった。
「お家に帰る前に、魔力放出だけ、教わっててよかったわ。ことりちゃんありがとう。」
「エレンちゃん、さっき、ユン◯ル飲んでたのは、このためだったのね。」
「へへへ!バレてた?」
「誰がレジしたか、忘れた?」
「あ、そうだった〜!」
「残念なのは、庁舎のスタッフにもしゃべれないことだな。提携を勧めにくい。」
「あ、かなりぼかすと、小説も発表可能ですよ。」
「柿野タネ先生、書いてますねぇ。」
「どうやって、書いてるんですか?」
「エディターで、書けることだけ書いてるんです。」
「それだけですか?」
「書けないことは書けないから、わかりやすいですよ〜」
「話す内容を書いてみれば、話せることは書けるって事ですね。……今度やってみます。」
「俺もやってみよ。冒険者コンビニ運営社長譚!書いてみよ!」
売れそうにないな。
「りおん、上から目線で眺めるの、やめてくれる?」
「二人は、運営会社社長と店舗オーナーには見えないな。」
「どう見えます?」
「子役アイドルから成長した漫才コンビ」
「まんまやん!……りおんさん、そっちの方が、訴求力ありまっせ。」
「アルノくん、二足の草鞋は難しいって聞くで〜。」
「3足も4足も、百足に負けんと履いてる人に、言われとうないわ。」
「せやあぁ〜って、誰がムカデや!やっとられんわ!……終わらしてもらいますぅ〜」
「無理そうだね。」
「「リチャードさ〜ん、やらせといてぇ〜」」
「あ、この後カレー教室なんですけど、試食されます?」
「中断して、こちらに来られたんですか?」
「突然申し訳ない。」
「いえいえ、コンビニのお客様も含めて、慣れっこですから。」
「6日間、いろいろあったよね。」
「心配されるから、そのへんにしとき〜」
「ここまで言って、気の毒じゃない?」
「そのうちバレるから、大丈夫やない?」
「それもそうでんなぁ〜」
「こっちのほうが上だわ。さすが夫婦漫才。」
「ことりちゃん、りおんさんとあささんの治癒魔法、すごかったんでしょ。」
「なんで知ってるの?」
「みゆきさんがミナさんにSMSで聞いたって、転送SMS来た。」
「SMSって、異世界のこと、送れるの?」
「これ」
『怪我人がたくさん来て、あささんが頑張って、みんな大丈夫だったんだって。』
『すごいねぇ〜、それでそれで?』
『りおんさんがパズルして、あささんが傷にハイドロキズパッド貼って、手を当ててたんだって。』
「めっちゃ、大雑把で、他の人が読んでも、普通の出来事ね。」
「パズルと、怪我の治療がごっちゃになってて、普通じゃないわよ。」
「それはそうですね〜。……あささん、鋭い……」
「柳田さん、全然喋ってませんけど、隠密魔法の練習中ですか?」
「あ、はい。りおんさんには気づかれましたね。」
「僕らもわかってましたよ。」
「私たちも、柳田さん静かねぇ〜って、こちらにお邪魔した時から、思ってましたわ。」
「今度、カエデにちゃんと教わってください。」
「そうします。」
「柳田家の頭領、ちょっとショックだったみたいだね。」
「誰かがバラすから……。」
「裸の王様にした方が、もっと気の毒でしょ。」
「それもそうね。」
「あの、あささん、全部聞こえてます。オブラートか何かに包んでいただけますでしょうか。」
「「ごめんなさ〜い。」」
「ジュリエットたち待ってるから、そろそろ降りるよ。」
「はい!……では、リチャードさん、静江さん。……あ、親しく呼ばせていただいていいですか?」
「あさって呼んでいい?静江って呼んで!」
「僕も、イギリス人だから、名前は呼び捨てでいいよ。シナモンやアルノもね。邦彦は呼び捨てしてくれないんだよ。」
「今度、お酒の席では、そうさせていただきます。」
「絶対だよ。……仕事の席では柳〜田さ〜んにしておくか!」
店に戻るあさ、いよいよカレー作り再開か!
うん、後書は短くが親切だな。では!




