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2-47:廃工場への突入 中

「……それで、先ほどの質問の回答ですが、確かに彼女の身分を知っているのは私とバルトンのみです。一応、コンスタンツ自身がどこかで触れ回った可能性がありますが、そんなことをする子でないとは思っています。また、貴方も彼女の正体を知る一人ではありますが、この場合は誘拐が始まった時期と合いません。

 またソルヴェーニャ本国でアルトワーニュ伯が口を割った可能性もありますが、ここに関してははるか遠くで今は確かめようもない。

 そうなると、私から見たら警戒すべきは、バルトンになるのです……貴方から見たら、私かバルトンのどちらか、ということになるでしょう」

「……あぁ、悪いが、今回の件は、アンタのこともきな臭いと思っている」

「結構、私の身の潔白は、この後の行動で証明します。ただ、コンスタンツの周りに怪しい動きがあること。そして、その犯人が私かバルトンのどちらかである可能性を念頭に置いて動いてくれれば構いません」

「しかし、それは妙じゃないか? 王党派としては、つまりアンタにしてもバルトンにしても、フェルノワールに付く理由が一切ない」

「可能性はゼロとは言えません。たとえば、フェルノワール派から約束されている報酬次第では、その限りではないでしょう。ですが……貴方の言う通り、確かにバルトンが裏切る理由は思い浮かびません」

「逆に、何でアイツが裏切っていると考えたんだ?」

「主な理由は勘です」

「勘だぁ? 重要なメンバーを勘で裏切者扱いするとは、結構なことじゃないか?」

「仰ることはごもっとも。ただ、そういった勘に辿り着いた理由は三つあります。まず、今回の敵側の動きについて。これは先ほど言ったように、最終的にはコンスタンツを狙っているのでもない限り説明がつきにくい……弱小パルチザンである我々の中で、帝国に狙われるほどの価値があるのは彼女くらいしかいませんから。

 付随して二点目、これも先ほど話しましたが、今回のことは内通者がいないと成立しない点。これはコンスタンツのことを除いても、誰が王党派のメンバーかを把握していないとできない、という意味合いもあります。

 ただ、この時点では、まだ彼はあくまでも容疑者の一人に過ぎませんでした。実際に襲われる人の中には、王党派でない者も混じっていましたし、またもしかしたら我々が認識していないだけで、他の反帝国組織も同様に狙われているのかもしれません。

 最後の理由ですが、それが先ほどのバルトンの態度です」

「まぁ、いつもに比べたら消極的だったな。逆に、お前が積極的すぎるとも思うが」

「貴方の疑いはもっともです。今回私が少々無茶な作戦を組んだのは、相手に時間を与えないため。昨日の一件で、相手も我々が動き出すことを察知しているはずですから、下手な対策の時間を取られたくないというのが一番です。

 そしてもう一点、私は敢えてバルトンにすべての情報を提示しました。それで、彼がどのように動くか……逆に、時間を与えなければ下手なことをしでかさないという可能性もあります。それで、無茶を承知で迅速な作戦を立てたのです」

「……予測でいい。バルトンの動機は何だ?」

「……流石に、そこまでは。こんな風に述べている私自身が、一番自分の推論を信じられていないのですから。

 少なくとも、バルトンはコンスタンツのことを、本当に敬愛するべき相手としてみている……それは、亡きガストン様の忘れ形見である以上に、彼女自身の器量も認めてのことです」

「……俺もそう思う。付き合いは長くないが、アイツのコンスタンツを守ろうとする意志は本物だったと思うからな」

「そういう意味では、貴方から見れば私の方が怪しいという部分もあるのでしょうが……それで構いません。

 ともかく、貴方に依頼したいことは一つです。明日の突入において、バルトンとコンスタンツから目を離さないでほしいのです。そして、コンスタンツの身柄が確保されるような事態を避けるように動いてほしいと思っています」

「バルトンを怪しいと思うなら、パントエールとオッサンを、少なくともオッサンだけでも作戦から外した方が早いだろう。まさか、わざと危険に突っ込ませて敵を釣ろうって算段か?」

「当たらずとも遠からず……単純に今回の作戦を決行するなら、腕利きを先頭に立たせる必要性がある。アザレア殿に参加してもらえば、外すこともできるのですが……それにどのみち、コンスタンツは必ず前面に立とうとするでしょう。それこそ、アザレア殿が前に立てないことを言い訳にね」

「まぁ、お前は後方待機していろなんて言ったら、爆発しそうな気配ではあるな。誰かさんが変に挑発したせいでな」

「私も大人げなかったのは認めます。が、あの子はまだ若い……もちろん、歳の割に見識も深く、剣の腕は確かだと認めてはいます。ですが同時に、あの子は自らの使命の重さに向き合おうとするあまりに、自らのキャパシティーを超えて無茶をする嫌いがある……それは、人の上に立つものとしては危険を伴います。

 そういった意味では、もう少し落ち着いてほしいと思っているのですがね……ともかく、バルトンの件は私の杞憂であればそれでいいのです。いずれにしても、貴方はすでに彼が裏切る可能性を念頭に置いたわけですから、彼らから目を離せなくなるでしょう?」

「なるほど……最後に聞きたいんだが、その話はコンスタンツや他のメンバーには?」

「まだ確定でない以上は、彼女たちに話すべきではないと考えています。とくに、姫とバルトンの関係は長い……その可能性を提示しては動揺が生まれる可能性もありますし、何なら作戦前に彼を詰めに行く可能性があります。

 もし杞憂だった際には無駄に遺恨を残すことになるでしょうし、予測が当たっていたとしたらバルトン側が変に動きを変える可能性がある。そういった意味では、黙っているのが正解かと」


 そう言ってセギュールは話を終えた。彼の言うことを全面的に信じたわけでもない。一見それなりに筋は通っているようにも思うが、作り話で筋を通すことなどいくらでもできる。ただ、セギュールから「バルトンが怪しい」という話が出てしまった以上、恐らくは全員が潔白という可能性は低まってしまったとも思う。


 そして、確かに奴の言うように――言われたとおりに動くの癪だが――突入後は自分はバルトンが妙な動きをしないかをずっと意識せざるを得なかった。バルトンに関しては概ねいつも通りと言った印象であり、率先して前に立ち、パントエールを護っての立ち振る舞いをしている。

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