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1-70:カウント・ザ・ブリッツ 上

 セスティナとの戦闘は、はっきりと向こうの有利で展開していた。武器の性能も違うし、乗り越えてきた修羅場の数も違う。冷静に考えればこうなることはわかり切っていたのだが――それでも、全く考えなしに飛び出してきたわけではない。


 自分が優位な点は一点だけ存在する。それは、セスティナはこちらに致命傷を与えられないということ。帝国に売り渡すために連れ出してきたのだし、死んでしまっては胚としての機能を失ってしまう。


 そうなれば、向こうとしては多少の手心は必要になる。それこそ、お父様の望むことを忠実に実行するのなら、加減してこちらを無力化するくらいのことはできないといけないと思っているに違いない。


 胚の体は普通の人間と比べて頑丈ではあるものの、それでも心臓や頭を撃たれれば即死だし、あまりに多くの銃弾を浴びれば失血死してしまう。そうなると、アサルトライフルで雑に弾幕を張ったりはしてこないだろうし、急所を狙うような攻撃もしてこないはずだ。


 恐らく、こちらの銃を落とすか、腕を狙って戦闘不能を狙うという筋書きを考えているはず。つまり、彼女は炎典レーヴァテインの過剰な火力を活かすことができないのだ。


 だが、それはこちらも同じ。本来なら化け物を吹き飛ばすほどの火薬量と口径の弾丸を撃ち出すため、こちらとしても相手の武器を落とす勝ち方を狙いたい。彼女には先ほど散々に言われたが、それでも彼女は一年ほどは一緒にいた間柄だし、不用意に命を奪うような真似はしたくない。


 もう少し話し合えば分かり合えるかも――こんな手心を加えていては優位も何もないのだが、あの子とここまでこじれてしまったのは、間違いなく自分の責任でもある。だから、可能な限り命を奪う真似はしたくない。


 そう考えて戦い始めたのだが、セスティナが想像より攻撃的だったことは誤算だった。一応、積極的な攻勢には出てこないものの、弾幕は割と容赦なく展開してきている。隙を見て影から顔を出せば、すぐに狙いを付けられて銃撃をされる。位置を変えようと移動をすれば、動きにくいように足元を狙われる。岩の多い場所でギリギリ助かったといえるというか、遮蔽物がなければ簡単に決着はついていただろう。


 強いて付け込む隙を挙げるとするなら、やはりリロードのタイミングだろうか。炎典レーヴァテインは無限の弾薬を内蔵しているわけではなく、マガジンに合わせてその形を変える神器なだけだ。弾自体は外付けが必要であり、撃ち切ったタイミングでは隙を晒すことになる――とはいっても、あれだけの連射速度で何発撃ったかなど数えていられないのだが。


 一応、自分が最後に使っていたのとマガジンは同じ大きさだったはずだから、その装填数は二〇発のはず。しかし、リロードをするときは自分が使っているように向こうも遮蔽物を使う。わざわざ安易に隙を晒してくれることもないだろう。


 そうなれば、多少無理をしてでも、手持ちの拳銃で押し切る必要がある。確かに彼女の持つ神器と比べれば火力は劣るが、ハルトと一緒に選んだ、初めて買ってもらった――誰かに何かを買い与えられるということ自体、私自身は初めてだった――ものである。豆鉄砲と侮ったことを後悔させてやらなくてはならない。


「クィンティア、いつまで隠れているつもり!?」

「言われなくても……姉として、妹の口の聞き方を矯正してやらなきゃならない」


 自分が数年間眠っていたせいでセスティナは年上の妹となった、というのは何とも奇妙だが――岩陰から身を乗り出し、相手の射線から位置を予測してあいさつ代わりに一発、相手の肩の高さ辺りを予測して撃ち込む。


 だが、すでにその場所に相手はいない。こちらの反撃を読んで岩陰に隠れているというより、より優位な立ち位置を探して別の場所へと移動した、という感じだ。つまり、この場所は恐らく安全ではなくなる。早く移動しなければ。

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