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008・ゲームお姉さん、ダンジョンで百面相です!


 深森さんが、目に見えて元気になりました。


 マナ石を拾ったボクたちは、さらに歩いて奥のほうに進みます。


「ま、まぁ、僕にかかればこれぐらいな? チョロいもんっていうか、楽勝っていうか、な?」


「すごいです〜!」


「僕にはゲームだけじゃなくて、探索者の才能もあっちゃったってわけな」


「おうおう、いきなり調子に乗ってやがるな」


「お! あっちのやつ、そろそろ弾が届きそうじゃないか? よーし、次は一撃で仕留めてやる……!」


 ということで、2匹目のヤギに狙いを定めた深森さん。


 発射!


「……ぎゃっ!? 外れた!?」


「怒ったヤギがこちらに!」


「あわわわわ……!?」


 慌てて次のコルク弾を装填する深森さん。

 しかし、なかなか装填が終わりません。


「ひえぇーーっ!?」


 メェーー、と鳴きながら、たったかたったかとこちらに駆けてくるヤギ。


 深森さんがなんとか弾を込めますが、しっかり構える前に弾がポンッ飛び出し、地面に刺さりました。


「うわーーっ!? もうダメだー!?」


「おらあっ!!」


 深森さん目掛けて飛びかかるヤギの横っ腹を、斎藤さんの右ストレートが打ち抜きました。


 ドゴンと重い音がしてヤギが殴り飛ばされ、そのままバタンキューでマナ石に。


「はわ、はわわっ……」


「おいおい、あれぐらいで腰抜かすなよ」


「斎藤さん、ナイスパンチ!」


「おう」


 マナ石を拾ったボクが斎藤さんに駆け寄って手を出すと、斎藤さんが嬉しそうにハイタッチしてくれました。


 それから、斎藤さんは深森さんの手を掴んで身体を引き起こすと、コケたときに投げ飛ばしていた射的銃を拾って渡します。


「ほらよ。次は、よく狙えよ」


「う、うん」


「なんだよ、その顔」


「……助けてくれて、ありがと」


 斎藤さんは、ハンッと笑いました。


「俺が前にいるんだ。必ず守ってやるから、ビビらずしっかり狙え。ちゃんと当てりゃあ、俺も倒しやすいからな」


「う、うん!」


「お二方、この調子でドンドン行きましょう!」


「あ、待って、ユメヒコくん。先に弾を作っとくから」


 なるほど。

 弾切れのままだと危ないですもんね。


『深森初月は「安物シャンパンコルク」「シャンパンコルク」「大特価ワインコルク」「ワインコルク」「上物ワインコルク」を作成しました』


「それでは、続けてレッツゴー!」




 そこから先は、深森さんの射撃が徐々に安定していきました。


 1匹ずつしっかり狙って撃つと、きちんと頭に当たります。


 で、ダメージを受けて落ちてきたヤギに斎藤さんがトドメ。


 ボクがマナ石を拾ってお二人の活躍を讃える、のサイクルですでに10体のヤギをマナ石に変えました。


「あっはははは! よーし、だいぶコツが掴めたぞ!」


 深森さんも再び元気です。


 万が一外しても斎藤さんがしっかり守ってくれるので、安心して2発目が撃てますし、近づいてくるヤギなら確実にコルク弾を当てられます。


「ここまででマナ石が12個。6000円分くらいですね!」


「まぁ、こんなもんだろ。まだまだ折り返しってとこだし」


 ボクと深森さんの少し前を歩く斎藤さんも、満足そうに頷きます。


「けど、一人あたりで2000円ぐらいか。これの倍でも4000円。うーん……」


「ここは最低難易度だからな。もう少し上のとこなら、一人頭で日当2万はいくぞ」


「おおー」


「その分危ないけどな」


「ええー……」


 深森さんの表情がコロコロ変わるので、見ていて楽しいです。


「おや?」


 ふと後ろを見てみると、10メートルほど後ろの道に、崖の上からピョインとヤギが降りてきました。


 ……え、そっちから!?


「メェ〜〜〜!」


「深森さん後ろ!」


「へっ? えっ!?」


 ヤギがぴょいんぴょいんと駆け寄ってきます。


「うおっ、こっちもか!」


 なんと、斎藤さんの目の前にもヤギが降りてきたようです。


 これでは斎藤さんのかばうが間に合いません!


 かくなる上は!


「てやーっ!」


 ボクはあたふたする深森さんの前に出ました。

 バットを振りかぶり、後ろのヤギをポコーンと叩きます。


 1ダメージ(たぶん)!


「メェ〜〜〜!!」


 ヤギは後ろに弾かれましたが、再び突っ込んできます。


 後ろに深森さんがいるので避けるわけにもいきません。


 ボクはむむっと身構えます。

 体当たり一回ぐらいなら、たぶん大丈夫でしょう……!


「ユメヒコ君! このっ、止まれ!」


「メ゛ッ!?」


 なんと、ヤギの動きが突然ビタッと止まりました。

 金縛りにあったみたいに、ピクピクしています。


「大丈夫か!? おらあっ!」


 そこに、前方のヤギを殴り倒した斎藤さんが戻ってきました。

 金縛りになったヤギにも右ストレートをボカリ。マナ石にしました。


「ん? なんか、変に柔かったな」


「わああー!? ユメヒコ君、だ、大丈夫か!? ケガしてないか!?」


「ボクは大丈夫です! 今のは、深森さんが?」


「え? なんか、えいって睨んだら、ヤギが動かなくなった」


【眼力の効果だな。ランダムでいくつかのデバフが入る】


【さっきのはスタンと、たぶん防御力低下も入ってたんだなもし】


「深森さんに、ヤギも恐れをなしたというわけですね!」


「そうかぁ? そういうスキルってことだろ」


「お役立ちスキルです! 深森さん、すごい!」


 ボクがパチパチと拍手をすると、深森さんは照れたように顔を赤くしました。


「よ、よせやい。けど、褒めたかったらもっと褒めても良いけどな!」


「すごいすごーい! さすが深森さんです!」


「そ、そう? でへへ……」


 斎藤さんが「だらしない顔で笑ってんなよな」と小さい声で言いました。


「ついでに、他のスキルも試してみる? たとえばこの、マップ探査とかどうなるんだろうな?」


「試してみましょう!」


「まぁ、今のうちに調べとくのもありか」


 ということで、試しに使ってみたところ、ボス部屋までの道のりの長さとか、この先で待ち構えているヤギたちとの距離とか、そういうのが分かるみたいです。


「あれ? なんか、そこの岩壁、変だぞ?」


 さらに、深森さんは岩肌を指差しながらそんなことを言います。


 試しに斎藤さんが叩いてみました。


「お、マジか。この奥、空洞があるぞ。オラっ!」


 右ストレート一閃!


 薄いベニヤ板みたいな壁が壊れて、奥に細い通路が伸びているのが見えます。


 3人でそろそろっと入ってみると、突き当たりの小部屋にはなんと宝箱が。


 カパッと開けたところ、なかなかの大きさのマナ石が入っているではありませんか。


【お、3000円分のやつだな】


 一月分のお小遣い!!

 大金です〜!


「やるじゃねーか深森。これは高値がつきそうだ」


「そうだろ! そうだろ! いやー、僕も何かありそうな予感がしたんだよなー」


「ほんとかよ。けどまぁ、稼げるんなら文句はねぇや」


 深森さん、すっかりルンルン気分のようです。


 いっぱい活躍してますからね。

 とっても頼もしいです。


 小部屋から出てさらに歩きます。

 途中何匹かヤギがいましたが、深森さんのヘッドショットからの斎藤さんのワンツーパンチで危なげなく退治できます。


「あっはっは! お、この辺はさっきの探査で目が届かなかったあたりだな! よし、もっかい隠し部屋見つけてやるぜー!」


「わーい!」


 ひょっとしたらまた宝箱があるかもしれません!

 楽しみです!


「むむむ! ……んー、見える範囲だと、小部屋はなさそう、かな?」


 あら、そうですか。

 それなら次に期待ですね!


「んーー、ボス部屋は、もうあと少しのところまで近づいてるかな……。他には……、っっ!!?」


 深森さんが、突然右目のあたりを手で押さえました。


「どうしました? 目にゴミが入っちゃいましたか?」


「いや、全然そんなことないんだけど……。なんか一瞬、目の奥がズキッとしたというか……」


 すると斎藤さんが「あー……」と言いました。


「それ、反動かもな」


「反動? なんですかそれ?」


「スキルによっては、効果の高さの代わりに何かしらデメリットがあったりするんだよ」


「デメリット……!? え、僕のスキル、あんまり使うと良くなかったりするのか?」


「詳しくは分かんねーけど……。使いすぎねーほうが良いかもな。戦闘不能になるタイプだと、進むも戻るも命懸けになるからな」


「ひええ……!?」


 なるほど。

 もし深森さんが倒れて動けなくなったりしたら、斎藤さんが深森さんを背負ってボクが前衛をするしかないですもんね。


 その状態で、来た道を逆戻りするのはたいへんそうです。


「では、さっさと進んでボスを倒してしまいましょう! そうすれば、外に出られますよね?」


「そうだな。最低限の稼ぎはあるし、深森がヘバる前に終わらせるか」


 ということで、先ほどまでよりも少し駆け足で道を進みます。


 ぴょんと降りてくるヤギも斎藤さんのグーパンチで薙ぎ倒していきますが、どうにも、深森さんのコルク弾が先ほどよりも当たらなくなりました。


「っ……!」


 なんだか、あんまり集中できていないようです。


 いっぱい見つめたから、目が疲れてきたのかもしれません。

 これは余計に、早くダンジョンから出ないとですね!


 そんなこんなで、ボス部屋前に着きました。

 斎藤さんはぐっぐっと肩周りを伸ばします。

 深森さんは青い顔のまま、射的銃を握り直しました。


 それでは皆さん、ご一緒に。


「とつげーーき!!」


『続きが気になる方は、いいね、ブクマ、評価、感想、レビューをお気軽にどうぞ。ユメヒコと作者の励みになります』

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