010・やりすぎの代償と寿司パーティーです!
ボクはバットとメットをポイっと放り捨て、斎藤さんに飛びつきました。
「やりましたね、斎藤さん!!」
「ああ、なんとかな」
正面からぎゅーっと抱きつくと、カチカチ腹筋の頼もしさが頬に伝わってきます。
えへへー、素敵です♡
「まったく……。ほら、いつまでもくっつくな。離れろ」
むぎゅっと引き離されました。
それなら今度は深森さんのところに行きましょう。
「深森さーん!」
「わっ、わっ、ユメヒコくん!?」
深森さんにも正面からぎゅーっと抱きつくと、深森さんがワタワタと慌てます。
はぁぁ、深森さんはふわふわっと柔らかくて気持ちいいです……♡
「な、なにか失礼なことを思われてる気がする……!?」
「そんなことありません! 深森さんも、とっても素敵です♡」
「ほ、ほんと?」
「はい!」
「でへへ……。ユメヒコくんも、ナイスゲームだったよ。GG」
深森さんに、頭を撫でられちゃいました。
えへへ〜、嬉しいです〜♡
『ピロリン♫ 深森 初月の絆値が+1されました』
『絆値ボーナスとして、単発ガチャチケットを1枚進呈します!』
すると、後ろ襟をぐいっと引っ張られました。
「お前ら、まだダンジョン内だぞ。呑気に遊ぶんじゃない」
「遊びじゃないですよ!」
「そ、そうだぞ斎藤。僕たちは真剣に……!」
「あんまり長くいると、ボスによっては復活する奴がいるんだよ」
「さっさと出よう! 僕もう限界!」
それなら仕方ありません。
ボクはバットとメットを拾います。
ついでに、深森さんが最後に撃ったコルク弾も記念に回収したところ、深森さんが、
「なぁ。あと、外に出るだけなんだろ? 残ったMPで、マップ探査が一回できそう」
と言いました。
なるほど!
ボスって宝物持ってそうですもんね!
「うーん……。基本的には、倒したあとのドロップがあるからなぁ」
ちなみに赤ヤギは3000円分くらいのマナ石と、ヤギのツノをドロップしてます。
特にツノは、珍しいので高く売れそう、と斎藤さんも言ってました。
「いやほら、MP残しておくのも、もったいないしさ。それに、さっきの最後でいっぱいスキル使ったけど、別に反動は来なかったし」
「そうかもしれねぇけどよぉ……。無駄なリスクは避けるべきだろ?」
「お前って、意外と堅実なんだな……。ユメヒコくんは、どう思う?」
「やりましょう! だっていっぱい稼いだら、みんなで美味しいご飯を食べられますよ!」
ということで、折衷案としてボス部屋の隅にほわっと現れた魔法陣の目の前でマップ探査を使うことに。
何かあったらすぐに脱出できるようにして、深森さんがスキルを使います。
「むむむ……。お。あそこの石柱、中が空洞になってるぞ。宝箱があるっぽい」
「マジか。よし、パッと行ってくる」
どうやら何かありそうです!
やりましたね、深森さん!
「他には、なさそうかな……。さすがに同じ部屋に何個もは……っっ!? い、いたたたたたたたたたっ!?」
えっ!?
ど、どうしました!?
「み、右目が……!? 痛い痛い痛いーー!?」
深森さんが右目を押さえて座り込みました。
わわわ、たいへんです!?
「おーい! すごいぞ! 湧き出し水筒だ! これなら高く売れ……、おい、どうした?」
「斎藤さん! 深森さんが……!」
「ああ? ……クソっ、だから言わんこっちゃない。ユメヒコ、これ待ってろ」
ボクは斎藤さんから小さな水筒を受け取りました。
そして斎藤さんは深森さんの脇下と膝下に手を入れ、お姫様抱っこで持ち上げます。
「しっかりしろ、深森」
「斎藤〜〜……。右目が、すごくズキズキして……」
「とにかく出るぞ。ユメヒコも。一度アパートに戻ろう」
は、はい。
というかこれ、ひょっとしてボクがマップ探査をお願いしたせいでしょうか……?
そうだったらたいへんです。
ひとまず、ボクの部屋に来てもらいましょう。
こうしてボクたちは、最後は慌ただしく地上に戻ったのでした。
▶︎▶︎▶︎
アパートに戻って、ボクの部屋に深森さんを寝かせて2時間ほどたちました。
「な、なんとか見えるようになってきた……」
なんと深森さん、アパートに帰ってきてすぐは、右目が全く見えなくなっていたようでした。
半泣きで痛がる深森さんをボクのお布団に寝かせて、氷枕で冷やしてあげていると、少しずつ回復してきたようです。
「深森さん。これ、見えますか?」
ボクが親指と人差し指と薬指を立てると、深森さんは「3本だろ。見えてる……、え、何その指……?」と言ってくれました。
「痛みもほぼなくなったし、どうやら反動は一時的なものみたいだ」
「見えるようになって、本当に良かったです。……その、深森さん」
ボクは、深森さんに頭を下げようとしました。
けど、先に深森さんが手を伸ばしてきて、ボクの額を押しました。
「今回のは、僕が調子に乗ったのが悪かった。それだけのことだから」
「でも……」
「それに、痛くてちょっとビビったけど、目は見えるようになったし、結果的に良さそうなモノも手に入った。万々歳だって」
そうですか……。
それなら、そういうことってことですね。
「けど、もし本当は右目が見えてないとかだったら、その時はボクが一生深森さんの右目の代わりをしますので! 遠慮せずに言ってくださいね!」
「さすがにそれは重いだろ! いや、ほんとに大丈夫だから、大丈夫……」
とかなんとかやってると、マナ石の換金に行ってた斎藤さんがホクホク顔で帰ってきました。
「ユメヒコ、今日のアガリはスゲーぞ!! ……お、深森、目はどうだ?」
斎藤さんが、深森さんの右目側に回りながらそれとなく指を立てました。
「小指と人差し指だろ。大丈夫、見えてるから」
「みてーだな。まぁ、反省はあとで自分ですりゃーいい。ひとまず今は、探索の成功を喜ぼうぜ」
「うん」
「はい!」
「それなら発表だ。なんと、なんと今回はー……!」
なんと、マナ石とツノを合わせて5万5000円になったそうです。
すごい!!!
「マジ? 赤スパ以上じゃん」
「赤スパ?」
【配信の投げ銭のことだな】
【1回の最高額が、確か5万円なんやで】
「特にあのツノ、一対で4万だぜ! 折らずにドロップさせたのが良かったみたいだ!」
なるほど。
斎藤さんはボディと顔狙いで、深森さんの弾も額とかこめかみにしか当たってないですもんね。
だからツノが綺麗に取れたのでしょう。
「で、だ。今日の取り分は、まず1人1万ずつな」
斎藤さんが、ボクと深森さんに一万円札を渡してくれました。
ひえー、大金!
ちゃんと貯金箱に入れとかなきゃ!
「おいおい、さっきは5万5000円になったって言ってたじゃんか」
「慌てんなって。残りの2万5000は、これだよ」
斎藤さんが、部屋の外から何かを運び込んできました。
わっ!
お寿司だ!!
「ハマローの特上握り寿司セットだ!」
「マジかお前!? うわっ、ウニとか大トロとかもあるやつじゃん!」
「あとはビールとチューハイとジュースもだ。深森お前、飲めるか?」
「いや、甘いのなら飲めるけどさぁ……」
「じゃあこのサラットとかだな。俺はもちろんビール、ユメヒコはオレンジジュースな」
てなわけで、布団を畳んで寄せて、折りたたみテーブルにお寿司を乗せて。
3人で缶をプシュッとしたら、
「かんぱーい!」
ぐぐぐ〜〜っと缶をあおります。
「……プハーーッ! うめぇ! よし、寿司は早いもん勝ちな。俺マグロ」
「えっ、じゃあ僕サーモン」
「ボクはイクラが食べたいです!」
パクパクもぐもぐ。
3人で美味しいお寿司をつまみます。
「美味しいですね!」
「寿司なんて、いつぶりだっけか!」
「僕、実家出てから食べてない……。美味しいなぁ……!」
斎藤さんと深森さん、お寿司と一緒にお酒もぐびぐび。
2本、3本と缶を空にしていきます。
「深森ぃ! 次はもっとビビらず、ガツンといけよ!」
「う、うん!」
「お前もユメヒコも、俺がちゃーんと守ってやっからな!」
「頼もしいです!」
さすが斎藤さん。
酔ってきても頼り甲斐があります!
「そうだ、ユメヒコ! 深森の快気祝いだ! 脱げ脱げ!」
「えっ、おい、斎藤……!?」
あ、そういえば、10連ガチャチケットをゲットしてたんでした!
【全裸教!!!】
よーし、今度も良いモノ当てるぞー!
そういうわけでボクは、着ていたジャージをポイポイっと脱ぎ始めたのでした。
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