007・ゲームお姉さん、ダンジョンデビューします!
深森さんが、泣きべそをかきながら仲間になってくれました!
いぇいいぇーい!
「ううぅ……。やるって言っちゃったぁ……」
「それじゃあ、ボクの部屋にどうぞ!」
深森さんをボクの部屋に上がらせ、昨晩から深酒してまだ寝ていた様子の斎藤さんを、17連射ピンポン(出てきてデコピンされました)で呼び出します。
「ひぁ……!? ヤ、ヤンキー……」
寝起きで不機嫌な様子の斎藤さんに、急に挙動不審になった深森さんを紹介します。
「新しい仲間? ……そいつが?」
斎藤さんは、訝しげに目を細めました。
深森さんが顔を逸らして震えています。
「はい! 深森さんです! とってもすごいんですよ!」
「ふーん……。俺は斎藤。よろしくな」
「……えっ!? そんなすんなり認める感じ!?」
目が泳いで指先をモジモジさせていた深森さんが、びっくりしたような声を出しました。
「うるさっ……。なんだよ、急にデカい声出すなよ」
「いや、だって、……お前って、ヤンキーだろ? 僕みたいな、その、内向的なタイプのこと、絶対見下してくると思ったのに」
「隠キャって、そういう言い方があるもんなんだな。……別に、誰かれ構わず見下したりしねーよ。ケンカする度胸もないクセに裏でコソコソ陰口叩いたり、言ってることとやってることが違う、口先だけのやつなんかは嫌いだけどな」
「うぐっ……」
「それに……。ユメヒコ、お前はコイツを仲間にしたいんだな?」
「はい!」
「じゃあ、良い。ほら、手ぇ出せ。握手すんぞ」
「お、おおぉぅ。……って、ちからつよ……!?」
恐々と伸びた深森さんの手を、斎藤さんがガッチリ握って握手しました。
手を離したあと、深森さんが痛そうに手をさすります。
「んで? お前はなんで誘われたんだ?」
「へ? あ、えーっと……」
「深森さんはゲーム配信者なんですが、炎上したのです!」
「炎上?」
「その、実は……」
深森さんが、昨日からの話をたどたどしく説明しました。
斎藤さんは黙って聞いています。
「そんなわけで、ユメヒコくんに誘われたんだ」
「……あんまり細かいことは分かんねーけど。要はお前、ツラも名前も知らねー奴らにバカにされて、それでビビっちまったってことか?」
「うぐっ。そ、そうだよ」
「……気に食わねーな」
「そ、そんなこと言ったって、怖いものは、怖いじゃんか」
「あ? ちげーよ。お前じゃなくて、その荒らしとかいうカスどものことだよ」
「えっ……?」
「ツラも名前も出さずに、コソコソヒソヒソ人の悪口言うようなカス、俺は嫌いだ。それなら、自分の得意なことでカネ稼いでた深森のほうが、よっぽどマシだろ」
「う、うん……」
「だが、それはそれとして、お前がそんなカスの悪口にビビってるってのは、カッコつかねぇよな」
「ほ、褒めてるのか貶してるのか、どっちなんだよ」
「ああ、いや、悪い。貶してるつもりはねーんだ。……俺も、昔からのツレにバカにされてヤケ酒してたところを、コイツに誘われてな。そんで、一緒にダンジョンに潜ることにしたからな」
「え、お前も……?」
「ああ。そんで、そんとき俺は決めたんだ。絶対コイツとビッグになって、あいつらを見返してやろうってな」
斎藤さんが、じっと深森さんを見つめます。
「お前も、お前をバカにするカスどもを見返してーんなら、俺はお前に協力する。一緒にビッグになってやろーぜ」
「ボクも協力しますよ! 皆で力を合わせて、頑張りましょー!」
「う、うん……!」
「それじゃあまずは、深森は何ができるんだ? ユメヒコ、お前なら分かるんだろ」
それでは、メニュー機能を使いましょうか!
まず、編成コマンドで深森さんをパーティーに編成!
『UR:溟い熱視線・深森 初月を編成しました!』
「……えっ? ユメヒコくんの目の前に、急になんか出現したぞ?」
「ああ、気にすんな。なんかそういうもんらしい」
「いや、気になるだろ……。なんだこれ、ゲームのウィンドウみたいだな……」
「どうせユメヒコしか触れねーんだぞ。そんで、深森のジョブは何だ。それで見えるんだろ」
「えーっとですね」
・深森 初月 22歳
職業:睨めつく観測者・レベル1
「……が、……げ、めつく?」
「ねめつく、な。睨めつく観測者」
「う、うるせーな、ちょっと間違っただけだろーが」
「いっぱい見つめそうなカッコ良い名前ですね!」
「……で、何が得意なんだ?」
資質↓
知力:43
心力:26
技力:36
速力:15
筋力:9
体力:9
指揮官適正:41
幸運度:22
特性↓
・脊髄反射
・集中力
「知力が高い代わりに、筋力と体力が低いな……」
「し、仕方ないだろ。ずっと引きこもってたんだから」
「深森さんは賢いんですね! 素敵!」
「そんで、肝心のステータスは?」
ダンジョンステータス↓
HP:38 / 38
MP:130 / 130
攻撃力:16
防御力:22
魔法力:50
抵抗力:29
素早さ:26
スキル↓
・じっと集中する
・弱点看破
・眼力
・マップ探査
「レベル1のわりに、スキルが多いな。MPも最初から100超えか。後ろでスキルを回すタイプか?」
「けど、HPは低いですね。危ないのでレベルを上げておきましょう。ぽちぽちっと」
ボクは、ソウル(大)を2つ使って深森さんのジョブレベルを上げました。
『深森初月の睨めつく観測者がレベル7になりました』
『ジョブスキルとして、「動体視力」を修得しました』
深森さんのステータスがグンっと上がります。
職業:睨めつく観測者・レベル7
ダンジョンステータス↓
HP:56 / 56
MP:132 / 132
攻撃力:22
防御力:28
魔法力:74
抵抗力:41
素早さ:38
「おっ? おおおおおおっ!? な、なんかすごく体が軽くなったような……!? なんだこれ!」
「あー? ……あー、昨日のはそういうことか? ユメヒコお前、ジョブレベルまで上げれんのか?」
「上げられますよ! ジョブの変更、レベル上げ、アイテム装備までできます!」
「まんまゲームだな」
「そうでしょう! だから、深森さんにも合ってると思います!」
「あとは、装備か……? けど、このステータスだと完全に魔法タイプだよな。杖も魔導書もねーぞ」
「あ、これならありますよ!」
ボクは、深森さんに『縁日の射的銃』を装備させました。
『深森初月は「縁日の射的銃」を装備しました』
『アイテムスキルとして、「コルク弾生成」「コルク弾装填」「コルク弾発射」を修得しました』
スキル↓
・じっと集中する
・弱点看破
・眼力
・マップ探査
・動体視力
・コルク弾生成
・コルク弾装填
・コルク弾発射
「深森お前、銃とか撃ったことあるのか?」
「あるわけないだろ……。けど、FPSなら、まぁ、それなりに。ヘッショもよくする」
「なんだそれ」
「え? あー、銃のゲーム」
「それもゲームかよ……。けど、ないよりマシか」
「銃のゲームもできるんですか! すごい!」
「……ねぇ、斎藤。ユメヒコくんってさ」
「ああ。常にこんな感じだ」
「……そっかあ」
「あ! 縁日といえば!」
ボクは着替えコマンドを使って2人の衣装を変えてみることにしました。
斎藤さんには『お神輿法被セット』を、深森さんには『夏祭り浴衣セット』を着せます。
コマンドボタンをポチッと押すと、ジャージ姿だった2人の服がぽわんっと変わりました。
「あっ、お前また勝手に!」
「へっ? えっ、なんで急に服が!?」
「わー! 2人ともよく似合ってますよ!」
斎藤さんは額に捻りハチマキ、上半身はサラシを巻いてその上から真っ赤なハッピを着て、下半身はスパッツの上からフンドシ、足元は足袋と草履です。
汗を光らせながらお神輿担いでワッショイワッショイしてそうな雰囲気です。
深森さんは、ボサボサだった長い黒髪がポニテになっています。
浴衣は薄い水色に朝顔の柄で、足元はゲタみたいな可愛いサンダルです。
縁日デートでめいっぱいオシャレした女の人、って感じの雰囲気ですね!
「おい、勝手に変えるなっての! それに、今からダンジョン行くんだぞ! 恥ずかしいから元に戻せ!」
「は? 今からもうダンジョン行くの!? いや、それはそれとしてこの格好で出歩くのはさすがに……! というかなんだこの浴衣、なんでこんなに丈が短いんだよ……!?」
「え、どうしてですか? 今からボクも甚兵衛に着替えて、お揃い夏祭りコーデにしようと思ったのに!」
「……」
「……」
斎藤さんと深森さんが、無言で顔を合わせて頷きました。
「ユメヒコ。それはダンジョンから帰ってきたらいくらでも付き合ってやる」
「約束するよ。だから一旦元の服に戻して! こんな脚出した格好じゃあ外を出歩けないんだが!」
ちぇっ。分かりました。
けど、約束ですよ!
ということで、3人ともジャージ姿で装備だけ身につけて、ダンジョンに行くことにしたのでした。
▶︎▶︎▶︎
本日は、昨日の小鬼ダンジョンとは別のダンジョンにしました。
斎藤さん曰く、小鬼ダンジョンは近づかないと敵が出てこないので、射撃装備の人には向いてないのだそうです。
「ここなら、遠くからも狙えるだろ」
今回ボクらが来たのは、近所の公園のトイレの裏に入口があるダンジョンでした。
中に入ると、両サイドを崖に挟まれた谷底みたいなところに出ました。
「ここは、崖の上からヤギみたいな敵が降りてくるダンジョンだ。遠目で見たら、上のほうにいるのが見えるだろ。あれを先制で撃てる」
「斎藤さん、詳しいですね!」
「いやまぁ、この辺の低級ダンジョンは生活費稼ぎでよく潜ってたからな」
「ううー……、本当にダンジョン来ちゃった……。これ、死んだら終わりなんだよな……? ちょっとお腹が痛くなってきたんだが……」
深森さんが青い顔でお腹を押さえています。
「大丈夫ですか、深森さん?」
ボクは深森さんのお腹に手を当てて、優しく撫でてあげました。
痛いの痛いの、とんでけ〜。
「どわあっ!? いきなりお腹触ってくるのは反則だろっ!?」
「痛くなくなりました?」
「それどころじゃなくなったよ!!」
「痛くなくなったなら良かったです!!」
「お前ら、遊んでないで行くぞ」
「僕は別に遊んでないが!?」
「ボクもですよ!」
「はいはい」
こうしてダンジョン内をてくてく歩き始めました。
そして100メートルほど進んだところで、
「お、あのぐらいの距離なら、弾が届くんじゃないか」
「あのヤギ? ……けっこう遠くない?」
「深森さん、しっかり狙えばいけますよ! ファイト!」
「よ、よーし……。やるぞ」
ということで、深森さんは射的銃の準備を始めたのでした。
頑張れ、深森さん!
「ちなみに、外したらあのヤギ一気にこっちに来るからな。外すなよ」
「おい、プレッシャーかけるのやめろよぉ!?」
……頑張れ、深森さん!!
「まったく……。まずは、コルク弾生成!」
深森さんの手の中に、コルク弾が3つポンッと現れました。
コルク弾生成は、射的銃用のコルク弾を一度に2〜5個作るスキルのようです。
『深森初月は「安物シャンパンコルク」「安物シャンパンコルク」「お手頃ワインコルク」を作成しました』
「次に……、コルク弾装填!」
コルク弾装填は、手持ちのコルク弾から1つ選んで射的銃に装填するスキルです。
深森さんは銃口にコルクを刺すと、横のレバーをガチャンと引きました。
『深森初月は「お手頃ワインコルク」を装填しました』
「そして構えて、狙って……」
深森さんが、立ったままの体勢で射的銃を構えます。
やることが多いですね!
【ステップの多さは、射程距離を伸ばすためのシステムだ】
つまり射的銃は、コルク弾を作る、詰める、撃つで手順が多いぶん、遠くまで弾が届く仕組みみたいです。
「くっ……!」
深森さんは遠くの獲物に狙いを定めています。
緊張しているようですね。そうだ!
「てぇーっ!」
「うわあっ!?」
ボクが勢い付けようとして叫ぶと、びっくりした様子の深森さんの指が、そのまま引き金を引いてしまいました。
パンッ、とコルク弾が飛んでいきます。
「おい、まだ狙ってたのに……!」
「お、当たったぞ」
「……えっ?」
斎藤さんの言うとおり、深森さんが撃ったコルク弾は、真っ直ぐヤギのところに飛んでいくと、パコンッと頭にぶつかりました。
おおっ、ヘッドショット!
びっくりしても、銃の向きはブレなかったのですね!
「えっ? えっ? ほんとに当たった? というか、落ちたヤギがこっちに走ってきたぞ!?」
「倒し切れなかったみてーだな。だが足が遅ぇ、効いてるぞ!」
そのまま斎藤さんが前に飛び出し、駆け寄ってきたヤギにカウンターの右ストレートを叩き込みました。
「めぇ〜〜……」
ヤギはバタンとその場に倒れ、あとには大きめビーズサイズのマナ石が残りました。
【500円分だな】
ワンコインの命でしたか!
「お、おぉ……!」
「深森さん、ナイスショットです!」
「だよな! 僕、やったよな!」
「一発で当てるとはな。やるじゃねーか」
「は、ははははは!」
深森さん、楽しそうに笑っています!
この調子で、ガンガン行きましょう!
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