039・アタルお兄さん、頑張らないことを頑張りましょう!
颯太君を連れた発橋お姉さんを探してみたところ、統括局の窓口がある役場と同じ敷地内にある図書館の、絵本コーナーにいました。
そこで発橋お姉さんに事情を説明し、颯太君を肩車して統括局に戻ります。
そして自販機とベンチテーブルの並んだところで、お互いに自己紹介をしてもらうことに。
「こほん。ボクはユメヒコです!」
「いや、それは知ってる」
「こちらのパーマ髪のお姉さんが、発橋さん。隣の男の子は、発橋さんの息子さんの、颯太君です」
「よろしく。で、坊やが私に紹介したいのは、この子たちなのかい?」
「はい! こちらは、アタルお兄さんです。隣に座っているのは東野さんで、後ろの3人と一緒にパーティーを組んでいるのです」
「初めまして。えーっと、ユメヒコ。こちらの発橋さんを俺たちに紹介して、どうしたいんだ?」
「はい、実は、カクカクシカジカで、発橋さんはどこかのパーティーに加入したいそうなのです」
「そちらの兄さんたちのパーティーに、私を、ということかい? それはまた、どうして?」
ボクは、先ほどの探索を見ていて思ったことを伝えることにしました。
「アタルお兄さんのパーティーは、アタルお兄さんがいっぱい頑張って探索をしていて素敵だな、と思いました。けど、アタルお兄さんが頑張らないことを頑張れるようになったら、もーっと素敵だと思いました!」
「……?? どういう意味だ……? 俺が、頑張らないことを、頑張る……? いや、普段から頑張らずにいることなんて、ないと思うんだが……?」
「いえ! 自分で頑張らない、ってことを、頑張るということです!」
「……??」
「あと、そうしたほうが、東野さんももっと楽しくなれると思いました!」
「わ、私……?」
「はい! そのためには、発橋さんがアタルさんたちのことをよく見てあげるのが良いと思いました! だから、皆さんに集まってもらいました!」
発橋さんが「うーん……」と額に手をやりました。
「つまり、なんだ。そっちのアタル君というのは、常に頑張っていると?」
「はい! いっぱい、いっぱい頑張ってるんだと思います!」
「……あー、そうか。つまり坊やは、アタル君が抱え込み過ぎだって言いたいのかい? ……なるほどね。それならアタル君。ひとつ聞かせてほしいんだけど」
「なんでしょう?」
「君は、そちらのパーティーのリーダーなんだよね?」
「まぁ、一応……」
「それならもちろん、自分が戦闘不能になった時には、誰がリーダーを引き継ぐとか、そういうことは考えてあるんだろう?」
「え? ……いや、……えぇっ?」
キョトンとした表情になったアタルお兄さん。
北海さんと南郷さんも、同じ表情です。
それを見た発橋さんは、「そうだよねー……」と思案顔になりました。
「……おかあさん?」
「ん、ああ。どうした颯太?」
「おなか、すいた」
「ああ、そうだよね。……そうだね」
発橋さんは、颯太君の頭にポンと手を置きました。
「颯太。今日は、カレーパーティーにしようか。……せっかくだから、君たちも一緒にどうだい?」
「へ? ……俺たちも、ですか?」
「うん。君たちのパーティーに合流するとかどうとかは別にして、まずは親交を深めよう。坊やたちも、どうだい?」
「良いですね! ボク、カレー大好きです!」
「それなら、皆でスーパー寄って帰ろうか」
「はい!」
「おー」
ということで、発橋さんや颯太君と一緒に、困惑してる様子のアタルさんたちや、
お母さんに許可をもらった露璃さんたちを連れて買い物をし、発橋さん宅にお邪魔しました。
発橋さん家、一軒家です!
すごい!
「私のおっ母は一戸建て至上主義でねぇ。おかげで今も仕事やめらんなくて、毎日ヒーヒー言ってるよ」
「ばぁば、おかねがだいすきなの」
「なるほど〜! お金って、大事ですもんね! ボクたちも、家賃を毎月50万円払わないといけないんで、頑張らないといけないんですよ〜」
「え。ユメっちって、そんなすごいとこに住んでるの?」
「50万……? え、まさか、あのマンションで2部屋借りてんの……?」
「う、うん。斎藤さんたちの部屋も一緒に借りてるから」
「それ……、初期費用だけで100万超えない? どうやってそんなお金用意したん?」
「ユメヒコ君が、ルト6当てて……」
「ユメっち、すげ〜!!」
さて、買い物袋をキッチンに置いて、皆でレッツクッキングです!
調理担当は、発橋さん、東野さん、西嶋さん、露璃さん、そしてボクの5人です!
「え。キミ、料理とかできるの?」
「少しだけなら! あ、ボク、ジャガイモの皮をむきますね〜」
いっぱい買ってきたジャガイモの皮を、新しく買ってきたピーラーでむいていきます。
「あ、ちゃんと丁寧にむいてる」
「じゃあ私、野菜を切るね」
ボクが皮むきしたお野菜などを、露璃さんがどんどん切っていきます。
「私は急いで米を炊くところからだねぇ。そっちの黒髪の……、東野ちゃんだっけ。すまないけど、お肉とタマネギから順に炒めておくれ」
「は、はい」
カレーとサラダだけだと物足りないので、大量の卵とブロッコリーを茹でて刻んでマヨとハムで和えた、ブロ玉サラダと、
すももやりんごなどを細かく切って発橋さんの自家製ヨーグルトに入れたものと、
お豆腐とほうれん草の白和え、きゅうりの酢の物なども作っていきます。
「あーにぃ、これもってて」
「え、クレヨン?」
「うん、おてがみかく」
アタルさんは、颯太君に手伝いを頼まれて一緒にお絵描きをしていますね。
七奈さんと翔子さんは、タダ飯は悪いからということで、家の周りの草むしりをしています。
北海さんと南郷さんは、アタルさんと一緒に颯太君のお相手ですね。
「きんねぇも、めがねぇも、これあげる」
「なんだこれ、ビー玉か……?」
「わたし、メガネをかけてるから、めがねぇってこと?」
「てれびもはじまるよ」
「アパパンマンって、こんな時間にやってるのか?」
「録画でしょ。それかマイチューブ」
そうして、しばらく皆でご飯を作ってー……、
「それでは皆さんご一緒に。いただきまーす!」
カレーパーティー、開始です!
一口パクリ。
美味しいー!!
「カレー、とっても美味しいです〜!」
「隠し味でコーヒー牛乳が入ってるんだって」
「ほんとだ。なんていうか、味に深みがある」
「パクパクパク! おかわり!!」
翔子さん、すごい速さで一皿平らげて、おかわりをもらいに行きました。
「ショーコ、食べるのも早いん……?」
「パクパクモグモグ! パクモグモグ! おかわりー!」
「もうっ!?」
「翔子さん、よく噛んで食べようね……?」
サラダも美味しいですし、小鉢の副菜も美味しいです〜♡
「あむっ。あむっ……」
「あ、颯太君。お鼻にカレーが」
「ん。あーにぃ、ふいてー」
「俺が? はいはい、ちょっと動くなよー」
アタルさんが、颯太君のお顔をティッシュで拭きました。
それから、スプーンとフォークを持ち替えさせて、ブロ玉サラダを食べさせています。
「くそっ。ぴょんスケに負けるか。ワタシももっと食べるぞ!」
「北海。そこで張り合ってどうするの」
「うるさいぞ南郷! それに、このカレーは本当に美味しい」
「またまたおかわりー!!」
「ぐっ……!?」
七奈さんや翔子さん、颯太君やアタルさんたちはリビングのテーブルで食べて、ボクたち調理班はキッチンのダイニングテーブルで食べてます。
あ、西嶋さん。
コップが空ですね。
お水をつぎますねー。
「うん、ありがとう。……キミ、本当に色んなところをよく見てるね」
「はい! だって、いっぱい見たほうがいっぱい楽しいですから! あと、ボク、皆さんがいーっぱい頑張ってるところを見るのも、大好きなので!」
あ、露璃さん。
そちらのマヨネーズを取っていただけませんか?
カレーにチョイ足ししますので。
「はいどうぞ、ユメヒコ君」
「ありがとうございます〜♡」
「ふふふ。どういたしまして」
美味しいご飯をパクパク食べていると、先に食べ終わった発橋さんと東野さんが、お話を始めました。
「良いパーティーだね、君ら。関係性が、ちゃんと出来てる」
「あ、ありがとうございます」
「でも、苦労するのはまだまだこれから、って感じもするよ」
「え……」
発橋さんが、優しげな目で東野さんを見ます。
「君たちは、アタル君を中心に集まってるんだろう? アタル君は面倒見が良さそうだし、今の時代には珍しいぐらいの好青年だ。さぞかし頼りになるんだろうね」
「……」
「けど、だからこそ、アタル君は、色んなことを抱え込み過ぎてるんじゃないかい? ねぇ、坊や?」
「はい!」
アタルさんは、もっと頑張らないことを頑張ったほうが素敵だと思います〜!
「頑張らないことを、頑張る……」
「要するに、頼られてばかりじゃなくて、もっと仲間を頼れってことだと思うんだけどね。思い当たるフシは、ないかい?」
「…………」
すると、西嶋さんが「まぁねー」と頷きました。
「アタル君って、なんでも自分でやろうとしちゃうからね。私たちのことを大事にしてくれてるのは、ありがたいんだけどー」
「……うん。探索中も、すごく守ってくれる。だから、いつも傷だらけになってて……」
「それを見てるのが忍びない、とか?」
「…………はい」
と、そこに。
「発橋さん、すみません。颯太君が、俺にトイレに連れていってほしいって……。お手洗いは、どちらですか?」
颯太君と手を繋いだアタルさんが、リビングからこちらに来ました。
「ああ、トイレなら廊下の突き当たりの右の扉だよ。けど、アタル君はまだ食べてる途中だろう?」
「いえ、まぁ。けど、構いませんよ、これぐらい」
「……ふーむ。いや、西嶋ちゃん。ちょうど食べ終わったところだろ。アタル君の代わりに、颯太をお願いできるかい?」
「私? ……あー、はい。良いですよ。颯太君、行こっか」
「うん。ちゃーねぇ、おねがい」
西嶋さんは、颯太君を連れてお手洗いに。
「ほら、君は今のうちに自分の分を食べてな」
「は、はい。……あの、そんなに気にしていただかなくても、大丈夫だったんですけど」
「違うよ。今のは必要なことだよ。君が、頑張らないことを覚えるためにね」
「は、はぁ……?」
アタルさんは、不思議そうに首を傾げました。
「ああ、それと。私が君たちのパーティーに合流する件。前向きに考えてくれると嬉しいねぇ。君たち相手なら、颯太も心配しないだろうし。それに、……君たちには、伝えたいこともたくさんあるからね」
「伝えたいこと、ですか?」
「うん。これでも私は、君たちより長く探索者をやってきてるからね。先達として、若者に教えてやりたいことが、たくさんあるのさ」
すると、東野さんも頷きました。
「中原君。私も、発橋さんがいてくれたら、もっと安全に探索できるようになると思うよ」
「そ、そうか?」
「うん。だから、今度潜る時は、発橋さんにも来てもらってみようよ」
「じゃあ……、試しに何度か、一緒に潜ってみてもらっても、良いですか?」
「いいよ。……さ、カレーを食べておいで」
そんなわけで、アタルさんたちのパーティーに、発橋さんが加入してみることになったのでした。
いぇいいぇーい!
▶︎▶︎▶︎
カレーパーティーが終わって、ボクたち4人は発橋さん宅を離れました。
「ねぇねぇユメっち。あたし、家賃50万とか言ってたユメっちの家、見てみたいんだけど!」
と、翔子さんが言ったので、そのまま4人でボクの部屋に来ました。
【ガチャチケ、もらっちゃったもんな】
【だったらもう、このあとは】
はい!
やりましょう!
【全裸教!!!】
楽しい楽しい、ガチャの時間です〜♡




