表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/46

美人広報、問い詰める


 何故、アルヴェイラ戦王国の第二王女が小僧たちの世界にいるのか、それが気になっている……そうじゃな?


 正直なところ、若干情報不足ではあるが、それでも考えつく可能性は三つほど。


 一つ、儂の知らぬ時空間関連の魔道式の確立。

 二つ、最上位存在[禁則事項に抵触]の関与。


 そして、三つ目。最悪の可能性。


 これは、二つ目と重なることじゃが……[禁則事項に抵触しています禁則事項に抵触しています禁則事項に抵触しています禁則事項に]……ふん、やはり、これが正解か。


 流れに沿わぬ「ネタ」を語りに紛れ込ませることを、この儂ができない時点で、状況はあまりよろしくないようだ。


 道理でのう……あやつらの誰かが、あそこまで強引に『介入』してきたのも頷ける。どうやら、難航しておるようじゃの。


 ま、話を戻そう。


 さて、アルカディア東京本社ビル62階の一室には現在、気持ち悪い男と「彼女」がいる。


 腰まで伸ばす漆黒の御髪を携えた彼女の背には、黒い翼と尾。その表面には手の平大の鱗。


 この中で注目すべきは、鱗が、人族の手の平大であるということ。これは、ある一つの種族の特徴と一致する。


 その種族とは——『竜種』。


 そして、その色が示すのは、彼女に流れる竜の血が『黒』に由来しているということ。


 ゼスラーミアの頂天たる竜と龍。その片割れたる原初の竜——『始竜』こそが、竜の始まり。


 始まりの竜から生まれ出でたる七つの仔、『七竜』。その中の『黒』の血が、彼女の中に流れているからこそ、彼女は名乗れるのだ——「アルヴェイラ」を。


 黒を名乗りし守護竜を国父とした王国の名こそが「アルヴェイラ戦王国」。建国から約900年、国王は代替わりしていない……どうやら、今もそのようだ。


 アルヴェイラ戦王国初代国王——『戦王』ヴァイザス・アルヴェイラ。


 又の名を、『黒のアルヴァイザス』。


 第二王女エリザ・アルヴェイラの父であり、その存在こそが、彼女の種族名を決定づける最大の要因。


 アルヴェイラ戦王国とは、黒き竜の戦士たちによって形成された武人の集団。


 したがって彼女もまたその一員であり、「竜人族 (ドラゴニュート)」と呼ばれる種族である。

 

「——阿久津、約束通り、例のアイテムの実装は見送りなさい。いいわね?」


「ふ、ふざけるなっ! アレにどれだけの金を注ぎ込んだと思って——」


「わたくしも『制作スタッフ』も、何度も止めたわよね? テイムに関しては慌てることはない、プレイヤーたちが気づくまで待つべきと」


「ぐぬぬ……」

 

 気持ち悪い男と第二王女、その両者の記憶をすり合わせることで、見えてくるものがある。


 実のところ、「メイガスメイズ初テイム成功者の出現」こそが、メイガスメイズ『運営』並びに『制作陣』双方の「直近」の方針に強い影響を与えるだけの事柄。


 そして、運営と制作陣、その両者の現在の状況は、「利権」と「厳格性」の対立という構図に、そっくりそのまま置き換えることが可能。


 利益か、エンターテインメント性か。


 そのどちらを追求するかのスタンスの違いが、この両者の違いという訳だな。


 つまり、第二王女は「制作陣」側である。


 さて、この気持ちの悪い男は、何やら画策していたようでな。事の経緯はこうだ。


 三ヶ月ほど前の公式配信にて、気持ち悪い男がテイムのやり方についてバラそうとしたところ、第二王女に咎められた。


 この気持ち悪い男が、そんなことをされればしょうもないプライドは傷つき、だからこそ憤慨しない訳もなく。


 だが、それ以降、何故か大人しくなっていた。無論、反省した訳ではない。


 いっそのこと、テイム自体を課金要素にしてしまおうと考えたらしく、行動を開始したのだ。


 そして、今から約一ヶ月前。

 気持ち悪い男が宣言したのだ。


「テイム専用の課金アイテムを一周年イベントに合わせて実装する」、と。


 それと同時に明らかになったことが、第二王女を含む「制作陣」を激怒させた。


 その内容とは、デバッグ要員を「制作陣」に許可を取らずに勝手に削り、課金アイテム制作を秘密裏に進行。


 その結果、表面上には見えにくい部分の「システムバグ」が蓄積していたのだ。


「パノラマシームレス」と呼ばれる技術を採用しているメイガスメイズにとって、リアルタイムで行なわれるライブデバッグ作業を欠かすことは自殺行為だそうだ。


 確かに、小僧も似たようなことを言っておったな——表面は綺麗、中身も裏側も隙間も結構ガバガバ、メイガスメイズも一応はパノラマシームレス、アレのデバッグを完璧にこなすなんてのはどんな大企業でも難しい、手抜きがあった、他にも面白そうな粗があるはず——だったかの。


 なるほど、小僧が指摘した「メイガスメイズの粗」とは、この気持ち悪い男が作りあげた状況という訳か……ろくでもないのう、マジで。


「一周年イベントは、レギオン関係だけでも問題ないでしょう……システムを歪めてまでテイムを簡単にすることは許しません」


「ふざけるなっ! ゆ、許しだと……この私が、私こそが、このゲームの支配者だ! 全てはこの私が決めるのだ、広報風情がこれ以上——」


「これは異なことを——」


 第二王女の身体の輪郭から漏れるように、『蒼い鱗粉』のようなものが放出される。


 それが何を意味するかを理解してるのだろう、気持ちの悪い男が途端に慌て始める。


「メイガスメイズは、携わる者たちで作りあげた『箱庭』であり、携わる者たちが対等に利を分け与えられるものだと理解しているのですが……阿久津、答えなさい。あなたはこのゲームの?」


「わ、私は……エグゼクティブ……プロデューサー……ただの、管理者だ……」


 ふっ、と、蒼い鱗粉が消失する。


「ええ、その通り。あなたはただの管理者。それも、資金の流れを管理するだけの立場」


「あ、ああ……」


「テイムは、例のプレイヤーを中心として、そのやり方などが検証され、プレイヤーたちが自ら見出していくことでしょう。わたくしたちは、ただそれを見守っていくのです。わかりましたね?」


「わかった……」


 用は済んだとばかりに、第二王女が部屋から出ていく……くっくっく、中々面白い見せ物であった。


「——けるな……」


 いや、まだ続くようじゃな。


「ふざけるなっ、化け物が‼︎ なんでっ、この私が! 貴様のような女に‼︎」


 第二王女が人の姿に戻りながら部屋を去った後、気持ち悪い男は癇癪 (かんしゃく)を起こしおった……精神年齢がガキのようじゃな。


「こ、このままで済むと思うな……」


 気持ち悪い男が、少々大きな指輪に触れ、手元に半透明で球状の何かを出現させる。


 儂も学んでおるでな、これは「スフィア型PC」と呼ばれておるものだな。


 この半透明な球でさまざまなことができるそうだ。例えば、インターネットや通話など。


 約10年ほど前から普及し始めたそうで、一昔前の「スマートフォン」なる物と同じような感覚で使われているらしい。


「……アスモ、頼みがある」


「どうした、随分と余裕がないじゃねえか」

 

 ふむ、どうやら誰かと話しておるようだな。粗暴という言葉をそのまま音にしたような、そんな声が聞こえてくる。


 それにしても、アスモなる人物……聞き覚えはないのう。


「徹底的に壊して欲しい奴がいる」


「毎度あり……で、どこのどいつだ」


「……オマエのところにも届いたはずだ」


「ああ、例のテイム成功者か?」


「そうだ……プレイヤー名、ヒナヒナ」


「どこにいる?」


「待ってろ…………まだルーファニア・パルにいる。あそこなら人目につきにくい。急ぎで頼む」


「あいよ。それにしても、オマエに目をつけられるとは可哀想な奴だ……なんせ、俺ら『GG』を敵に回すようなもんだからな」


「GG」か、何やら聞き覚えが……そうか、思い出したぞ。小娘の記憶の中で、この名前があったのう。あと、どこかのスレにも挙がっていたな。


 小娘の記憶を参照するならば、このGGなるクラン、メイガスメイズ四大クランと呼ばれるほどの勢力だったはず。


 それも、プレイヤーキルを躊躇うどころか率先して行なうタイプ。


 イメージとしては、山賊盗賊の部類か。


 確か正式名称は……『グレイグレイヴ』。


 どうやらこの気持ち悪い男は、弟がリーダーを務めるシルヴァン・エギルのみならず、グレイグレイヴとも繋がっているようだ。


 なんという癒着野郎……気持ち悪い奴よ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面白い・続きが読みたいと思った方は、ブクマ・ポイント評価お願いします! 励みになります!

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ