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004・ご褒美10連ガチャの時間ですよ!


 少し歩くと、再び黄緑色の小鬼が現れました。


 よーし、今度こそやっつけてやりますよ。

 先ほどのボクの仇は、今のボクが討つのです。


「つってもよぉ。さっきの今で、何か策はあるのかよ」


 斎藤さんが心配そうに言います。


「ふふふ。大丈夫です。先ほどボクは、小鬼を叩くことはあっても叩かれることはありませんでした」


「お、おう」


「なので、一発ももらわないまま、倒せるまで叩き続けるぞ作戦です!」


「単なるゴリ押しじゃねえか!? 作戦でもなんでもねぇ!」


 けど、これが一番シンプルで確実なんですよね。


 敵は、死ぬまで殴れば死ぬんですよ。

 だから死ぬまで殴り続けます。


「……まぁ、カラオケマイクでも無理やり殴りまくったら倒せないことはなかったし、不可能ではないのか……?」


【ダメージ計算式的に、なんぼカス攻撃力でもスキルで攻撃すれば1ダメージは入るはずやで】


 つまり、『棒で叩く』のスキル攻撃なら、いずれは倒せるということですね!


 というわけで、とつげーき!


 ボクはたったか走って小鬼に近づき、スキルの発動を意識しながらバットを振り下ろします。


 ポコン。1ダメージ(たぶん)。


 ブンッ! ぴょいんと回避!


 ポコン。1ダメージ(きっと)。


 ビュンッ! シャカシャカ回避!


 パコォンッ!


 あ、良い音!

 小鬼がグラリとヨロけています。


【クリティカルだ! 怯んだからもう一発!】


 はい! えいっ!


 ポコン。1ダメージ(おそらく)。


 ブンッ! スレスレ回避!


 ポコン。1ダメージ(めいびー)。


 ブォンッ! 全力回避!


 パコォンッ! クリティカル!


 チャンス!

 ……あ、怯んでない!?


「グギャア!」


 てっきりまた怯むかと思って振りかぶっていたので、回避できそうにありません!


【クリ怯みは、発生率3割なんやで!】


 や、やられる……!?


「ユメヒコ!」


 すると、斎藤さんがバッと飛び込んできて、棍棒をガチンと受け止めました。


【かばうとアームガードのスキルコンボだな】


 そして後ろ回し蹴りで小鬼を蹴り飛ばそうとして、


「っ!」


 小鬼の顔面スレスレで、ピタッと足を止めました。

 小鬼は驚いて後ずさりします。


「あっぶね、倒しちまうとこだった」

 

「さ、斎藤さん」


「おら、まだアイツは立ってるぞ。お前も立て。倒すんだろ」


「!」


 ボクはパッと立ち上がると、ヘルメットの角度を直します。


「任せてください。特大ホームランを打ってやりますよ」


「どっちかっつーと送りバントだろ。お前のは」


 スクイズバントでも1点は1点だから良いんですよ!


「ええーーい!」


 ポコン。1ダメージ(一塁到達)。


 ブンッ! スライディング回避!


 ポコン。1ダメージ(二塁到達)。


 ブォンッ! スライディング回避!


 ポコン。1ダメージ(三塁到達)。


 ビュンッ! スライディング回避!


「これで……! サヨナラです!」


 パッコォォンッ! クリティカル!


 小鬼は……!?


「……グギャアァ」


 グラ、グラ、とヨロけると、そのまま小鬼はバタリと倒れて動かなくなりました。


 そしてスゥーッと消えていき、小さなマナ石と、木の棍棒が残りました。


「ホームイン、です!!」


『初撃破ボーナスとして、単発ガチャチケットを1枚進呈します!』


『初落得(ドロップ)ボーナスとして、単発ガチャチケットを1枚進呈します!』


 やりました!

 ウィンドウもボクを祝福してくれています!


「斎藤さ〜〜ん!」


 喜びのあまりボクは、バットとメットを放り捨てて斎藤さんに飛びつきました。


「ボク、やりましたよー!」


「よしよし、よく頑張ったな」


「……えへへへへ♡」


 斎藤さんに頭を撫でられちゃいました。嬉しい♡

 ボクはさらにギュッとします。


「おいお前。……まぁ良いか。今だけだぞ」


「斎藤さん、優しい♡ それに、先ほどは助けてくれて、ありがとうございました!」


「おう。まぁけど、今後はやっぱり前に出るな。なるべくな」


「えー?」


「見ててハラハラする。もう少しレベルとステータスが上がるか、少なくとも、新しい装備品が手に入るまでは大人しくしとけ」


「ちぇっ。けど、はーい」


 斎藤さんをハラハラさせるのは本意ではありませんので、そういうことにしておきましょう。


「いずれはボクも、もっと強くなりますからね!」


「ああ、期待してるよ」


「……斎藤さん♡」


 ボクが再び斎藤さんをギュッとすると、「あんま調子にのるな」とデコピンされちゃいました。ぴえん。




 ▶︎▶︎▶︎


 さてさて。

 そのまま奥まで進んだところ、長い廊下の突き当たりには豪華な扉がありました。


 学校の校長室より豪華です!

 これはまさか、ボス部屋というやつでは?


「そうだな。ここは確か、ハイゴブリンだ」


「それでも小鬼なんですね。それならボクでも勝てるのでは?」


 斎藤さんがボス部屋の扉を押し開けます。

 2人で中に入ると扉が閉まり、奥の椅子に座っている深緑色の小鬼が、ずももっと立ち上がりました。


 ……小鬼?

 なんか、ボクより大きいような……?


「ボスなんだから今までの奴らより強いに決まってるだろ」


 なるほど。

 確かに、よく見てみれば持っている武器もトゲ付きの金棒になっていますね。

 あれで叩かれたら、さすがに痛そうです。


「……グギャオ」


 あ、突然ボス小鬼が素振りを始めました!

 あれは、一本足打法……!?


 ブン、ブンと金棒を振る姿は、メジャーリーグのホームラン王を彷彿とさせます。


「なんでアイツまで野球スタイルなんだよ……」


「ボクも負けずに素振りしたほうがいいですかね?」


「しなくていいだろ!? ……まったく」


 おもむろに斎藤さんは、ボス小鬼に歩み寄ります。

 ボス小鬼はそのままブン、ブンと素振りを続けています。


 そして、両者の距離が近づいたところで、


「グオオッ!」


 突然ボス小鬼が深く踏み込み、バットスイングで斎藤さんに殴りかかります!


「斎藤さん!」


 しかし、斎藤さんの踏み込みのほうが鋭かったです。


 斎藤さんは、スイングの下を潜るように頭を下げて踏み込み、ボス小鬼の懐に入りました。


「そこです!」


「オラあっ!」


 至近距離からの左アッパー!


 ボス小鬼のアゴに命中し、ブサカワな顔がカチ上がります。

 そして、全身がビリビリと震えました。


【スタンアッパー! 怯んだ!】


 ボス小鬼の顔面がガラ空きです!

 大チャンス!


「これで……!」


 斎藤さんの右拳が、ぼわっと光りました。

 そして腰溜めに右拳を引きます。


「いっけー!」


「終わりだ!!」


 見事な正拳突きが、ボス小鬼の顔面を打ち抜きました。


 ドゴンと骨まで響く音が鳴り、ボス小鬼が吹き飛びます。


【鉄拳からの右ストレートだ】


【MP消費は激しいけど、スキルコンボは強力なんだな】


 そのままボス小鬼は消え去り、おはじきサイズのマナ石だけが残りました。


『ゴブリンダンジョンのクリア達成!』


『初踏破ボーナスとして、10連ガチャチケットを1枚進呈します!!』


「うほおおおおおぉーーーーっ!!? 斎藤さん、めちゃくちゃカッコ良いーーー!!!」


 すっかり興奮してしまったボクは、斎藤さんの背中にぴょいんと飛びつきました。


「やりましたね斎藤さん!! すごい! カッコ良い! 素敵!!」


「ははっ、やったなユメヒコ」


「やっほぉぉーーい!!」


 しかも、また10連ガチャチケットが手に入りました!


 これでまた10連ガチャが回せちゃいます!!


【ガチャ最高♡ ガチャ最高〜♡】


「ありがとうございます斎藤さん! 斎藤さんのおかげでボク、幸せです!」


「何言ってやがる、全部お前のおかげだろ」


「斎藤さんに謙遜なんて似合いませんよ!」


「……ばーか」


 こうして、ボクと斎藤さんの初ダンジョン探索が終わりました。


 そのあとは、ボス部屋の隅にほわっと現れた魔法陣を踏むと、パッと入口前のビル地下通路に戻りました。


 外はすっかり夕方だったので、斎藤さんと一緒に近くの中華料理屋でラーメンを食べました。


 味噌ラーメン、勝利の味がして美味しかったです。


 そして2人でアパートのボクの部屋に。


【全裸教!!!】


 それではこれより、10連ガチャの時間です!!


 ボクは、ワクワクしながら着ていたジャージを脱ぎ始めました。


 するとどうでしょう。

 斎藤さんが、自分の部屋から持ってきて飲んでいた缶ビールをブッと噴き出したではありませんか。


 わっ、汚い。


「お、おい、ユメヒコ!? なんで突然脱ぎ出したんだ!?」


「なんでって、ガチャは全裸で回すものだからですが?」


「意味分かんねぇ!? おい、脱ぐのやめろ!」


「やめません!」


 ボクは全裸教の教えに従った正装になりました。


 うーん、開放感。

 やっぱりクセになりそうです♡


「せめて後ろを向け!!」


「何をいまさら。斎藤さんはもうボクの全てを見てるじゃないですか!」


「それは忘れろって言っただろぉ!!?」


 仕方なくボクは、斎藤さんに背中を向けてガチャを回しました。


「ポチッとな!」


 どぅるるるるるるるるるるん♫


 という楽しいメロディのあと、ウィンドウ上に次々とカプセルが表示されます。


 ポンッ、緑!

 ポコンッ、銅!

 ポンッ、緑!

 ポコンッ、銅!

 バシュンッ、銀!

 バシュンッ、銀!

 ポンッ、緑!

 ポンッ、緑!

 バシュンッ、銀!


 ときて、最後の一つは、


 ゴロゴロ、ドンッ!!


 という雷のエフェクトとともに、キラキラと金色に光るカプセルが現れました。


「やった! また金カプセルだ!」


 ボクのワクワクは最高潮です!


 低レアのものから順番にタップしていくと、


 緑カプセルからは、

『消費:マナポーション(低)』

『消費:ライフポーション(低)』

『装備:ピロピロ笛』

『装備:膝サポーター』


 銅カプセルからは、

『衣装:夏祭り浴衣セット』

『衣装:お神輿法被セット』


 銀カプセルからは、

『消費:ソウル(大)』

『消費:ソウル(大)』

『装備:縁日の射的銃』


 そしてそして、金のカプセルからは、『採用:???・深森 初月(はづき)』と書かれたチケットが出てきました。


 やった、また採用チケットゲットです!


 とりあえずボクは斎藤さんに配慮してパンツだけ履き直し、金チケットに意識を向けて手の中に呼び出します。


「なんだそれ、チケット……?」


 訝しむ斎藤さん。

 ボクは、元気良くビリリっとチケットを千切りました。


 すると、どこかからガチャ、ガチャという音が微かに聞こえたかと思うと、




「あんぎゃああああああああああああああああっ!?」




「っ!?」

「なんだ、隣か?」


 斎藤さんとは反対側の隣の部屋から、突然女性の悲鳴が聞こえてきたのでした。


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