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009・連携VS連携の勝負です!


 ボス部屋の中はサッカーグラウンドみたいに広い空間で、部屋のあちこちに高さ2ユメヒコくらい(約3メートル)の石柱が立っています。


 そして、その中の一つの上に、今まで出てきたのより一回り大きくて赤い毛並みのヤギがいました。


 あれが、ボスヤギなのでしょうか。


「来るぞ」


 斎藤さんが少し前に出て構えます。

 ボクもグワァラゴワガキーンという当たりを目指してバットを構えました。


「メ゛ェェーーー!!」


 濁った鳴き声とともに、赤ヤギが大ジャンプ。ものすごい高さからこちらに向かって飛び降りてきました。


 た、高い!?


「斎藤さん!」


「おらあっ!」


 踏みつけるような前足に、スタンアッパーを合わせます。


 命中!

 しかし、スタンまでは入らず、赤ヤギは再び高所まで跳ね上がりました。


「クソっ、やっぱ空中じゃ効かねぇ!」


 近くの石柱の上に着地すると、また高く跳び上がって踏みつけにきます。


 今度は、深森さんのほうに来てます!


「ひっ!? こ、このっ!」


 眼力!

 しかし、これでも怯みません!


 なんで!?


【デバフの種類はランダムだから、怯まない時もあるんだ!】


「深森! ぐっ……!」


 斎藤さんが深森さんをかばいました。

 けど、アームガードまで発動が間に合わず、思いっきり蹴られてしまいました。


「さ、斎藤!? 大丈夫か!」


「これぐらいなら、なんとかな……」


 あ、今度はボクのほうに!

 えいやっ!


 バットをブンと振っても、スカッと空振りしました。


 ぴょいんっと跳び直してボクを踏もうとしてきたので、また斎藤さんがかばってくれました。


 ありがとうございます!!


「ぐっ、何度もはキツい……! 深森、なんとか動きを止めろ!」


「で、でも……」


 深森さんは、少し迷ったように言います。


「さ、さっきのマップ探査の目の痛み、あれって、他のスキルの時は大丈夫なのか? スキルを使うたびに、反動が来たりとか……」


「分っかんねぇよ、んなことは! けど、空中で殴っても力が逃げちまうんだ。まともにブチ込むには、動きを止めて地面に落とさねぇと!」


 なるほど、そうなのですね。


「では、ボクに任せてください」


「ユメヒコ?」


「ユメヒコくん?」


「深森さん。もし、またお目々が痛くなったら、ボクが痛いの痛いの飛んでけ〜、ってしてあげます!」


 なぜかお二人が、ポカンとした表情になりました。


「いやそれ解決になってねぇだろ!?」


「大丈夫です! ボクのってすごく効くって、クラスの皆が言ってますから!」


「アテにならないんだが!?」


 とかなんとか言ってる間にも、赤ヤギはぴょんぴょんと飛び跳ね、ボクたちと石柱の間を往復します。


 斎藤さんのところに来れば、アッパーで打ち返せるのですが、ボクや深森さんのところに来たら、かばってもらって斎藤さんが踏まれてしまいます。


 あわわ、このままだとペタンギュ〜にされちゃいます!


「深森さん!」


「深森ぃ!」


 ボクと斎藤さんの言葉に、深森さんはワナワナと体を震わせました。


「わ、分かったよ! やるよ! 僕だってこんなところで負けるのはヤだからな!」


 そうして一度目を閉じて深呼吸をすると、ギラッと目を光らせて赤ヤギを見つめました。


「メ゛ッッ!? メ゛メメッ!?」


【お、じっと集中してからの眼力だ!】


【スタンと、防御ダウンが2回入ったんだなもし】


 空中で動きが止まった赤ヤギは、そのまま地面に着地。


「ナイスだ、深森ぃ!」


 斎藤さんも、鉄拳からの右ストレートを使ったようです。

 淡く光る右拳で、ヤギの頭をガツーンとブン殴りました。


 ナイスパンチ!

 ヤギが真横に吹き飛んでいきます。


「……ちっ、仕留め損ねたか」


 赤ヤギ、脚がガクガクですが、倒れません。

 再びぴょんと跳んで石柱の上に逃げられました。


「けど、まだフラフラしてます! チャンスですよ!」


 あと、1、2回同じように殴れば倒せそうです!


 ……って、あれ?


「おい、アイツ石柱から降りてきたぞ」


「あんな遠くで何するつもりだ……?」


「メ゛ェエエエ〜〜〜!!」


 なんと、赤ヤギの毛並みが輝くような真紅になりました!


 そして、その場でものすごい速さの反復横跳びを始めます!


「な、なんだありゃ? あんな動き、初めて見るぞ!?」


 あまりの横跳びの速さに、真紅ヤギが3体に分裂して見えます!


 いや、あれは……!?


「はっ!? おいおいおい、ほんとに()()になってないか!?」


「メ゛ェェ〜〜!!」

「メ゛ェェ〜〜!!」

「メ゛ェェ〜〜!!」


 なんと、3体に分身したヤギが、それぞれ別の石柱の上に跳び乗りました。


 そして3体がバラバラに、ぴょんぴょんぴょんぴょん跳ね回るではありませんか!


 うわわ〜!?

 目が回ります〜!?


「このっ、おらっ!」


 斎藤さんが近寄ってきた一体を殴りますが、スカッと空を切ります。


 そして背後から降りてきた別のヤギにドカっと蹴られました!


「斎藤さん!?」


「ぐっ……、うおっ!?」


 斎藤さんが、3匹の真紅ヤギに袋叩きにされてます!

 なんてことを!


「このーっ!」


 ボクがバットを放り投げると、ヤギたちはぴょいんぴょいんと散り散りに逃げて、再び石柱の上に。


「メ゛ェェ〜〜!!」

「メ゛ェェ〜〜!!」

「メ゛ェェ〜〜!!」


 3匹ともが、ボクを睨んで鳴きます。


 良いでしょう。

 そっちがその気なら、ボクだってやってやりますよ。


 ボクは所持品の中から、隠し玉を取り出します。


 てってれれー、ピロピロ笛!


【一応それ、タゲ取り効果があるんやで】


「ピロロロロロロロ〜〜〜!」


 ボクは思いっきり笛を吹きながら、斎藤さんや深森さんから離れるように走り出しました。


「ユ、ユメヒコ君!?」


 たったか走っていくと、音に誘われたヤギたちがぴょんぴょんとボクを追ってきました。


「ほらほら、こっちですよ! ピロロロロ〜〜!」


 ボクは、先ほど投げたバットを拾いつつ、さらにヤギたちを引きつけます。


 そして、振り向きざまにえいやっとバットを振りました。


 スカッ!


 全然当たりません!

 ボクはズザーっとスライディングで踏みつけを避けつつ、何度かバットで殴りつけます。


 スカッ!


 スカッ!


 ぽよ〜ん!


「メ゛ェェーー!!」


「うひゃー! スライディング!」


 一回当たりましたが、さらに怒ったように踏んできたので必死で回避します!


「げほっ、げほっ……、クソヤギども、バカスカ踏みやがって……!」


「斎藤! 大丈夫か!? ユメヒコ君が!」


「はあっ!? あのバカ、また……! おい、戻ってこい! マジで死ぬぞ!」


 ボクはぴょんぴょん跳ね回るヤギたちをシャカシャカ、ズザーっと避けながら、お二人に手を振ります。


「助けてくださーい! やっぱりボクだけじゃ無理みたいです!」


「たりめーだろ!?」


「だから、みんなで勝ちましょう!」


「へっ!?」


 ふん、ヤギたち!

 3匹になったからって、そんなのが連携だってのはちゃんちゃらおかしいですね!


「ボクたち3人の連携のほうが上だってところ、見せてやりましょう!」


 ボクの言葉に、斎藤さんと深森さんが顔を見合わせました。


 そして、


「クソっ、やるしかねーぞ!」


「お、お、おう! ユメヒコくん、少しだけ待って!」


 斎藤さんがダッとこちらに駆けてきます。

 深森さんが、コルク弾生成を始めました。


『深森初月は「シュワシュワシャンパンコルク」「高級赤ワインコルク」を作成しました』


『深森初月は「シュワシュワシャンパンコルク」を装填しました』


「ユメヒコ!」


 斎藤さんがボクをかばいます。

 ドカっと蹴られましたが、踏ん張って殴り返しました。


 蹴ったヤギはぴょんと跳ねて避けましたが、


「メ゛ェェッ!?」


 ヤギが落下し始める一瞬を狙って、深森さんの狙撃が炸裂しました。

 真紅ヤギたちのうちの一体の頭に、コルク弾がパコンと当たります。


 慌てたように3匹は、それぞれ石柱に上がり、柱の上でぴょんぴょんシャッフルをしました。


 これではまた、どれが本体か分かりません!


「メ゛ェェ〜〜!!」

「メ゛ェェ〜〜!!」

「メ゛ェェ〜〜!!」


 再び3匹が入れ替わりながら襲ってきます!


「それで、隠れたつもりか……?」


『深森初月は「高級赤ワインコルク」を装填しました』


「よーく見れば、分身にはさっきの()()()()()()()()ぞ」


【動体視力のスキルで、見破ったか!】


 シャッフル中に次弾を装填した深森さんが、すぅーーっと深く息を吸いました。


「お前だ!!」


 ビタリッ、と1匹の真紅ヤギが空中で動きを止めました。


 そしてなんと、落ちてくるヤギの心臓あたりが、ぱああっと光りました!


【じっと集中して、眼力でスタンさせて、本体の弱点看破まで!】


【ハヅキ氏、フルスキルコンボなんだなもし】


「よくやった深森」


 斎藤さんが、右拳を光らせながら、ダッキングで踏み込みます。


 深森さんが、片膝立ちになって射的銃を構え、引き金に指を掛けます。


 ボクは、本体真紅ヤギの着地に合わせて言いました。


「いっけーー!」


「おらあっ!!」


 ぱぁんっ!!


 斎藤さんの右ストレートが、本体ヤギの心臓をドガッッと殴ります!


 それと同時に、深森さんが撃ったコルク弾が、バチコーンと本体ヤギの頭に命中しました!


「メ゛、メ゛ェェェ……」


 跳ね回っていた分身がふわっと消えました。


「やったか!?」


「斎藤それフラグ!?」


 大丈夫ですよ!


 3人で本体ヤギを見つめます。


 本体は……、ばたりと倒れ、そのまますぅーっと消えてマナ石になりました。


『ヤギダンジョンのクリア達成!』


『初踏破ボーナスとして、10連ガチャチケットを1枚進呈します!!』


 ほらね!

 ボクらの連携のほうが強かったです!


『特殊ボス、スケープゴートの撃破達成!』


『初撃破ボーナスとして、10連ガチャチケットを1枚進呈します!!』


 わっ、すごい!


 10連ガチャチケットが2枚も!!


【ガチャ最高♡ ガチャ最高〜♡】


【帰ったら全裸ガチャの時間だ、ユメヒコォ!!】


 やったね!!


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