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038・アタルお兄さん、いっぱい1人で頑張っています!


 ナナさんの緋扇でパタパタ仰いだら、清涼な風の効果で皆さん落ち着きました。


「すまん。見苦しいところを見せた」


 アタルお兄さんが、ボクたちに深々と頭を下げました。


「ごめんねー?」


「アタルが悪い」


「ふんっ」


 西嶋さん、南郷さん、北海さんの発言のあと、東野さんもペコリと頭を下げます。


「3人とも、自分の気持ちに素直なだけなの。気を悪くしないでくれると、嬉しいな」


「全然大丈夫ですよ! ボクのほうこそ、お騒がせするようなことをお聞きしましたー」


 ボクもペコリと頭を下げます。

 するとアタルさんが、西嶋さんたちに振り返りました。


「お前ら、中学生だってこうやって素直に頭を下げられるんだぞ」


「私は謝ったじゃん」


「ベーっ」


「ケッ!」


「……お前らなぁ」


 アタルさんが、はぁっとため息をつきました。


「皆さん、本当に仲良しですね〜」


「いや、どこをどう見たらそう思えるんだ?」


「え? だって皆さん、アタルさんのことが大好きだから甘えてるし、アタルさんも皆さんのことを大切に思ってるから、それを受け止めてるんでしょう?」


「……えっ?」


「お互いに嫌いだって思ってないんなら、それはとっても仲良しってことですよ〜♡」


 すると、東野さん以外の皆さんが、なんだか恥ずかしそうにモジモジしました。


 ナナさんが「てゆーかさ」と、手を挙げました。


「アタシたち、あんまり深く考えずにお兄さんたちに追いついちゃったんだけど。こういう時って、普通はどうしてるもんなの?」


「どうって?」


「いやほら、出てくる敵の取り合いになったりすると、良くないでしょ? 追い抜いていったほうが良いのか、後から来たこっちが待ってたら良いのか、とか」


「ナナっち、なんで取り合いになると良くないの?」


「アタシたち、敵を倒したマナ石を集めてお金稼ぐわけだから。奪い合いになったりしたら、揉めるじゃん?」


「えー? そういうのって、早い者勝ちじゃダメなの?」


「それだと結局、強い者が偉いみたいになるでしょ。そういうのは、危ないんじゃない? 昨日の姐さんたちは、それぞれ倒した分で分け合いにしてくれたけど、どこもそうなのかなって」


「そうだなぁ……」


 アタルさんと東野さんが、顔を見合わせます。


「俺たちは、相手が先に進みたいなら先に行かせて、自分たちはしばらく近場で狩りをするな」


「狩り?」


「同じ場所で同じ相手をひたすら倒してマナ石を稼ぐことよ。残りMPにもよるけど、通常攻撃だけで倒せる相手なら、時間と体力がもつ間は、稼ぎ続けられるから」


「それって、もし体力がなくなってきたら、どうするんですか?」


「そりゃ、そこで撤退するよ。ヘロヘロでボスに挑んでも仕方ないし」


「ワタシたちは、毎回ボスを倒したいんだけどなー! アタルが、危ないから絶対ダメって言うから……」


 ふむ。

 なるほど。


「それなら今回は、皆で一緒に進んでボスを倒したら良いってことですね!」


「いや、なぜそうなる」


「? だって、北海さんはボスを倒したい。アタルさんは危ないのはダメ。なんですよね? 皆で戦ったらより安全になりますし、ボクたちはボスを倒したらハッピッピーになりますので」


 ガチャチケットが手に入りますからね!


 それに、翔子さんがまだまだぴょんぴょんしたそうなので、どんどん先に進みたいんですけど、ボクはアタルさんたちの戦ってるところも見たいですし。


「一緒に行ったら、ワイワイできて楽しいですよ〜」


「いや、ええ……? ……どうする?」


「私は、良いと思うけど」


「私もー。マナ石は、ここ以降のやつを折半で良いんじゃない?」


「わたしは、思いっきり魔法を撃てるならどっちでも良い」


「まぁ、ここのボスなら、ガキどもと一緒でも問題ないだろ」


 ということで、満場一致となりました!

 いぇーい!


 そんなわけなので、イナリ様も合わせて10人の大所帯で、立体駐車場ダンジョンをぞろぞろ進みます。


 翔子さん、ぴょんぴょん跳ねながら歩けて、嬉しそうですね。


「た〜のし〜〜!!」


「おい! 邪魔だからあんまチョロチョロすんな!」


「あはははは〜!」


 翔子さん、アタルさんと北海さんの周りをぴょんぴょん飛び跳ねてますね。


 あ、怒った北海さんが平手打ちをしましたが、ひょいっとかわしました。


「なんだ今の軌道!? お前それ、ただ跳ねてるだけじゃないな?」


「え、たぶん? そっち跳びたい、って思ったら、跳べちゃうんだ〜!」


「ぐぐぐ……! おらっ、あっち行け!」


「はーーい!」


 翔子さんが、先のほうにぴょんぴょん跳んでいってしまいました。

 その後ろをイナリ様がふよふよとついていきます。


 そしてボクは、なぜか隣を歩いてくれている西嶋さんと、お話をしています。


「へ〜! 皆さん、小さい頃からの幼馴染なんですね〜!」


「そうだよー。私たち、家も近所だし、小中高と全部一緒でさー。皆で探育東二高を受験して、合格して、3年間同じクラスになって。在学中からこの5人でパーティー組んでて、卒業してもそのままパーティー組んで探索者してる、って感じー」


探育東二高(たんいくとうにこう)?」


「あれキミ、探索者やってるのに知らないの? 国立探索者育成学校のひとつの、東京第二高校だよ。略して探育東二高(たんいくとうにこう)


【たしか、ゲームでも設定だけあるやつだな】


【大阪、京都、東京第一、第二の4校のはずやで】


「へぇ〜! 初めて聞きました!」


「そうなんだ。不思議な子だね」


「そういえば、私の従姉妹の姉さんも、通ってたって言ってた気がする」


 隣を歩いていた露璃さんが、水球をこねて作った鳳凰を羽ばたかせながら会話に入ってきました。


「えっ。なにそれ、すごいね」


「露璃さんの従姉妹というと、去年一緒に潜ってみたという、あの?」


「うん。アイ姉さんっていう名前で、ちょうどアタルさんと同じような、騎士系のジョブの人。姉さんは、東京第一だったかな?」


「なるほど〜! そういうアタルさんは、騎士なのですか?」


「うん。アタル君は、聖騎士だね。私の魔剣士と同じく万能型で、私よりは防御寄りのジョブ」


 確かにアタルさん、全身鎧姿に盾と剣を持ってるので、騎士っぽいですね〜。


 あ、先に行ってた翔子さんがダッシュで帰ってきましたね。


「ごめーーーん!! たくさん来たーー!!」


「コンコーン!?」


 なんと、転がるタイヤ6体と軽トラ1台がまとめて翔子さんを追いかけてきています!


 あれは、たくさんです!


「あのバカ……!? イナリ様、その場でおみくじ引いて!」


「コーン!」


 七奈さんが引いたおみくじで、全員に攻撃バフがかかりました!


「な、なんじゃこりゃ!? おい、ぴょんスケ! どこまで行ってたんだ!?」


「2つ上の階まで行ってたら、いっぱい出てきたーー!」


「このっ……!」


 北海さんが、背負っていた大きな木槌を両手に握ると、バットみたいにフルスイング!


 一番迫ってきていたタイヤをガツーンと打ち返しました!


「北海! 前に出過ぎるな! おい! こっちだ!」


 アタルさんが、盾に剣の持ち手の先をガンガンと打ち付けて、タイヤたちを引き付けます。


 構えた盾で、タイヤたちの突進をドカドカドカと受け止めました。


「ぐっ……! 南郷!」


「はいはい、ファイヤアロー!」


 突進を受け止められて弾かれたタイヤたちを、南郷さんが火の矢で撃ち抜いていきます。


 ポンポンポンポンと連射される火矢が、タイヤたちを火だるまにしていきました。


「そんでっ……、うがっ!?」


 なんとアタルお兄さん、軽トラの突進まで受け止めてしまいました!

 けど、さすがに力負けして、少し後退りしています。


「止まったなら、タイヤを!」


 露璃さん、分割した水球を軽トラのタイヤに纏わせて、凍り付かせてしまいました!


 これで軽トラは動けません。


「ええーい!」


「居合い斬り!」


 戻ってきてから反動を高めていた翔子さんが、勢いよくスコップを突き立て、七奈さんがバッテリーのあたりを斬りつけて破壊しました。


「連続斬り!」


「おらぁーーっ!」


 西嶋さんが軽トラ前面のボンネットのあたりを素早く斬りつけると、北海さんが木槌をドカンと叩き込みました。


 そして最後にアタルさんが、


「セイントクロス!」


 光を纏った剣でフロントガラスを十字に斬りつけると、


「ブルルルルルゥン……」


 軽トラはすぅーっとマナ石に変わりました。


 皆の力で勝ちました!

 というか、さっきの軽トラより強くなかったですか?


【まぁ、階層系ダンジョンは階層が進むと敵も強くなっていくもんだから】


【ゲームのお約束ってやつだな】


「いや、ショーコ! アンタまたワチャワチャ連れてきて!」


「ごめんねナナっち! 気がついたら囲まれてて、イナリ様が教えてくれなかったら危なかった!」


「はぁっ!? アンタもう……、バカ!」


 ナナさんが翔子さんに怒ってて、露璃さんがナナさんを宥めつつ、翔子さんにも注意をしています。


「痛てて……、久しぶりに、一気にたくさん来たな……」


「あのぴょんスケのせいだよ」


「わたしはいっぱい撃てて満足」


「アタル君、大丈夫?」


「なんとかな……。すまん、東野。回復を頼む」


「うん、分かった」


 東野さんが、アタルお兄さんの手当てを始めました。


 どうやら東野さんは「看護師」というジョブのようで、アタルさんにお薬を塗ったり包帯を巻いたりしています。


【即効性はないけど、高効率の回復ができるジョブや】


【リジェネでじわじわ回復させるから、ある程度ダメージが溜まったタイミングを見計らって回復するんだなもし】


「いつもありがとな、東野」


「あの、中原君。さっきの軽トラは、やっぱり1人で受け止めるのはたいへんなんじゃ……」


「けど、他の奴にやらせるわけにはいかないだろ。それに、回復するのは俺だけでいいから、MPの節約にもなる」


「それは、そうだけど……」


 おや、東野さん。

 なんだか、少し悲しそうなお顔をしていますね。


 ……ふーむ?


「ほら、行くぞ」


 そう言って、先頭を歩き出すアタルさん。




 その後も、何度か戦闘を繰り返し、


 そのたびに、東野さんがアタルさんを回復し、


 ボス部屋では、古いアメ車みたいな敵が出てきたので、


「えいっ!!」


 露璃さんが、車体の下に潜り込ませた水球で頑張ってタイヤを少し浮かせたあと、凍らせて固定してしまいました。


 なので、皆で囲んで袋叩きにし、一方的に殴り倒してマナ石にしたところ、


 ついでにドロップ品として、車のエンブレムが手に入ったのと、


『パーキングダンジョンのクリア達成!』


『初踏破ボーナスとして、10連ガチャチケットを1枚進呈します!!』


 ガチャチケットが、手に入ったのでした!


 やったぁ〜♡


 そして。


「アタルお兄さん。実は、紹介したい人がいるんですけど」


 換金のために統括局の窓口に戻ったボクは、アタルさんたちに、とっても素敵なお姉さんを紹介することにしたのでした。




 ▶︎▶︎▶︎


「で、坊やが私に紹介したいのは、この子たちなのかい?」


 はい!!


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