044・黒杉さん、矢をたくさんバラ撒いちゃいます!
「いや、黒杉サン。マジでウチらのパーティーに入るんスか??」
「ああ、よろしく。それとプリン頭のお前、さっきはいきなり殴って悪かったな」
「あん? まぁ、良いけどよ」
「なぁー。リーダーはアタイだってばー」
「赤松さんはエースなので大丈夫ですよ!」
「お? エース? ……おお! カッコ良いじゃん!」
「おい、赤松だけズリーぞ! それならアタイもだ!」
「アタイもアタイも!」
ということで、シグナルお姉さんズは前衛のエースということになりました〜。
いぇいいぇ〜い!
「エースなのに3人いて良いのかよ……」
深森さんが、疲れたようにツッコミました。
「まぁ、ほら。赤松さんたちもエースなのは本当だし」
「てゆーか、結局シラカバさんがリーダーなん?」
「ねーねー、話終わった?」
そのへんの掲示板をブラブラ見ていた翔子さんも、話が終わった気配で戻ってきました。
黒曜さんが呆れたようにため息をつきます。
「黒杉……。はぁ。もう良い。お前はそっちで勝手にやったら良いさ」
「おう。今まで世話になったな」
「……行くぞ、お前たち。……ワタシたちも、黒杉の代わりを探そう」
そう言って、黒曜さん率いる5人は、パーティー募集窓口のほうに行ってしまいました。
「で? こっからどうするんだ?」
斎藤さんが、残ったメンバーを見回して言いました。
「とりあえず、今から軽く潜ってみるか? ああ、その前に。マナポーションがあったら一本売ってくれよ。オレ、さっきの探索でMPが半分くらいになってんだ」
「じゃあ、これをどうぞ!」
ボクがマナポーション(低)を黒杉さんに渡すと、黒杉さんはぐいい〜っと一息で飲み干しました。
そして「なんか、普段より雑味が少ないな……」と呟きました。
「ありがとうよボウズ。これ、いくらだ?」
「分かりません! 買ったものではないので!」
「貰いモンなのか?」
「ガチャで当てました!」
「ガチャ??」
そんなことを言っていたら、白樺さんがおずおずと手を上げました。
「あのーー……。軽く潜ってみるというのは、もしかしなくてもウチらのパーティーとってことっスよね?」
「他に誰がいるんだよ」
「その……。深森のアネゴ! アネゴたちも、一緒に潜ってくれるんスよね!?」
白樺さんが、ダンボール箱の中の子犬のような目で深森さんを見ました。
ボクは答えます。
「はい! 白樺組とユメヒコ組で、皆でワイワイ楽しく潜りましょう!」
「良かった! それなら黒杉サン、よろしくお願いしまっス!」
といったところでボクは、編成待機ユニット一覧にある白樺さん(白ベレー帽を被ったゆるふわ茶髪お姉さんです)のアイコンと、
黒杉さん(黒髪ドレッドヘアで目つきが鋭いお姉さんです)のアイコンを、順番にタップしてみました。
・白樺 美紀 20歳
職業:祈祷師・レベル16
資質↓
知力:19
心力:30
技力:18
速力:17
筋力:17
体力:31
指揮官適正:25
幸運度:35
特性↓
・追従
・根性
ダンジョンステータス↓
HP:136/136
MP:122/122
攻撃力:36
防御力:62
魔法力:83
抵抗力:69
素早さ:40
スキル↓
・乗り込み連携
・祈りの言葉
・詠唱短縮
・詠唱追加
・対象増加
・棒で叩く
・黒杉 柑奈 25歳
職業:連弓兵・レベル20
資質↓
知力:22
心力:20
技力:36
速力:28
筋力:32
体力:33
指揮官適正:31
幸運度:20
特性↓
・短気
・即断即決
ダンジョンステータス↓
HP:113/154
MP:76/90
攻撃力:92
防御力:74
魔法力:26
抵抗力:49
素早さ:76
スキル↓
・応戦
・三連射
・駆け射ち
・数珠繋ぎ
・バラ撒き射ち
・射ち尽くし
・速射
・矢作成
おお〜、なるほど〜。
「黒杉さん、いっぱい矢を射てる人なんですね〜。素敵♡」
「特性が短気と即断即決。……まんまじゃねーか」
「スキルも、素早く射つことに特化してる感じか……?」
斎藤さんや深森さんと一緒にウィンドウを見ていると、黒杉さんが首を傾げます。
「お前ら、何を見てるんだ?」
「あ、そうでした。黒杉さんはまだ編成していないので、見えないんですね!」
そこで、白樺さんたちも編成してみようとしたところ、
『編成上限に達しています』
という表示が出て、編成できませんでした。
【ダンストは、最大6人編成のゲームだぞ】
【ユメヒコ含めて6人だから、5人編成したらそれ以上無理なんだよ】
そうなのですね!
つまり、ユメヒコ組は6人でマックスということですか?
【まぁ、そういうことやで】
【というか、本来ならユメヒコ氏は指揮官だから、編成にはカウントされないはずなんだなもし】
【そのあたりも、現実化した弊害なのかもな】
なるほど〜。
さて、黒杉さん。
「今から潜るなら、どのダンジョンにしますか? できればボクらは、今まで潜ったことのないダンジョンが良いのですが」
「ああ。さっき潜った蛇ダンジョンに再チャレンジでも良いんだが……。ここは、猿ダンジョンにしようか」
ということで、ボクらは黒杉さんの案内で猿ダンジョンに向かったのでした。
▶︎▶︎▶︎
猿ダンジョンの入口は、とあるゲームセンター内のプリクラ機が並んだ一角にありました。
ダンジョン内に入ってみると、少し先にモサモサと生い茂った雑木林があり、その中に道が続いているのが見えました。
「ここは、基本的に一本道タイプのダンジョンだ。木に隠れた猿どもが樹上から襲ってくるから、それを返り討ちにしてマナ石を稼ぐ」
「ヤギダンジョンみてーなタイプか」
「いきなり出てくるのか……。先にコルク詰めとこ」
鉄腕ナックルをガチンと打ち鳴らす斎藤さんに、射的銃の準備をする深森さん。
ナナさんもイナリ様を呼び出し、露璃さんも水筒から水を出しました。
翔子さんはボディスーツとスコップ装備で、早くもぴょんぴょん跳ねています。
「へへへー! やっとダンジョンだー!」
「うおっ。朝倉、なんだその跳ね方」
斎藤さんが、元気にぴょんぴょんする翔子さんを見て驚きます。
そして深森さんは、ナナさんのイナリ様に目を奪われているようでした。
「金色チビキツネ……!? う、うわぁ、可愛い……!!」
「やばいっスね、アネゴ……!!」
イナリ様が深森さんと白樺さんの間をふよふよ飛んでいる横で、黒杉さんが弓を構えます。
「本当は、どんどん進みながら出てくる猿と戦うんだが、」
そして、無造作に矢を一本、雑木林に向けて撃ちました。
矢は、雑木林の中に飛び込んで見えなくなり、それから少しして、
「ウキーーー!」
と、お尻に矢が刺さった猿が雑木林から飛び出してきました。
「お、敵だ」
「一体だけか?」
「オラ! こっちだ!」
黄梅さんが棍棒で盾を叩いて猿を引きつけます。
ぴょいんと盾に飛びついてきた猿を、青竹さんと赤松さんが左右から攻撃してあっという間にマナ石に。
「先にここで数を減らしておくと、進むのが安全になるんだ」
黒杉さんがぴゅんぴゅんぴゅんと矢を射つと、その度に矢が刺さった猿が出てきます。
それを、黄梅さんが呼び寄せて受け止めて、青竹さんと赤松さんで素早く倒すというのを繰り返しています。
「……あれ!? キツネと遊んでる間にもう戦闘始まってる!?」
「ほんとだ!?」
ようやく戦闘開始に気づいた深森さんと白樺さん。
そして赤松さんたちから数メートル離れたところでは、斎藤さんと翔子さんが一緒に並んで猿の相手をしています。
「シッシッ、おらあっ!」
「えーいっ!」
斎藤さんのワンワンツーパンチで猿が吹き飛び、そこに翔子さんがぴょーんと飛びかかってスコップでザクっとトドメを刺しています。
「朝倉ぁ! お前の動き見てたら酔いそうだ!」
「斎藤っち! パンチ超速じゃん! すごい!!」
その間にも黒杉さんは次々と矢を雑木林の中に撃ち込んでいき、出てきた猿を斎藤さんたちと赤松さんたちが手分けして倒していきます。
おお〜〜!
皆さん、強いですね!
「いや、いきなり大量に呼びすぎだろ……!? あ、こっち抜けてきそう! えいっ!」
深森さんがパコンと撃ち、動きの止まった猿の顔に水球が纏わりついて溺れさせます。
「んー、イナリ様。御神籤、一回ゴー!」
「コンコーン!」
出てきたのは、全体防御バフの小吉でした。
皆さん全員にバフがかかり、これでさらに安全に倒せますね!
「げ、しょっぱい効果の奴じゃん。アタシも前に出たほうがいい?」
「いや、白樺ちゃんとか善野ちゃんのガードしてくれるほうが、嬉しいかな……!?」
深森さんが慌ただしく射的銃を撃ち、白樺さんは黒杉さんの矢の速さに驚いています。
「く、黒杉サン……!? 矢、いつまで撃つんスか!?」
「おう、もうすぐ矢筒の矢が尽きるから、そうなったら一度止めるよ」
「探索開始5分で矢が尽きるんスか!?」
「心配しなくても、尽きたら矢作成のスキルで補充するって」
「ひええー!?」
結局、猿を30体ほど倒したところで黒杉さんの矢が尽きて、一旦打ち止めになりました。
ボクは、ウキウキで落ちているマナ石を拾い集めます。
【これは、一個で1000円くらいのやつだな】
【ほんの10分くらいで3万円と考えたら、まぁ稼げるほうか】
「ちょ、ちょっと、集合ーー!!」
おや。
深森さんが、いつになく大きな声で皆さんを集めます。
そして、なんだなんだと集まった皆さんの中にいる黒杉さんを、ビシッと指差しました。
「お前! 探索開始からたった10分で、さっき揉めてた理由を分からせてくれてありがとうな!!」
「それほどでもねぇよ」
「褒めてないんだが!?」
そして深森さんは、大きく3回深呼吸すると、
「……お前が、そっちの三馬鹿たちと似たタイプだってのは分かった。ウマが合いそうだし、たぶん組んだら楽しく探索できるだろうよ」
「ああ。コイツら、見た目はアレだがノリが良いな」
黒杉さんが上機嫌で言うと、赤松さんたちも嬉しそうに鼻を擦りました。
「けど、そのパーティーを指揮するのは白樺ちゃんだ。次は、白樺ちゃんの指示に従ってみろ」
すると、黒杉さんは首を傾げます。
「……白樺は、さっきの戦闘で何か指示を出してたか?」
深森さんはスンと無表情になり、斎藤さんに目線を向けました。
「はいはい。……なぁ、黒杉」
「なんだプリン頭」
「悪いことは言わねーから、次は言うこと聞いてみろ」
「なんでだ?」
「じゃないと……、白樺が、泣くぞ」
「泣く?」
「保育園児みたいに」
「ええ……?」
黒杉さんは、斎藤さんと深森さんの顔を交互に見比べたあと、白樺さんを見ました。
白樺さん、アワアワし過ぎて涙目になってますね。
赤松さんたちも「白樺泣かすのはなぁ……」みたいに頷き合っています。
「……しょーがねーな」
黒杉さん、両手を上げて降参のポーズです。
それなら次は、白樺さんの指揮で行ってみましょう〜!




