↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/178

2-11:アパートの朝 上

 煉獄からパントエールたちに救い出された翌日の朝、彼女の元へ行く準備を進めていた。といっても、別に大仰な準備が必要というわけではない。朝食がてらに、アザレアとフィオナにレジスタンス加盟への意見を聞いておこうというくらいの話である。


 先にシュライクの意見を――ひとまず目先は協力姿勢を見せた方が良いというもの――共有し、二人に是非を問う。まずは二人のうちでは意見を言う方の少女が、パンを牛乳で流し込みながら手を上げる。


「昨日も言ったけれど、私は賛成。正確にはシュライクの意見に……今は行き場所もないわけだし、少なくとも行く当てができてから去るべきだと思う」

「とはいえ、一度レジスタンスに入ったらなかなか抜け出せないかもしれないからな。もう少し慎重に決めるべきじゃないか?」

「その辺りを今日話し合ってくればいいんじゃないの?」

「まぁ、それもそうなんだが……」

「あとはまぁ、少なくともパントエールは悪い人ではないと思う」

「そこは同意だ」


 彼女が神器を使ってくれたから、フィオナはもうすっかりと回復したようだ。自分の方は傷も深かったのでまだ全快とは言えないが、ひとまず、問題なく出歩ける程度には回復している。


 ただ、パントエールが悪い奴でなくとも、それは組織の一個人に良識があるということに過ぎない。彼女は王家の神器を使用していたから立場のある者ではあるだろうが、少なくともあの歳で――見た目的には二十代前半というところだろうか――組織の長ということはないだろう。そうなれば、組織全体としてみれば悪徳がはびこっているかもしれない。


 しかし、冷静に考えれば、自分は王党派の目的については詳しくは知らない。その立場上、王権、ないし貴族の特権身分を取り戻そうという動きをするはずだが、そのやり方や過程については知らないことに気づく。そういう意味では、もう少し彼らの目指す世界を聞いても良いのかもしれない。


 あとはアザレアの意見を聞いておきたい。視線を向けると、アザレアはのんびりとパンを食べている最中で――あれからほとんど半日寝たので元気そうだが、まだ寝ぐせがそのままになっている――美味しそうに口をもごもごとさせている。こちらの視線に気づいたのかハッとした表情を浮かべ、いそいそと呑み込んでこちらへ向き直った。


「その、私は、ご主人様のご意見に従います」

「そう言うと思ってたが、俺はアザレアの意見が聞きたいんだ」

「うぅん……質問に質問を返すようで恐縮ですが、ご主人様はどのように思われているのですか?」

「そんな態度を取っている時点でアザレアも消極的なんだろうが……俺に意見をあわせる気だろう? そうはさせないぞ」

「ひぅ! ご主人様が意地悪です……」


 朝食の喜びはどこへやら、アザレアは両手で頭を抱えながらうんうんと唸りだす。かなり言葉を選んでいるのか――彼女の場合は「実は結構頑固で自分の意見があるくせに、相当なことがない限りは言わない」タイプなのはなんとなくだが理解できてきたので、後で文句を言われないようにするためにも聞き出しておくことは肝要だし、また彼女自身もこういう場で意見を言うのに慣れておいた方が良いだろう。


「えと……概ね、フィオちゃんと同じ意見ですが、それより消極的、というのが正直なところです」

「要するに、一旦は協力、ないしレジスタンスに加入はするが、そのうち抜けるのがいいってところか?」

「そうですね。今は身を護るために協力者がいるのは心強いですし、こうやって住む場所があるのもありがたいことですから」

「ありがたいなら、抜ける理由はないんじゃないか?」

「それはそうなんですけど……」


 アザレアはそこで言葉を切って、何やらまごまごしている。自分の方を見たり、フィオナの方を見たり――その態度を見るに王党派が嫌いであるとか政治的な信条があるとかではなさそうだが、逆にそれ故に言いにくい理由があるのかもしれない。


 ただまぁ、ここまで出せただけでも今日は良いだろう。そろそろ出なければ、約束の時間に間に合わない。壁の時計の針は予定の一時間前を指しているが、歩いていくには距離もあるし、早めに出発するべきだ。


「まぁ、二人の方針は分かった。参考にさせてもらうよ……ただ、交渉が上手くいかなかったら、すぐに退去の可能性もあることは覚えておいてくれ」

「ハルトの口が上手いとは思ってないけど、そこはなんとか上手くやってきて」

「善処はする。お前の口がもう少しお利口なら頑張れるんだけどな」


 そう言いながら席を立ち、帯刀だけして――上着は先日のスルトとの戦いでぼろぼろになってしまったので買い替える必要がある――玄関へと向かう。挨拶しようと振り返ると、アザレアが立ち上がって外に出る準備を始めているので、それを手で制止する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。