003・ポラン王国の受難
ポラン王国は大陸においては中の中程度の国力を有する王政国家である。貴族が力を持ち中央集権化も出来ていない中世の国家らしい姿をしているがそれでも周辺諸国と仲良くすることで平和を実現していた。ドラゴンがツレルクを縄張りにしたという報告を受けるまでは。
「何故ドラゴンが……」
「陛下、ここで対応を間違えますと国家存亡の危機となりかねませんぞ」
「分かっているがどういう対処をするのが正解なのだ?」
国王ポラン10世は突如として発生した非常事態に頭を抱えた。普段はとても頼りになる宰相もこの時ばかりは何も言えずにいた。ポラン10世とて愚王ではなく優秀な部類に入る王様だ。しかしだからと言って世界最強のドラゴン相手の適切な対応を知っているわけではなかった。というか人間の誰も知らないだろう。知っているという者がいるのならばそいつはただの馬鹿だ。
「取り合えずですが我が国からの正式な外交官を派遣して国家の承認とツレルクを正式に割譲するというしかないでしょう。ツレルクは惜しいですがドラゴン相手に槍を向ける等出来ませんからな」
「それしかないか。問題はツレルクだけで満足しない場合だ」
既にドラゴンが人間の国づくりに興味を持ってツレルクを縄張りにしたことは周知している。それだけに領土の拡大を狙う可能性は0ではないどころか非常に高いだろう。これがツレルクが外国と隣接する都市ならそちらに押し付ける事も出来たがツレルクは王都にほど近い国家のほぼ中心にある。ポラン王国が対象となるのは間違いないだろう。
「王都を始めとする各都市には刺激しない程度に兵を増強し、守りを固めるように指示を出しましょう。どうなるかは分かりませんが民衆もそれで多少安心してくれるでしょう」
「そうだな……」
ドラゴン出現の報を聞きツレルクに近い都市の民衆たちは不安を覚えており、中には逃げ出す者も出ているほどだった。現在でこそその動きは小規模だがいずれ国外逃亡へとつながる可能性もあった。手を打てるうちに打っておくのは間違いではないだろう。
「とはいえ兵士たちがどれだけ役に立つか……。ドラゴンが本気で攻めてくれば兵士でも立っているのがやっとな状況になるだろう」
「流石にドラゴンと戦う事を求めるのは哀れでしょうな」
ドラゴンを本気で倒したいと考えるのならばポラン王国だけではどうしようもない。それこそ大陸中の軍勢を合わせて漸く可能性が少し見えてくる程度の希望だろう。ドラゴンの能力や動き次第ではそれも無意味に終わる可能性だってある。
「精霊の力を借りれば異世界より勇者を召喚する事も可能だと聞く。勝てると思うか?」
「分かりませぬな」
かつて存在した魔王。それを討伐したという勇者は異世界より召喚されていた。魔王の危機を救った勇者は異世界へと帰還を果たしており、その秘術は大陸の宗教国家が秘匿していた。国同士の争いなどに悪用されないようにするためである。
しかし、所詮勇者も人間。魔王すら霞んで見えるドラゴンに戦えるなんて思えなかったのだ。それだけこの世界のドラゴンは生物としての格が違っていた。
「それと貴族や冒険者ギルドへもお触れを出しましょう。彼らが余計なちょっかいをかけてドラゴンの逆鱗に触れるようなことがあれば国が文字通り消し飛ぶでしょうからな」
「そうだったな。そちらの問題もあったか。だが、奴らがどれだけ話を聞いてくれるのか……」
中央集権化が為されていないこの国で貴族の権力は王族よりも強い場合があった。特に地方貴族はちょっとした王国のような状態となっており国王の命令でもおいそれとは効かない事も多かった。
そして冒険者ギルドは国家からの介入を受けないと宣言する事で大陸中に広がる巨大組織となる事が出来ている。ポラン王国とて彼らに命令を下すことはできない。もし、彼らがドラゴン討伐の依頼などだし、冒険者が襲い掛かったとしたら……。
「普段は頼りになる冒険者ギルドも本当の脅威の前では扱いにくい存在でしかないのだな」
「今回があまりにも異例として割り切るべきでしょう。陛下、あまり張り詰めても体を悪くするだけですよ」
「分かっている。今はドラゴンへの対処を急ぐとしよう」
そうして、ポラン王国はドラゴンへの対処を行っていくのだがそんな彼らの努力を全てぶち壊すように事件が発生する。
ツレルクの近くに存在する伯爵家がドラゴン討伐の為に軍を派遣して返り討ちにあったのだ。その報告を受けた国王はあまりの事態に気絶したという。
ポラン王国
モデルはあの三回も分割された国家です。理由? 受難がよく似合うと思ったので
因みに戦力比は以下の通りです
ドラゴン>>>>>>>>>>(越えられない壁)>>>>>>>>>>魔王=勇者パーティー>勇者>>>勇者の仲間たち>>>>>>その他大勢の兵士
ドラゴンがその気になれば魔王のように少しずつ大陸を支配下に置くのではなく数日で更地に変えてしまえれます




